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中小企業のDX-04「ロボット編」

ども。ならなすおです。

この記事は、中小企業さん向けになります。
DX体験記「ロボット編」です。

これまで人間が担当してきた物理的な「加工する」「運ぶ」「巡回する」などの作業が、人手不足で「回らない!」という現場が増えてきました。

そこで、それらの作業を代替するロボットが、徐々に中小企業にも注目されつつあります。

既に大企業では、加工ロボット、搬送ロボット、倉庫ロボット、巡回警備ロボットなどは導入・稼働しており、無人の施設などでは、ロボットが恐ろしいほどのスピードで仕事をこなしています

私が頻繁に紹介している「省力化補助金」でも、人手不足を賄うためのロボット導入というのは、補助金の主要な使途の一つです。

今回は、従業員さん50人未満くらいの中小企業さんを念頭に置き、2024年現在での「ロボット導入」について、少し詳しく見ていきたいと思います。

それでは本編、スタートです。


(1)人間が対応できなくなった現場

人口減少とともに、これまで人間が対応していた場所が、続々と変化しています。

分かりやすいところでいえば、コンビニ
24時間営業を断念する所が増えてきてますよね。
地方のドミナント出店(他のコンビニを排除するため一地域に集中出店する戦略)エリアなどでは、閉店も目立つようになりました。
セルフレジがどんどん増えて、少ない人数で店舗を切り盛りしている様子がうかがえます。

あとは、飲食店
キッチン、ホールとも、顕著に人手不足が見て取れます。
中小企業診断士が飲食店に行くと、注文から配膳までの時間とか、ピンポンが鳴ってから対応されるまでの時間とか、退店したテーブルの片づけに来る時間とか、いろいろリサーチしてしまいます(体が勝手に)。
最近の飲食店を見ていて思うのは、「少しお客さんを待たせ過ぎかな。人を増やした方がいいかも」という事です。
でも、人が雇えないんだもん、しょうがない、、、
ってことで、出てきたのが、配膳ロボットです。
最近よく、見かけますよね?

前回の「IoT カメラ編」では、目視検査の超優秀なスタッフ(神おばちゃん)を将来的にはカメラで代替していかなければならない、みたいな話をしましたが、中小企業の他の現場でも、同じような状況にあります。

製造業を例にとると、まず、肝心かなめの「モノを作るスタッフ」の不足
「熟練工の匠の技」となると、もっと深刻に不足しています。

物流業では、ドライバー不足が深刻ですが、自動運転の実用化は少し先の事として、荷物を適正に出し入れする「倉庫」
かつては、フォークリフトを人が操って荷物を運んでいましたが、そんなスピードでは対応できなくなってきている。
大手の物流倉庫では、ロボットがすごいスピードで荷物を動かしています

全国のあらゆる現場で、もちろん中小企業の現場も、人が足りない状況。

無料で簡単に導入できるのなら、皆さん導入されると思います

倉庫の搬送ロボット(イメージ)
(AIで生成)


(2)ロボットの能力・メリット

①人間の抜けた穴を埋めてくれる

これは、まー当然っちゃ当然ですよね。
これをやってくれないんだったら、そもそもロボットを入れません。

②高速・正確に作業してくれる

ロボットには「手が滑った」とか「疲れた」がないので、コンスタントに同質の仕事をしてくれることが期待されます。
作業によっては、人間より「速くて正確」という場合も多いでしょう。
この場合は、ロボットを導入するメリットは大きそうです。

③疲れ知らずで夜中も稼働してくれる

これも大きいかも知れません。
24時間稼働させたい加工作業など(時間がかかるもの)を、昼夜を問わずやり続けてくれることも期待されます。
人間だと、「午後6時から翌朝9時まで稼働停止」になる場合でも、ロボットがその間作業していてくれたら納期が早くなります
(これはロボットのみならず加工機全般に言える話ですが)

飲食店の配膳ロボットだと、同じロボットに24時間作業させることが可能です。
パートさんを3交代させる必要がなく、少ない人員で現場が回せそうです。

④自分の動きや見たものを記憶してくれる

内蔵したカメラやセンサーで、見たもの、作業の過程などを記録してくれるのも、ロボットのメリットです。
加工系のロボットだと、作業回数をカウントしてくれれば生産性分析に使えますし、カメラや温度センサを用いた計測結果の保存はビルの監視巡回などの業務で使えそうです。

工場の加工ロボット(イメージ)
(AIで生成)


(3)ロボット導入のネック

①高い

これ、(4)で詳しく書きます。
費用対効果を計算して、「導入してもその投資を回収できない」場合は、導入できないです。
個人の率直な印象としては、2024年7月23日現在、まだ中小企業には手が出ない価格のロボットが多いかな、と思います。

②初期設定

これが結構大きいかも知れません。
ロボットを現場で使うためには、位置情報の設定、動作プログラムの入力、環境情報の学習など、様々な設定が必要になります。
以前、DX概論で、「SIerさん(製品の設置を手伝ってくれる会社)も人手不足なのであんまり丁寧に手伝ってくれない」と書きましたが、その場合、自社で結構な設定作業をやらないといけない可能性が出てきます。
詳しい人がいないと、無理そうです。

③使用環境

これも、相当大きいです。

A.通信問題
バリバリ稼働してくれないといけない工場の加工ロボット等は、有線通信で指示をやり取りしていると思います。
ミスできないので。

無線通信(WiFiなど)で動かすロボットは、通信が弱いと動きません
つまり、「通信が止まったら、容易に止まったり、誤作動する」という事です。
無線でロボットを使う飲食店の現場などでは、「ここまでは事前指示で動いて、ここからは無線通信」といった段取りをしっかり理解し、お客様にご迷惑のかからないように準備する必要があります。

B.段差問題
動く系のロボットは、本当に、びっくりするほど段差に弱いです。
電源コードのちょっとした段差、超えなかったりします。
ロボットの種類によって、段差への対応力は千差万別ですが、導入予定の現場の「段差の有無」は事前に綿密に把握しておいた方がいいです。

④運用、トラブル対応

これも(4)で詳しく書きます。
初期設定問題と同じですが、ベンダーさん(製品を作った会社)もSIerさんも、こちらが思うほど迅速に対応してくれない可能性が高いです。

飲食店の配膳ロボット(イメージ)
少し大き過ぎるかも
(AIで生成)


(4)導入可否の判断

①費用対効果分析

導入費(イニシャルコスト)と、運営経費(ランニングコスト)を試算し、これまで払ってきた人件費や、期待される売上増などを勘案して、「ロボット導入投資は何年で回収できるのか」「ロボットが何年耐久したらいくら利益が出るのか」を前もって把握しておきます。

その試算の結果、費用よりも効果の方が大きければ、「導入」と判断します。

ここで気を付けないといけないのは、割と皆さん「端数的なコスト」を試算しないことです。
↓に書いたような要因は、現場では結構な確率で費用対効果の初期試算を狂わせます

[費用対効果試算を狂わす諸要因]
・人間がプログラムする時間
加工でも巡回でも配膳でも、動きを指定する人間の「指示入力」が必要になります。
この時間当たり人件費を、コストとして試算にONしときます。

・部品交換など人間が関与する時間
人間が関与してロボットが止まっている時間は、稼働時間から除いて計算します。

・夜中、ロボットだけでホントに大丈夫?
部品、工具の入れ替え、段取り替え、不要ですか?


②トラブル対応体制

ロボットに何らかのトラブルが発生して、止まってしまった、、、、、
普及するまでの時間はロスです。
代わりに人間が作業したり、残業が発生したりします。
なるべく避けたいやつです。
こんな時、「自社は何をどこまで」「SIerは何をどこまで」対応するべきでしょうか?

このルールを、しっかり決めておかないと、「思ったより生産性が上がらなかったな、、、」という事態を招きかねません。

ロボットはけっこうな頻度で止まります。
特に最初のうちは、、、
慣れるまでの「学習コスト」を負担するイメージと、対応体制の構築が求められます。

工場内の部品搬送ロボット(イメージ)
(AIで生成)


(5)おわりに

経済産業省中小企業庁の外郭団体である「独立行政法人 中小企業基盤整備機構」(中小機構と略します。)が、「中小企業生産性革命推進事業」というポータルサイトをやっています。

まず、↑で情報を収集してみてください。

また、支援施策は、

経済産業省 → 中小機構 → 都道府県 → 市町村

といった具合に、階層的に形作られています。
ミルフィーユみたいな感じです。

皆さんが今取り組みたいロボット化、資金が許すロボット化は、どんなものでしょうか?

「中小機構の補助金にチャレンジ」するのがいいのか、「まずは市町村に相談」するのがいいのか、「都道府県や商工会議所のセミナーに参加してみる」のがいいのか、、、

「これが正解」というのはないです。

ただ、どの機関も、「今、皆さんがロボット化に取り組みたいと痛切に感じている」ことは理解していますし、支援施策も準備しています
皆さんが相談する順番としては、

①同業のロボット化している先輩
②公的機関(支援施策をやっている所)
③知り合いのベンダー、SIer

の順がいいと思います。
決して自社のみで悩まず、「信頼できる外部」に助けを求めてみてください。

皆様の事業存続と発展を、心よりご祈念申し上げます。

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

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