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意思決定は、早く、遠く、が大原則

会社の方針は、可能な限り早く、可能な限り長期間のものでなければならない。

意思決定の際に意識すべきは、その判断の成否よりもまず、早さと長さだというお話。自戒も込めて。

判断の成否はそれ単体では決まらない

経営者の仕事は言わずもがな決断すること、ですが、立場が上がれば上がるほど、その影響力は大きく、扱う項目は難解になっていきます。

特に、コロナ以降に在宅勤務(リモートワーク)をどの程度認めるかどうか、という問題。下記のような選択肢の中から自社に合うスタイルを決定する必要があります。

 Who:職種、雇用形態等で限定するかどうか
 Where:居住地、家の外での実施可否
 When:コアタイム有無、コロナ以降の実施可否
 What:対象業務の限定有無
 How:出社頻度、強制力

コロナが来てから、はや1年半が過ぎましたが、皆さんの会社は出社派でしょうか。それとも在宅派でしょうか。

うちは原則出社指示なしというスタイルなのですが、実際に会って話すことの意義を全く感じていない訳ではありません。それでも、コロナ禍に突入してからは、一度も出社指示をしておらず、ワクチンの職域接種を希望した一部の社員が出社しただけ。

会社の方針としては、安心してみんなが集まれる状況になるまで出社するべきではないため、少なくとも今年度いっぱいは出社指示をしない、ということを5月の段階で決めています。

この判断において意識したことは、可能な限り早く、可能な限り遠い未来までの方針を出すこと、です。

なぜ、判断が遅く、短くなってしまうのか

これの真逆の対応は、来月のことは今月末の状況を見て決定する、というようなものです。緊急事態宣言や蔓延防止措置もこのスタイルで出されていますね。

なぜこうなってしまうのか。在宅勤務を例にとって説明します。

コロナがなければもちろん出社勤務!だが、コロナ禍限定で在宅勤務を認めますよ、とか、出社もできる限り控えて!という会社があったとします。

今まで在宅勤務者がマジョリティになったことなんて一度もない会社ですから、それはもう、最初の頃は、あれがない、これがない、これができない、あれができない、と大慌て。もちろん生産性はだだ下がりです。

各人の工夫と単純に慣れのおかげで何とか以前と同じように、もしくは少しやりにくさは残るけど、まあ通勤とかないから、良し悪しだね、という状態まで持ってきたところで、なんとなくコロナも落ち着いて来た。

じゃあそろそろまた何もなかったように出社しましょうねということで、出社勤務をして3ヶ月経ったら、だんだん感染者数が増えてきてまた在宅勤務指示。

それからは、毎月、翌月の勤務体制についての指示が出るようになり、今に至る。

まあ、ありがちですよね。

経営陣にとって、生産性が落ちるようなことは例え社員のクオリティオブライフが上がろうとも、そんなものは会社が売り上げをあげてこそのものだ、ということで認めない。在宅勤務?コロナ収束と共に終わりでしょ。なるべく在宅勤務をさせなくて済むように、方針は毎月の頻度で短めに出した方が良い。と考えるのは、ある意味当然というか、仕方ないと思うんですよね。

売り上げは全てを癒しますから。

つまり、状況を見極めた上で可能な限り生産性の低下を回避するために在宅勤務期間を短くしたい、という心理が働いているため、判断は遅く、短くなってしまうのです。

判断の遅さと短さがもたらすもの

ただ、それはこの危機が長くは続かない、という予想、というか願望、希望的観測が背中を押している、泥沼への道と言えます。最近読み返した、半藤一利さんの「昭和史」で、アジア太平洋戦争の反省として書かれていたことと同じですね。

事実、コロナは発生から1年以上が経過した今でも収まる気配はなく、まだまだ予断を許さない状況です。

今月もダメ、来月もダメ、でもいつかは必ず出社に戻せる日が来るのだから、その日に備えて準備をしておこう。つまり今は我慢の時であり、非常時であり、緊急避難的在宅勤務の質を上げるような投資をすべきではない。とずっと決断をできない。

だからこそ、今後も、今さら在宅勤務への投資をするのはちょっと、、と言うことでハードルがどんどん上がってしまい、損切りできないまま低クオリティで中途半端な在宅勤務を続けざるを得ない会社も多いことでしょう。

そしてその会社に勤める従業員らもまた、長期的に在宅勤務が出来ると早い段階でわかっていたら決断できた投資、例えば大きめのデスクやモニタ、オフィスチェアなどの什器の購入、都心ではなく郊外で、家賃を変えずに広くて住みやすい土地への転居などなど、が出来ないままズルズルと現状維持しか出来ないのです。

判断が早く、長ければ、どうなるのか

もし、これが反対に、早い段階で、長期間の方針が出されていたらどうでしょうか。

リモートワークにおいて問題となっていることに対して、しっかり腰を据えて(時間やお金といったリソースをちゃんと配分して)解決するという心構えが、個々人ではなく組織として出来たはずです。

数カ月後に終わるかもしれないもののためには投資出来なかったことも、1年、2年、3年と長期間になればなるほど元を取ることが出来るようになるでしょう。

もちろん、コロナが早く収束して思ったより早く元通りになる可能性もあり、その投資が無駄になる可能性だってありますが、ことリモートワークに限れば完全に無駄になる投資の方が少ないです。

例えば、紙の処理を撲滅するために経費精算や承認申請のシステムを導入する、固定電話をなくすためにTeamsに外線機能を追加する、メール文化からチャット文化に移行する、固定席からフリーアドレスにする、ミーティングルームをなくしてビデオ通話用ブースにする、対面交流用のオープンスペースを作る、など、元通りになっても決して無駄にならないこともたくさんあるのです。

個人に関しても、仕事用の机、椅子、モニタ、Webカメラ、ワイヤレスイヤホン、ホワイトボードなどのツールは、例え出社して仕事するようになったとしても自己研鑽やプライベートでの遊び(オンライン飲み会、オンライン脱出ゲームなど)に使えます。

私は、小さいながらも一つの会社を預かる者として、決断の早さと長さが与える影響の大きさを認識し、出来るだけ早いタイミングで、長期間の方針を出すことを意識しています。

そして、この見通しが間違っていれば、そのときに従業員らと対話して方針転換すればいいだけだと思うのです。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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