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奈良 鹿とともに生きる

奈良といえば鹿、というくらい鹿さんは顔になっています。
奈良観光に寺社仏閣目当ての方や、奈良町の雰囲気を楽しみたい方、かき氷などの美味しいもの目当ての方・・。色々あると思いますけど、「鹿と遊びたい」も外せない要素なのではないでしょうか。

奈良の鹿は神のお使いとして知られています。
奈良公園の中にある春日大社という神社の御祭神・タケミカヅチノミコトという神様が乗っていらしたのが鹿で、その鹿の子孫が奈良公園を闊歩する鹿たちだというのです。

なので鹿は神のお使いとして、大切にされてきました。
鹿は神鹿(しんろく)と呼ばれ、傷つけるのはもちろん殺したりするのはぜったいNGだったわけです。

神様のお使いに動物が付き従うのはよくあります。
お稲荷さんはキツネがつきものなのは有名なことですし、京都の表鬼門を守護する日吉大社さんは猿が尊ばれています。ほかにも蛇(みーさん)、ウサギ、など色んな動物が神とともにありました。

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実際のところ、春日さんでは、何故鹿が選ばれたのだろう…といつも考えています。
春日大社のある場所は、とても神聖な場所でした。
お社ができる以前から祭祀をする尊い場所として大切にされてきたのです。

阿倍仲麻呂という人がいました。
生まれは698年とされ、遣唐使のひとりとして唐へ渡り科挙という超難関試験を突破して官僚になった天才です。彼が仕えたのは玄宗皇帝。あの絶世の美女楊貴妃を寵愛したという皇帝です。

その仲麻呂が日本を出発するときに、航海の安全を祈願する儀式をしたという記録が続日本紀に残っています。この時、まだお社は創建されていませんでした。神社が作られる以前から、ここは聖地として尊ばれる場所だったのです。

クニがクニとして整う以前から、このあたりは獣が闊歩し、山の恵みがあり、ヒトが暮らす場所だったのでしょう。鹿は、そこに暮らす人々の大切なタンパク源として、貴重な存在だったかもしれません。その体の大きさから、一家を養うに足りたことでしょう。(リスやムササビでは少なそう)

やがて稲作が根付いたあと、鹿の角が落ちるタイミングが決まっていて、また春に必ず生えてくるあたり、稲作の循環と同じように見なされて尊ばれたこと…などが考えられると思います。牛も角を持ってますが、生え変わらないんですよね。毎年立派な角が生えてくるリズムを持つのは、神に近い御業だったかもしれません。

奈良の鹿たちは、人間の住む前から土地の主人で、さらに人間の役にたち、人間に尊ばれ、奈良公園の歴史があり、現在まで連綿と続いているのだと考えるとほんとに縁の深さに感動します。


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