山本亭(東京都葛飾区・柴又駅)
日本の美しい庭園というランキングがある。全国に1000ちかくある庭園の中から専門家によって選ばれた美しい庭園をランク形式で紹介しており、島根県の足立美術館や京都府の桂離宮などがランクインする中、東京エリアで最も高い位置に食い込んでいるのがここ葛飾区にある山本亭である(2021年度はベスト10で唯一の東京)。寅さんミュージアムと山田洋次ミュージアムに隣接しており、共通券も販売されている。
入口にある長屋門は一見すると和風の作りをしていながら、よく見ると洋風化されている部分があったり、内装は完全に洋風になっていてステンドグラスまで備えられている。池や井戸のある庭を通り過ぎて長屋門から入ると建物の裏手に回る形で山本亭の入り口がある。柴又ゆかりの山本工場の創立者である山本栄之助の自宅だったこの建物は、その後も四代に渡って使われていたものを葛飾区が取得して公開されているという歴史を持っている。
床の間に違い棚、印象的な欄間からなる書院造りのある和風建築とモザイク模様の床や高い天井にマントルピースを備えた洋風建築が組み合わさっているタイプの建築は上野の旧岩崎邸を思わせる和洋折衷の造りである。ブルジョワジーはこういう造りに行き着くのだろうか。玄関には車引きの車もある。
見どころはなんといっても庭。池に築山、滝に四季折々の草木が見事に融合している庭園はさすが。嬉しいのは抹茶などの喫茶が楽しめるのだけれど、この庭を全面にして解放されているので、ここだけ時間の流れがゆっくりになる。庭に出ることはできないのは少し残念ではあるけれど、こういった庭園は基本的に景観を楽しむ風情が強いので、あえて眺める美というのもまた奥ゆかしいかもしれない。トイレは和式というのも伝統を守っているようで、それはそれで好ましい。
柴又駅との間には柴又帝釈天もあるので、柴又帝釈天にお参りしたその足で向かうというの楽しみ方としては推奨できる。帝釈天の彫刻も目を見張る美しさ。柴又は美を愛でる町でもあるかもしれない。
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