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自主映画『アット・ザ・ベンチ』第1編「残り者たち』監督:奥山由之、脚本:生方美久、主演:広瀬すず、仲野太賀

自主映画『アット・ザ・ベンチ』第1編「残り者たち」|Independent Film “At the Bench” Episode1 ‘Remnants’


奥山由之監督による17分弱の自主映画。
主演は広瀬すずと仲野太賀。
脚本は『silent』(フジテレビ系)の生方美久。

ベンチに座った男女の会話劇。
画面が薄暗くて、主演の二人の顔を撮ったカットがほとんどなく、引きの絵や背中越しに撮るカットが多いのが、贅沢な作り。
なにげない会話の向こう側から透けて見える二人の関係や過去をあれこれ考える中で一つの物語が浮かび上がってくるのが面白い。
とりとめのない会話劇を面白いと思うかで評価は分かれるのかもしれないけど、誰でも見れる17分弱の自主映画に対して、そこで文句を言うのは何か違うかも。むしろ、このなんとも言えない時間を楽しむべき作品かと思う。

 恋愛未満の男女のすごくパーソナルな話に思えるけど、滑り台が撤去された公園にベンチが一つだけが残されている寂しい風景は、今の日本を映しているとも言える。
 公園が消えたことにいくらでも気づくきっかけがあったのにその前兆に気づけなかったことを冗談めましつつも、悔いを残している主人公の気持ちはわからないでもない。
 ラストでタワマンのカットが入って、再開発によって子供が戻ってくることが示されているけど、そうやって出来上がる新しい街並みを素直に受け入れて良いのかと思う一方で、そうやって過去を置き去りにすることでしか、人は前に進めないのかもしれないとも感じた。

生方美久は今のところ、社会的テーマを全面に打ち出さない坂元裕二みたいな位置付けの脚本家で、社会性よりも個々人の人間関係の機微に焦点を当てる作りによって『silent』がヒットし時代の寵児になった(それは次の『いちばんすきな花』でよりはっきりするのではないかと思う)若手脚本家だけど、彼女の脚本を支持する若い視聴者は、その背景に込められた社会性を無意識レベルで感じ取っているのだと思う。


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