子どもへの運動指導~Product and Process of motor skill performance~

最近読んでいる本の1つに「ACSM Essential of Youth Fitness」があります。子どもの発育・発達や体力要素のトレーニング方法などについて網羅している約500ページ弱ある教科書的な本です。なぜこの本を読もうかと思ったかと言うと・・・それはまた別の機会に記そうかな。

本日読んだ章で興味深い部分があったので、それについて書いていきます。

Product of Motor Skill PerformanceとProcess of Motor Skill Performance

Product of motor skill performanceとは、product(成果、結果)という単語が示すように、どれくらい高く跳べたか、どれくらい速く走れたか、などの運動技能の結果を表すものです。数値で評価が出来るという特徴があるとも言えます。

Process of motor skill performanceとは、process(過程、プロセス)という単語が示すように、跳躍動作や疾走動作におけるフォームの習熟度など、運動技能の結果(上記の跳躍力など)を産み出す過程を表すものです。こちらは数値では評価しづらい側面があると考えられます。

垂直跳びを例に出すと、跳躍直前のしゃがみ込みや腕振りのスキルの習熟度がProcess of motor skill performanceで、跳躍高や跳躍速度がProduct of motor skill performanceとなります。
ちなみに跳躍には着地も伴うので、良いフォームで着地動作が遂行出来ているか否かはProcess of motor skill performanceにあたると考えます。

どちらか一つを伸ばせば良いという訳ではない

結果を出すためには過程は大事。つまり両方の要素は相互に絡むため、どちらかを偏重して伸ばすという考えは子どもの運動能力の向上に好ましくないでしょう。
”子どもが以前よりも高く跳べるようになったり、より重い重量でスクワットが出来た姿を見ると運動指導者は満足感を得られますが、運動の技術的能力を犠牲にして(=フォームを犠牲にして)まで結果を求めることはあってはならない”と述べられているように、一つの種目であっても結果重視の指導方法と運動指導者の優越感(エゴ)は、適切なフォームの代償にあってはならないと考えます。

両方を伸ばすような指導方法を取れば良い?

それが理想です。
ですが、それを目的とした指導風景を脳内でイメージしてみたのですが、上手くいかないことが多いな~と思いました。

①数値を追い求めがちになるかも?

挙上重量が伸びた、跳躍高が上がった、スプリントタイムが縮まった、などの数値に表せる評価に一喜一憂することは多いでしょう。数値が伸びた分の喜びは嬉しいものですし、それがモチベーションとなって運動・トレーニングに取り組むようになるかと思います。もちろんそれは良いことと捉えます。

一方で、子ども達が数値だけにこだわる場合もありえます。数値だけにこだわれば、その運動の過程であるフォームのエラーを頻繁に繰り返す可能性があり、痛みやケガを誘発する可能性も上がります。

運動指導者の立場から考えると、子どもの運動・トレーニングに取り組むモチベーションの維持・向上にはProduct of motor skill performanceの部分を追い求めるは有効かと思う反面、フォームなどを崩してまで行う必要がないことを伝える力や適切な段階を踏んだ運動プログラムの作成および実行と指導はなかなかチャレンジングなものかなと思います。

②フォーム習得ドリルは単調となって飽きてしまう?

適切なフォームの習得はとても大事です。そのため、じっくり丁寧に教えていければ良いです。ですが、フォーム習得のためのドリルって単調になりやすい側面もあり、子どもはすぐに飽きてしまって運動がつまらないと感じてしまう可能性もあるかなと思います。
例えば、野球ボールを打つのが楽しくてクラブチームに入部したものの、バッティングの基礎作りということで素振り100回を課されても、打つ楽しみが味わえないので飽きてしまい、結果として良いフォームが形成されない可能性もあるかと思います。
スラムダンクのシーンで桜木花道が練習後のパスやドリブルの練習は退屈だが、ゴール下のシュート練習は楽しかったというシーンがありますが、それと似たものかと。

③Process of motor skill performanceのフィードバック・評価をどう伝えるか

数値で表すことが難しいProcessを、子どもにどのように評価し伝えるか。それも小難しい言葉を使わないで。ここが一番チャレンジングかなと思います。
褒めることやポジティブな言葉で評価・フィードバックを行うことが良いかと思いますが、かける言葉も適切に選択しないと子どもが理解できないかもしれません。

結局どうすれば良いのか?

現時点で明確な答えはありませんが、両方を伸ばせるよう、時と場合に応じて柔軟に指導するという形が良いかなと思います。
子どもに運動指導を行う際、運動指導の専門的能力はもちろんのこと、子どもが分かりやすい言葉でコミュニケーションが取れる能力もかなり大事だなと思います。あとは指導の中で楽しさを入れること。遊びの心を持ってプログラム作成を行い、楽しい雰囲気で運動・トレーニングができる環境を作り出すことが必要と思います。


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