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静嘉堂文庫美術館(東京都世田谷区 二子玉川駅 旅立ちの美術)

2021年6月13日をもって閉館、来年以降に丸の内へ移転する静嘉堂文庫美術館。移転することで利便性が増すことは嬉しい反面、現在の場所から無くなるのは寂しい。
昨年に閉館した高輪の原美術館といい、いつまでもあるわけじゃないのね。形あるものはいつかなくなる。一度生まれて一度死ぬ。ONE LIFE, ONE DEATH.

というわけで移転直前にお見送りに行こうと、こう、思い立ったわけですね。
旅立ちの美術と銘打って所蔵の重要文化財やら国宝やらが一堂に会すまたとないチャンス。国宝の「曜変稲葉天目茶碗」をメインに拝みに行かなくちゃ。もちろん混雑が予想できたので朝イチ(9:30開館)に合わせて動く。

ところでこの静嘉堂文庫美術館、最寄駅は東急田園都市線の二子玉川駅。
ハイソサエティでスノッブなセレブリティにこよなく愛される街なので、土煙にまみれた街に生きる髭野郎が歩くのには不相応な街ではあるけれど、背に腹はかえられぬ。朝9時くらいの曇天模様の空の下、セレブリティなマダムから白い目を浴びないように目的地へと向かう。

美術館は山の上にある。正門から美術館までには気が遠くなるほど長い坂道があり、木々に囲まれていて涼しいのは涼しいのだけれど息がきれる。
最寄駅は二子玉川駅だけれど徒歩30分くらいなので車でくるまでの見学者も多い。たぶん途中に松本かつぢ(これは後日)を挟まなかったら心が折れていた。

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館内は1フロアに2つの繋がった展示室がある。すでに人がちらほら。写真撮影禁止なので残念ながら館内の写真はなし。

やっぱり感動したのは曜変稲葉天目茶碗。
入手した岩崎小弥太は敬意を示して「天下の名器を私如きが使うべきでない」としたが、見る分には独り占めできる。隙を狙って独り占め。意外と小振りで小児用の茶碗くらい?の感覚。
内側には美しい斑紋が宇宙のごとく広がる。外側は漆黒。ただ2箇所だけ斑紋がある。
多くの掛け軸や陶器、茶器などが展示されている中で他に好きだったのは洮河緑石蓬萊硯という硯。墨を磨る硯。精緻な造形、側面にまで施された装飾。芸術品を生み出すための芸術品。
掛け軸画では木米筆による蓬萊山図。力強い中に寂寞さがあり今日イチ。

地下は整理券入場待ちの方のために映像を上映しているという粋な計らいも。トイレはウォシュレット。もう訪れることはないのが残念ですが。

館内を出る頃には入場制限がかかっていて整理券を受け取らないと入れない仕組みに。おそらく残りの週末はこんな状態になることが予想される。
ちなみに庭園やジョサイア・コンドル作の霊廟、古民家園などもある。見応え充分で移転するのがもったいない。老朽化なのだろうから仕方ないけれど。

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