新入生へのトレーニング導入が割と上手く進んでいるかも?

新年度が始まって1ヶ月が経過しました。この1ヶ月の間は新入生がトレーニングを開始する時期でもあります。

新入生の8-9割は資格を有するトレーニング指導者の下でのトレーニングを経験したことがありません。従って、この時期に行うトレーニングは、 

①初めて行うエクササイズ 
②行ったことがあるけどより緻密なフォームが求められるエクササイズ
 

主にこの2つで構成されます。

①だとRDLやリバースランジなど。②だとPush Up(腕立て伏せ)など。

この時期、①と②の両方のタイプでは正しいフォームを理解させて習得させてあげることが優先となります。

習得が出来ていないと、それ以降のセッションでのエラー動作修正の労力が大きくなります。何よりも、生徒が正しいフォームを理解できていない状態でトレーニングを行えば、効果も低いしケガのリスクも高まります。

そんなことを考えつつ、昨年度以前と比較すると新入生のトレーニングは割と上手く進んでいるじゃないかなと感じています。少ない時で8名程度、多い時で20名程度を一斉に指導する中で、上手く進んでいると感じる要因を探ってみました。


生徒の理解力・運動能力が高い

目や耳で得た情報を理解する力が高い。理解した上で、本来持っている高い運動能力があるおかげで容易にフォームを習得できたということが考えられます。

もうこれは、こちらの指導力が高いとかではありません。生徒が有能なだけですね。


生徒の見る・聞く環境を整える

1.見る環境を整える
1)デモを示す際は対面か側面か
同時に複数名を相手に説明する際、自分の周りに集まってもらうことから始まります。集まってもらうときは、私と生徒は対面している状態がほとんどです。そこから説明やデモを行うのですが、デモを行う際の形態に若干の変化を加えます。

エクササイズをデモする場合、横から見てもらった方が理解は高まると感じているので、私が右か左かどちらかに方向転換します。生徒側からは私の側面を見るという形になります。

もちろん、対面で見せた方が良い場合もあります。側面を見せた方が良いのか、対面で見せた方が良いのか、状況を踏まえた使い分けが必要です。

2)デモを行う背後の邪魔を排除
デモを行う際、集中を阻害してしまう何かが背後にあれば、それは排除しておくことが良いでしょう。
例えば屋外で指導する際、デモを行う指導者の背後に太陽がある場合は生徒の見る集中は阻害されると思います。そのような場合、デモを行う指導者が太陽に向かって(生徒の背後に太陽がある向き)説明すると良いでしょう。

他にも、デモを行う指導者の背後には何もない状態が良いでしょう。
動く何かが背後にあると、そちらに目が行ってしまうことも考えられます。そういった工夫も必要かと思います。

2.聞く環境を整える
1)周りの音をなるべく最小限に
説明を行う際に周りの音が大きい場合、生徒の聞く集中力が阻害されてしまいます。ちょっと音が大きいかなという場合は、「指導しているから少し声を小さくしてくれるかな?」と言うことも必要です。

しかし、同じ空間で練習・トレーニングを行っている部は一つではないです。従って、完璧に周りの音を小さくすることは出来ません。そうなると、指導者の発する声の大きさが求められます。今はマスクを着用しながらなので難しい場合もありますが。 

アメリカでのインターン時代、声が大きくないとアメフトチームにS&C指導なんて到底出来ないと言われ、インターン同士で声の大きさを競ったことがなつかしいです(笑)

2)指導対象生徒の聞く姿勢を整える
デモや説明をしている最中に、「こうっすか?」とか「うわ、キツそう無理だわ・・・」などを発してくる生徒が稀にいます。

デモや説明を途中で遮られている感じです。これだと他の生徒の聞く集中も途切れる可能性があるし、何よりもスムーズに説明できなくなることもあります(自分の気持ちの問題ですが)。

スルーすることももちろんあります。ただし、スルーしてばかりだと、説明を集中して聞かないということが常態化してしまうこともあります。

時としては全体に向けて、「まず説明を最後まで聞いて」と言うこともあります。説明を行う・聞くための環境整備といったところでしょうか。

ちなみに上述の「こうっすか?」や「うわ。キツそう・・・無理だわ」の返答として、「複数人を相手に説明している途中に頻回に「こうっすか?」と言われると他の人の集中が途切れるかもしれないことを考えているかな? それに聞くとしたら「こうっすか?」ではなく「こうですか?」だよ。」と言ったり、「やってもないのに無理という言葉を使うのやめようか。やれば出来るのにもったいない。」とかシンプルに「無理じゃない」とか言ったりもします。

また、説明している最中に動作を開始してしまうこともあります。例えば、RDLは下降局面→上昇局面という流れで説明します。下降局面の説明途中で、「こういう感じかな?」という感覚で行い始めるパターンです。そうなると、上昇局面の説明は頭に入っていない場合がほとんどです。

説明途中に動作始めそうだなと感じたら、「まず説明を聞いて」と言います。そうすれば動作を開始することなく、説明を最後まで聞いてくれます。


時間の余裕を持つ

トレーニングセッションの時間が限られていることはよくあります。

時間的制限がある状況下で、計画していたエクササイズ全てを導入できないこともあります。

そのような状況下で実施予定のエクササイズを無理に行うと、説明やデモが乱雑になってしまうことも。その結果、生徒の理解度は低く、セッション2回目以降もフォーム修正と理解の向上に時間がかかってしまい、効率が悪くなります。

対策として
①トレーニングセッションの時間をきちんと設けてもらう
②セッション1回の初導入エクササイズの数を1-3個までに限定しておく

②を心掛けておけば、「あれもこれもやらなきゃ」という焦りはなくなりますし、「時間ないけど、とりあえず1つ導入できたから良いかな~」くらいに余裕が持てます。余裕が持てることで、デモや説明もじっくりと行えるようになります。

もし時間が余ったなら、追加で新しいエクササイズを導入するのも良いですし、各々に導入したエクササイズを復習してようすることも出来ますし、他のことに時間を割けることも出来ます(セッション後の掃除の仕方など)

時間の余裕を持つこと。そして、時間的制限がある中でも心の余裕を持つこと。ここが今年度に一番意識した点かもしれません。もしかすると、その心の持ちようが良い傾向に導いているのかも。


説明する際の間の取り方

多関節エクササイズを説明する際、多くの情報が生徒に浴びせられます。一度で全部を理解してくれると期待はしていないですが、なるべく一度で多くの情報を理解してほしいです。しかしながら、それが難しい。

ある日、ひょんなところから落語を聞きたいと思い、YouTubeでお気に入りの演目を聞いてみました。久しぶりに聞きましたが面白い。

噺家の言葉ってスッと入ってくるんですよね。そこで気づいたのが間合いの取り方。

思い返すと、私が説明する時の言葉に間合いを取ることは若干意識してはいたものの、まだまだ足りなかったのかなと。

「〇〇は真っ直ぐ前を向いて△△は少し開いて××は軽く曲げて・・・」

↑みたいな感じ。間がなく、一定のスピードで説明していたかもしれないと考えました。

そこで今年度は、間合いを設けて生徒の表情や仕草から理解が追い付いているかを推察しながら説明することを試みました。

「〇〇は真っ直ぐ前を向いて、△△は少し開く、(3秒くらいの間を設ける)XXは軽く曲げて・・・」

この効果は結構あったんじゃないかなと感じています。
間合いを取るというか、生徒の理解度を推察しながら説明していくということが良かったのかも。

しかし、生徒の理解度を推察しながら間合いを取って説明するって予想以上に難しいです。。。


声のトーンに変化をつける

上述の「間合いの取り方」と同じときに考えたのが、声のトーンに変化をつけること。

私自身、わりとモゴモゴと喋ってしまう人なので、声のトーンが一定なんです。

それは生徒からしたら聞き取りづらいですよね。

強調したいポイントを定めて声のトーンに変化を付けることで、生徒に「あっ、ここは重要なんだな」というのを感じてもらえるよう工夫してみました。

これが上手くいったかどうかはわかりません。トーンに変化を付けるのが私からするととても難しいので。ですが、そういった工夫を凝らすことが、もしかしたら生徒の理解度向上という良い方向に向かったのかもしれません。


エラー動作(ダメ)を強調する

エラー動作の修正は可能な限り迅速に行いたいです。理想は、1セット目からエラー動作が無い状態。そのためには、デモや説明の時に「あぁ、これはダメな動作なんだな」と理解してもらうことが大事です。

しかし、エラー動作と言っても種類は豊富です。一つ一つのエラー動作を説明していたのでは、時間もかかるし情報の詰め込みすぎて生徒の集中力は低下します。

そのエクササイズで起こり得る代表的なエラー動作を1-3個ほど抜粋し、それを強調して伝えます。

上述の声のトーンや間合いの取り方と併せて、両手で「×」を作りながら「これはダメ」と言うこともあります。

あと必ず、なぜダメなのかの理由を可能な限りシンプルに伝えます。そうすることで、エラー動作の理解度がより高まると感じています。


ペアを組ませる

2人1組のペアを組ませることを試しました。

1人がエクササイズを実施している間、もう1人がそのフォームを観察する。必要あれば修正を加える。このような形を取りました。

フォームを観察するポイントは、再度伝えます。
「膝が曲がらないよう見てあげて」とか「肩甲骨の間に手を入れて、常に挟まれる状態を作ってあげて。挟まれない場合は、挟むよう指示してね」など。

観察すること・教えることで、その生徒の理解が高まると思います。

自分とパートナーではエラー動作が違うという発見から「人体動作の面白さ」に興味を持つこともあるかもしれません。

修正ポイントを伝えることで、パートナーのフォームが改善されると嬉しいですよね。教える側の観察眼と伝える勇気、教わる側の素直さ、両方が成り立って改善に向かいます。互いの自己有用感の向上にも効果があるかもしれません。

指導者としても、「良いポイントに気付いたね。コーチング上手いね。」とか「フォーム良くなってきたね。君の理解力とパートナーのコーチングのおかげかな。」みたいなポジティブなことも言うように心がけてます。

今後も常にペアを組ませるかは未定ですが、初導入するエクササイズでは有効かもしれません。


セット間にもう一度説明を行う

1セット目では様々なエラー動作が出ます。

1-3人を相手に指導する場合ならセット中の修正は良いでしょう。

しかし、10名・20名を相手にしている場合、セット中に1人のエラー動作を修正しようとすると、他の9名・19名のフォームが観察できません。観察できないと、どこを修正するべきか分かりませんよね。

対策としては
①全員のセットを中断して、エラー動作の修正を図る
②全員のセット間に再度説明を行う

1セット目は、様々なエラーが見えたとしても、とりあえずセットを全て終わらせるようにしてます。

1セット目と2セット目、2セット目と3セット目、などのセット間に再度フォームの説明を行います。同じ説明を2-3回を受ける、しかも実際に動かしてみた後に受けることで生徒のフォームに対する理解度は高まると感じています。

同じ説明と言っても、全部同じく繰り返すのではなく、全体で見られる似たようなエラー動作をPick Upして、それの修正ポイントを伝えるという感じです。

その流れを繰り返してフォーム習得目指します。習得できた生徒が増えれば、未習得の者の修正に時間をかけることもできます。

もちろん、①のパターンを使う場合もあります。

1セット目の最中に中断してでも修正を施さなければと感じるエラーは中断します。例えば、リバースランジなのにフロントランジしたり、足幅の設定を間違えていたり、など。基本的な設定に関するものがメインです。

セット間に何度も修正を図ることで、少しづつ理想のフォームに近づけていきます。労力は要しますが、このやり方がしっくり来ています。


①と②のタイプのエクササイズ

記事の冒頭で2つのタイプのエクササイズがあることを述べました。

①初めて行うエクササイズ 
②行ったことがあるけどより緻密なフォームが求められるエクササイズ

①はリバースランジやRDLなど。②はPush Up(腕立て伏せ)などです。

②のタイプのエクササイズを教えるって、①と比較すると難易度が上がるかなと感じています。

①のタイプは未経験なので、生徒はじっくりとデモを観察したり説明を聞きます。

②のタイプは既に経験のあるエクササイズであるため、「あぁーこれか」というイメージが脳に入ってしまっているでしょう。そうなると、今までやってきたやり方でセットを始めることもあります。結果としてエラー動作が如実に出ることも。

そのような場合、セットを中断して再度説明します。

①と②のタイプで具体的にデモや説明の方法を変えるわけではないですが、②のタイプだと上述のような過程を経てエラー動作が出てしまうことを認識するくらいに留めてます。

Retrogressionしたエクササイズから開始

一番初めのセッションで導入するエクササイズの1つとしてRDLがあります。

しかし、予想以上にハムストリング、内転筋、臀筋群などの柔軟性が欠如している場合、無理にRDLから始めることはしません。

RDLを予定していたが、様子を見てより容易なエクサイズを選択、これをRetrogression(リトログレッション)と言います。これによって、RDLを行うのに必要な柔軟性を鍛えます。

例えば、膝立ちや片膝立ちの姿勢で臀部を後方に引く動作(Kneeling hip hingeやHalf-kneeling hip hinge)から初めていき、徐々に立位へプログレッションしていき、最終的には重りを持った状態で行うRDLに繋げていきます。

一方、RDLを継続することでフォームが整ってくるパターンもあります。

ですが、初期の段階では修正箇所が多いはずです。そうすると、こちらの労力が増えます。しかも1人ならまだしも10人や20人を相手にしているとさらに増えます。指導する際の余裕が無くなってしまいます。

さらに、初期の段階で出来ない事が多いと生徒のトレーニングに対する意欲を低下させてしまう恐れがあるかなと思います。トレーニング導入初期の段階でそのような低下を招くと、それ以降のトレーニングも上手く進まないんじゃないかなと思います。

時と場合によりますが、計画していたエクササイズから無理に始める必要はないはずです。Retrogressionする余裕は持っておいた方が良いかなと感じました。


プログレッションでの差別化から意識を高める

グループで行っていると、プログレッションが早い・遅い人に必ず分かれます。プログレッションが早い場合、5㎏や10㎏を扱い始めます。

それを見た周りの生徒は「自分も持った方が良いかな?」や「自分も重り持って先に進みたい」と思うこともあります。男子に多いですね。

なので、勝手に重りを扱い始めようとする生徒もいます。

その時は、注意をします。単純に「まだ早い」と。

簡単に重りを扱えないと分かると、フォームの更なる修正を自分で考えるようになります。

グループ内でのプログレッションが早い・遅いの差別化が、遅い生徒のフォーム習得への意識を高めるかもしれません。


上手くいかないこともある

例年以上に上手くいかないこともありました。

それは説明を全く聞いていない生徒。

こちらが説明している際は、静かに聞いている様子(つまり他の誰かを邪魔しているわけではない)。

いざエクササイズを始めると、周りの誰かが行っている様子を見てから自身も始めるという感じ。そんなんだから、大まかな形だけを模倣して、細かい所は出来ていない(足幅の設定とか、膝の屈曲角度とか)。んで大体そういう生徒に限って、めちゃくちゃ体が硬かったりするんですよね・・・

もう正直、自体重であれば当分はそれで良いかなと思ったりしてます。

周りが行っていることを観察して、自身が取り組むのも立派な学習かなと思ったり。

そこで毎回時間を割いてその生徒に再説明を延々とするより、周りの生徒のフォームをしっかり見てあげたほうが有意義な気がします。

ただし、説明を全く聞いていないことに対しての修正策は今後何かしらの形で行わなければなりませんね。


おわりに

なんとなく今年度は上手く進んでいるな~という要因をまとめてみました。

いろいろな生徒がいることから、この時期のトレーニング指導は毎年の楽しみになりつつあります。




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