ショートショート「電池」

私ってバカね。あなたのためだと思って何でもかんでもお世話して。わがままもたくさん叶えてきた。
でももう……

「何本って?」
「えっと、単三電池二本」
私は、彼から誕生日にもらったおもちゃに使う電池を探していた。
電源ボタンを押すとベンチに座ったカップルがゆっくり回る仕様になっていた。
オルゴールの音が心地よかった。

彼は甘えん坊で、都合のいい言い分けが得意だった。でもそんな彼を支えている私。と、自惚れていた。
彼のためだと我慢もしたし、無理もした。
 

オルゴールの音に連動するカップルを私たちに重ねていた。
ずっと眺めることは出来るけど、次第に回転は遅くなり音は途切れだして、異音に変わった。

電池切れみたい。

私と一緒ね。

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