風の便り

朝、駅に向かっていたら、木々の間から風が吹いてきた
向こう側から自転車に乗った女がきた
昔の近所の野球好きのおばさんそっくりだった
「ねえ、今日はどっちが勝つと思う?」
そう言ってその女は通り過ぎて行った
すると風は止み、僕は駅へと向かった

朝、電車に乗っていたら、窓の隙間から風が吹いてきた
目の前に体の大きい男がきた
昔のケンカっぱやい友だちそっくりだった
「おい、お前、いい気になってんじゃねえぞ」
そう言ってその男は次の駅で降りて行った
すると風は止み、僕は眠りについた

朝、会社の机で眠っていたら、何処からか風が吹いてきた
知らない女の人が声をかけてきた
昔からずっと知らない女の人だった
「ねえ、まだ私のこと思い出さないの?」
そう言ってその女の人は何処かへ消えて行った
すると風は止み、僕は目を覚ました

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