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松本かつぢ資料館(東京都世田谷区・二子玉川駅)

実は静嘉堂文庫への経路を調べていたところ、経路途中の住宅街に「松本かつぢ記念館」なる場所があることを発見していた。
いわゆる「可愛い」文化の元祖とも言える松本かつぢ、こら行かなあかんやろ、と心の中のエセ関西人が騒ぎ立てるので、こちらも見学予定に組み入れる。

場所だけチェックしておこうとスマホ片手に周辺を歩くが見つからない。
あーれー、おーかしいな、変だな、変だな、怖いな、と稲川口調で焦りながら住宅街をうろうろするが見つからない。でもHPは存在するのであるはず、と、勇気を振り絞って近所で土いじりをしていた老婦人に恐る恐る話しかける。

「あの、お忙しいところすいません。このあたりに松本かつぢさんの・・・」

「あら、それうちです」

なんと館長ご本人。天啓である。運命の出会いである。勇気を出してよかった。
緊急事態宣言は解除されたものの、コロナ禍で休館を継続中とのこと。
そうか、仕方ないな、残念、と諦めながらも、こんなこともめったにないので、静嘉堂文庫へ行く話やどこから来た、など四方山話。
すると「事前にお電話くださればね、開けたりもするんですけどね」とのお言葉が出てくるではないか。ここは駄目でもともと、聞いてみる。
「あ、あの、もし可能であれば、今日は突然ですし無理でしょうかね・・・」
「いいですよ。せっかく来てくださったんだから」
掃除もしなくちゃとのことなので、館長とはここでお別れ、改めて訪問時間を電話確認することを約束して静嘉堂文庫へと向かう。

そう、大事なのは一歩ふみだそうとする勇気。シェイクスピアも言っていた。たぶん。

さて、静嘉堂文庫美術館を巡ったあとしばらくして約束していた訪問時間になったため松本かつぢ資料館へと向かう。
二子玉川駅からの経路は、高島屋脇の砧線跡をひたすら西進し、砧線跡を示す奇妙な彫刻オブジェが見えたらそこから直角に右折して集合住宅を抜けた先に見える小道の中にある。入り口がわかりにくいが根気よく探せばある。開館時には看板が出されている。

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松本かつぢ資料館は5人も入れば充分な広さ。
館長が快く出迎えてくれる。とても良い方。松本かつぢさんのご息女。手作りで装飾が施された館内。原画が多く展示されている。

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美術館や博物館ではなく「資料館」なのは、大量に原画は存在するものの各所各所で展示会が開かれるたびに作品を貸し出しているから。
とにかく可愛い。クルミちゃん。同時代に活躍した中原淳一の作品とはまた違った魅力がある。

男装の麗人の先駆けとして知られる手塚治虫『リボンの騎士』のはるか前に『?のクローバー』という作品を手がけた松本かつぢ。同じ時代で作品によって全く異なる絵柄をいくつも持つという器用さも見せる。
館内には塗り絵できる机もある。とにかくサービス精神に満ちていて、こちらが一つ一つ気がつけば丁寧に教えてくださり、いつの間にか2時間もお相手してもらった。
幸せ満載の資料館でした。館長ありがとうございました!

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