ショートショート「切れ味の悪い綺麗事」

彼女の背中。
女友達が結婚する。
彼氏のことでよく相談されていた。どうしても相談三割、愚痴七割だから彼氏の印象はあまり良くなかった。
それでも付き合っているし、彼氏が好きなんだと言うから、僕の範疇ではない恋愛もあるのだと思った。
ある日その子から相談をされた。
「プロポーズされてOKしたけどちょっと不安なんだ」
僕は
「愚痴も多かったけど、それでもここまで一緒にいてプロポーズも受けたのはそういうことなんじゃない?幸せになんなよ」
と彼女の背中を押した。

僕の背中
女友達から彼氏のことでよく相談され、何で僕にそんな話をするんだと思っていた。
彼女から愚痴しか聞かない彼氏のことが嫌いで仕方なかった。
いつも
「別れたら?」
という言葉が喉元でつっかえていた。

結婚の相談をされた。彼女の幸せが僕の幸せだと綺麗事を並べて背中を押した。
本当は僕自身の背中を押すべきだったのに。

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