ブランディングを改めて考えてみる

日本の企業につとめる人たちのブランディングに対しての理解が、世界とくらべて表面的で、本質を掴んでいないのではないか?そういう問題意識のもと、実践経験に基づいた「ブランディング」の方法論・考え方をわかりやすく伝えてくれるのが、こちらの本。

『ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと』

本書で語られている、日本にみられる残念なブランディングとは、

①ブランド戦略を立てても、デザインからの視点が欠如しているため、効果的な最終アウトプットができていない
②ブランド戦略がなく、土台のない状態でデザインだけするという表面的な解決策なので、経営戦略として機能していない

そして、日本の弱みをズバリ鋭く指摘しています。

■素晴らしい商品やサービスを「消費者の視点」で「伝わるかたち」に落 とし込むこと(アウトプット)ができていない。

この弱みを生み出す背景としては、日本の環境では、「自分の意見をもち、自己表現する機会がなく慣れていない」ことが挙げられます。今の日本に必要なのは、「自分とは違った価値観をも尊重しつつ、自分軸で考え、自分の意見を大いに表現できる機会や環境をより多くつくっていくこと」。

いい点数をとるだけの詰め込み教育をうけてきた自分自身を振り返ると、同じことを自分の子供には絶対に繰り返し経験させたくないし、それをしていてはこれからの時代、やりがいのある仕事ができない人間になってしまうという危惧感をもっています。

目まぐるしく変化していく環境や社会で生き残っていくためには、
固定観念にとらわれず、クリエイティブに問題解決をしていく力が必要で、それを身につけるうえで、ブランディングをしっかり理解しなくてはいけません。

競合をリサーチし、市場を分析し、差別化を図って競争優位を勝ち取る競争戦略型の市場にフォーカスするビジネスのやり方が時代の流れに合わなくなってきています。

企業や商品サービスのもつ強みや個性、大切にしたいと思っている理念、社会的な存在意義などといったその会社の「らしさ」であるコアバリューに焦点をあて、その価値を押し出したビジネスが求めれらてきています。

これは、商品のスペック(機能的価値)だけでなく、商品やその作り手に共感できるか(情緒的価値)が重要になってきている時代といえます。では、この情緒的価値をいかにアウトプットし伝えていくべきか?
それを実現するためには、言語的なものだけでなく、非言語的なコミュニケーションである、視覚的、聴覚的、嗅覚的、味覚的、身体的要素なども含んだ戦略的なコミュニケーションが求められます。

情緒的価値を消費者や社会の人々にしっかりと理解してもらうこと。その結果、信頼してもらい、共感してもらい、ファンになってもらうというビジネスのゴールが達成できるのです。

そのためには、ビジネスから発せられる全てのメッセージが矛盾なく同じ方向を目指していて、世界観がぶれることなく一貫していること。それを実現させるためのブランディングを意識していかなくてはいけません。

ブランディングの具体的な内容については、最後に要点だけ紹介します。詳しい内容は本書をぜひ読んで理解を深めていただければと思います。

■ブランディングとは?

商品の本質や価値を引き出し、思いや強みをターゲットとなる
消費者層に正しく伝わるかたちに表現すること。
作り手の一方的な思いや、自己満足に陥った表現では、決して消費者の共感は得られない。
時代や環境、消費者のニーズを踏まえながら、ターゲットとなる消費者層が作り手の思いやサービスに共感できるよう、ビジュアルをはじめ様々なアプローチで消費者に伝える努力をしなくてはいけない


■ブランディングのプロセス

①企業商品サービスの強みや個性を引き出し本質を見極める
②ブランドの本質をわかりやすく概念化
③バーバル(言語)とビジュアル(視覚)によって魅力的に表現して、消費者が直感的に感じるかたちに体現する
④タッチポイントでブランドの世界観をつくり出す
⑤社内で足並みを揃える(インナーブランディング)
⑥ブランドを管理する

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