見出し画像

ポッドキャスト更新、テレビドラマクロニクル補足講義 第六回「社会派ドラマって何?」



#39 テレビドラマクロニクル補足講義 第六回「社会派ドラマって何?」その1

『今ここにある危機とぼくの好感度について』
『半径5メートル』
『きれいのくに』
『大豆田とわ子と三人の元夫』
『イチケイのカラス』
今クールのドラマは社会派ドラマが多い。

と気軽に書いてしまいそうになるけど、そもそも「社会派ドラマとは何なのか?」政治的な題材を扱っているもの、反戦思想などだろうか?
 韓国映画の『タクシー運転手』『1987 戦いの真実』などは韓国の光州事件といった民主化運動を題材にしていて実際の事件を扱っている。
 明らかにモデルとなる社会的な事件や政治的出来事を題材にしているもの? 『今ここにある危機〜』『ワンダーウォール』『新聞記者』等が、ここに含まれる?

このあたりは過去に、震災を題材にしたドラマについて分類した時に三種類に分けたことがある。

簡単に言うと

1、実話型 実際にあった出来事を再現した物語。 NHKでよく放送されている震災を題材にしたドラマ。実話やノンフィクションを原作とするような作品。ある種の再現ドラマ、『1987 ある戦いの真実』、ソーシャルネットワーク、『突入せよ、あさま山荘』 
2、寓話型 別の物語で、とある出来事や事件を描いた物語 家政婦のミタ、シン・ゴジラ、君の名は。
3、侵食型 別の物語の中に現実の事件が混ざりこんでいく。 渡る世間は鬼ばかり、あまちゃん、逃げ恥、

そういう時代にどういうドラマを作るかという態度が問われた時に一番クリティカルな反応をしたのが、坂元裕二、野木亜紀子、宮藤官九郎で三人が相互に影響を与え合うことで社会派ドラマを作っていたのが2010年代後半だったのでは? と思う。

#40 テレビドラマクロニクル補足講義 第六回「社会派ドラマって何?」その2

そもそも社会派の語源とは?
社会派ドラマとは?
90年代の社会派ドラマとしての野島伸司作品


社会派の語源

もともと、キリスト教の教会の派閥の呼び方
「政治的・社会的運動にも積極的な教会およびキリスト教団体、関係者を指す」
日本基督教団の教団紛争で対立グループを呼ぶ蔑称のようなものだった。
「この社会派め!」みたいな感じ。
これも労や安保闘争の名残? 印象としては小乗仏教と大乗仏教の違いみたいな感じ?

この辺りを踏まえると、そもそもフィクションが現実の題材を扱うことに対する後ろめたさの正体のようなものはなんとなくわかる。

 
具体的な事件を扱っていなくても、移民問題、女性差別、学歴差別といったテーマを扱っていれば社会派ドラマとなるのか? 背後にある国が定めた社会制度があって、その影響が人々に影響があるという描写があれば、それはほとんどの作品は社会派ということになるのかもしれない。


もう一度、政治の季節が復活したと人々が感じているのが2011年の震災、原発事故以降、60年代の反復だった。

岸伸介の孫としての安倍晋三元総理と学生運動の反復としてのSEALDs。
そして64年の東京オリンピックの反復を目指した2020年の東京オリンピック。

ドラマもその影響がある。ただ社会派という言葉の距離がSNSを経由したことで近くなった。良くも悪くも。
その象徴としてあるのが「保育園おちた日本死ね」の匿名記事。
『ゆとりですがなにか』は芸能人が本人役で登場したり、流行りのギャグが登場するのと同列の距離感で、ゆとり世代、パワハラ、モンペといった言葉が登場する。社会派ドラマが復活したというよりは日常レベルで社会派が降りてきたという印象。
おそらくTwitterが社会化していく過程とリンクしている。

#41 テレビドラマクロニクル補足講義 第六回「社会派ドラマって何?」その3

・00年代に流行ったセカイ系にまつわる議論。(社会や国といった中間領域がない。私と恋人の話が宇宙の真理のようなセカイと直結してしまう)
・異世界転生モノの共同体回帰。
・トレンディドラマは社会を感じさせない社会派ドラマ?
・後からみるとどの作品も時代の空気から逃れられない。
・身近な社会派ドラマは復活したが、国家や政治との接続はいまだ難しい。
・『ワンダーウォール』が描いた難しさ。

補足メモ


80年〜00年代は社会派という言葉が使いづらかった。フィクションの多くは政治と切り離されたものとして描かれていたが、経済状況もまた、政治や国家が生み出したものだと考えるとバブル景気によって社会と個人がよくも悪くも切り離されているように感じることができた状況は今の視点でみると政治との距離が遠いという政治状況が作られていたと言える。
『テレビドラマクロニクル 1990→2020』はクロニクル(年代記)という体裁のため、歴史的事件や時代背景と個別のドラマ作品との関連を記述する形式となっている。これは後出しじゃんけん的なアプローチなので、すべての作品は時代や政治が生んだものという書き方になってしまう。
 この辺りは書いていて悩んだが、今回はあえてそう書いた側面が大きい。

・政治の問題が自意識(承認欲求)の問題にすり替わってしまった野島伸司
・「お笑い社会派」の堤幸彦と、そのアップデートとしての宮藤官九郎や古沢良太。
・正面から社会派ドラマを作ること=ダサいという偏見。
・正論をエンタメで語るという難題にあえて挑んだ野木亜紀子。




おかげさまで『テレビドラマクロニクル 1990→2020』一般発売となりました。
 PLANETS公式オンラインストアでは、特典としてコロナ禍のテレビドラマについて書きました約9万字の書き下ろし電子書籍が付いてきます。詳しくは下記のURLを参照ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?