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SFPC 2019 Summer報告-「違いは違いのままで」

今回SFPCに参加して得られたもののうち、最も大きなものの一つは「違いを違いのままで認識する」という視点だ。前回の報告で書いた、翻訳の是非の話とも似たところがある。

SFPCは多様性を尊重する。ちなみに僕が思う多様性の尊重とは「みんな違うけど仲良くする」ではなく「仲良くできなくても知ってる」である。
視界に入る嫌いなものを、攻撃しない。でも無視しない。何が違うのかに興味を持つ。他の誰かにとっては心地よいものかもしれないと想像する。
余談だが同級生たちと行った女将劇場で、女将が自分の芸を指して「汚いものもたまには見た方が良い」と言っていた。まったくここは多様性の楽園だなと思った。

今回の参加者はこの20名。定員を超える応募の中から参加者の多様性を重視して選考されたとのことだ。初日のオリエンテーションの中で、我々はこのプログラム中"a cultural ambassador"として振る舞うことが求められた。
ちなみにオリエンテーションで話されたことの多くはこの記事にある。

この内容含め、SFPC 2019 Summer in Yamaguchiに関わる人全てに求められるCode of Conduct(行動規範)はここにまとまっている。SFPCとは関係なく、こう生きたいと思わせてくれるような気持ちの良い宣言だ。

そしてこれを読んでわかる通り、SFPCの理念を実現するのに不可欠な要素は「コミュニティ」だ。知識や経験を共有でき、相互に助け合い、心身ともに安全であり、構成員の自助努力によって維持される場所および関係性。人はその中でこそ、自分の興味・関心を追求できる。

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さて、「違いを違いのままで認識する」とはどういうことか。

例えば日本語での議論に、日本語がうまく聞けずうまく話せない人が参加すると何が起こるか想像してみよう。

その人に質問をすると少しずれた答えが返ってくるし、話すのは遅く、内容もどこか要領を得ない。そうなると、だんだんとその人の発言の機会が減っていくことは自然な結果なのではないだろうか。

言語が拙いからといって思考も拙いというわけではない。そんな当たり前の認識が、いとも簡単に、いとも自然に無視されてしまうのである。

しかしSFPCは、それぞれ違うバックグラウンドや興味を持った人たちが学び合い、知り合い、助け合い、探求するためのコミュニティであるから、これを良しとしない。良しとしないというより、先のCode of Conductに従う限り、不可能なのだ。その人が発言しよう(=オープンであろう)とする限り、その発言は遮られず、努力をもって理解される。

その際、この人の日本語は拙いと知っている方が理解しやすいし、自分の日本語は拙いと知っている方が、発言もしやすい。大事なのは「拙いから発言しにくい」などと結論づけるのではなく、「拙い」とだけ認識しておくことである。考えてみればわかるが、拙さと発言のしやすさに直接の関係はないはずだ。

またこれは、断じて「不自由な人にも活躍の機会を与えよう」という利他的な気遣いからくるものではない。自由な発言の機会を損ねる行為は、コミュニティの利益を損なうことになるのだ。これは自分がコミュニティから得られる利益を最大化するための利己的な行動なのである。発言者にとってもまた然り。そしてそれが結果的にコミュニティを健全に保つことになる。
利己的な欲求が利他的にもはたらくコミュニティ、最高では?

念を押しておくが、これは自然に行われることではない。参加者全てがコミュニティの価値を理解し、それを保存し、進めるために行う不断の努力によってもたらされるものである。

ここでは言語を例に挙げたが、あらゆる要素について同じことが言える。多様性に満ちたSFPCの関係者の中にいると、人との違いを認識する場面なんて溢れるほどあって、それらの違いひとつひとつを解釈し対応しようとすることは、降りかかる雨粒全てに名前をつけて保存しようとするような行為に等しい。

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この姿勢はSFPCの外にも持ち帰ることができる。

違いを違いのまま認識することは、多様性の尊重、相互受容と他者理解の最初の一歩なのではないだろうか。

[カバー写真]
Photo: Naoki Takehisa
Courtesy of Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]

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インタラクティブコンテンツのプログラマ/コラボラティブプログラマ/運動会エンジニア/anno lab/「技術的な興味を突き詰めると思いやりが生まれる」と「プログラマにもっとも重要な能力は気遣いと思いやりである」がモットー。
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