LA-MULANA文字を裸にしよう
とある実況を見ていて、古文書リーダーでは読めない賢者文字を自力解読するというこちらの想定外な遊び方を目撃してしまった。でもなんだか考古学しているようで何よりだ。その動画のコメントで「表意文字と表音文字を混ぜて作るなんてすげー」てのがありまして。そして作った本人は何がすげーのか全くわかっていません。
なぜだろうか?ちなみに俺はLA-MULANA文字を読めない。前作からの謎解きで必須のLA-MULANA数字すら危うい。4~8あたりが思い出せないわ。何より2でLA-MULANA数字を使うときでも、前作の絵素材を見て描かないと思い出せねぇ。
つまり俺にとってLA-MULANA文字とは「こんなに長い付き合いになるならもっと最初から考え抜いて作ればよかった」という反省の大きなものなのだ。ではそんなLA-MULANA文字が生まれて完成するまでの流れを紹介してみよう。
表意文字と表音文字
ちなみに表意文字というのは、文字自体に意味がある文字のことを言います。簡単にいえば漢字です。LA-MULANAだと数字にも意味があるので表意文字になりますが、それはリメイクで足された設定。表音文字は文字自体に意味はない、発音するための音だけを示す文字です、平仮名とかアルファベットみたいなやつ。
つまり表意文字と表音文字を併せ持つ代表的な文字は日本語です。元々は縄文時代ぐらいから言語はあり、大陸から漢字が伝わった弥生時代ぐらいに漢字の音だけを利用して表音文字として利用、万葉仮名が出来上がる。その後「漢字書くのめんどくせぇ!」と崩して書いて純粋な表音文字として仮名が出来上がり。漢字の方を意味がある文字として混ぜようとしたのがどういう経緯なのかはシラネ。
こういう流れ・隣接する国などの環境もあり、表音文字と表意文字の両方を使う日本語というかなり特殊な文字が出来上がったわけですなー。
もちろんオリジナルから
何もスゴイものでもない、と考える根拠の一つがこれだ。MSX風のオリジナル版の頃からLA-MULANA文字は出来上がってる。元々はduplexさんの案だったかな?いや、俺か?俺のような気もする。とにかく古代文字を読むというのが考古学者らしいということで。その時点ではただの「アイテムがないとヒントもらえない」というアイテムを使った足枷の一つでしかなかったが、「それなら導きの門はしばらく読めないままで進めさせたい」「導きの門がアクションのチュートリアルになっているので、古文書から読み取るチュートリアルステージが欲しい」とduplexさんがアイディア出しまくるので、LA-MULANA文字をあらゆるところで駆使するスタイルになっていったんだと思う。
これがオリジナル版の時のLA-MULANA文字。わからない人には全くわからないが、256文字という制限がある。当時は海外で出すなんて考えてもいないので基本はひらがなとカタカナ。レトロゲームではそれで十分だが、8bit時代でも後期のゲームでは8*8ドット内に漢字を書いて使ってた。オリジナル版ではよく使うもの、ひらがなで書くと意味が伝わりにくいものなどに絞って漢字を使ってる。例えば「母は」が「ははは」じゃ伝わらないからね。
数字はこの時作ったものが延々と使われてます。これはマップの中や印など使用頻度が高かったからです。あとマニアの中にこの頃からすでにLA-MULANA数字を暗記しちゃってるバカ者どもがいたこと。そしてこれが一番後悔していることで、なんでこんな複雑にしちゃったかなと。数字なんだからもっと画数の少ないものにすればいいのに。特に9。
仮名もこの時作ったものが延々と使われてます。逆に日本で公開することしか考えていないのでアルファベットは超適当。ほぼ原型に近い。漢字はリメイクの際に全部作り替えているが、これはデザインがどうのという話ではなく8ドット内で描かれているものをそこまで大事に使うこともないでしょうと。
ただLA-MULANA漢字の考え方自体はこの頃から変わってない。書は本のような形してるし、杯なんてそのまんま。目とか体も。これはやはり日本人、漢字の起源といえば象形文字なんでしょう。形で示せないものでも「間」は「2本の線の間」だし、「地」が下に曲線一本で「天」がそれのついになってて上に曲線一本とか。これらの考えでは思いつかない、形のない概念みたいなものはぐにゃぐにゃーとそれっぽい形を描いただけ。
オリジナル版ではリメイクの頃にある「1」と「始」が同じLA-MULANA漢字というネタがありません。考えてないんですね。
要はLA-MULANA文字というのは単なる日本語なのです。レトロゲームでは全ての文字の幅が同じになるので、古文書で表示するための専用データを別に作るのではなく日本語データをさも古文書のように見せるために文字を差し替えているだけ。この時点で外人がどう考えるかなんて考えていません。
リメイクで設定を盛り始める
そしてリメイクです。まず始めたのはLA-MULANA数字のリライト。あぁ……なんでこの時勇気を持ってデザインを変えなかったのか。ここで英断をしていれば!LA-MULANA2でルエミーザ博士のイラストを描く時、ディティールを増やすために第4部の空条承太郎のように帽子にバッジをつけようと思って、第8の子だから8のLA-MULANA文字をつけたんですよね。「%て……だっせぇなぁ。」と、延々と後悔を続けることになるのにー。
リライトしようと思ったのは、オリジナル版の時に表記のブレがあったからです。8ドットで書いた文字と、背景や印に書いた文字が違うところがあるんですよね。なのでリメイク用の素材として、高解像度のLA-MULANA数字のデータを作っています。
そして仕掛けや謎解きのアイディア出しをしていきます。まずでてきたのはスキャン時にまず古文書が表示されて、それが先頭から現代語に置き換えられていく演出にしたい!と俺が言い出したはず。翻訳を外してLA-MULANA文字を理解するってのは誰の発案だったかな。俺だったようなduplexさんだったような。あとはまぁレトロ風に作る必要もないわけだし、ゲーム画面は粗いドット絵にして文字関係は倍の解像度で表示しましょう。そうすればオリジナル版の時のような文字が読みにくいっていう苦情も無くなるだろうし。細かく表示できるから漢字もたくさん使えるね。
とにかくリメイク版でも全文字に対応したLA-MULANA文字が必要となるわけです。ん?全文字?ひょっとして漢字全部ですか?誰が?ボクが?えー。
幸か不幸か、実際は制作に4年もかかるので全く要らぬ心配だったんですが、LA-MULANAは翻訳が大変だろうからってことで開発初期から全文章出してくれっていう無茶振りされてたんですよね。そのおかげで開発初期に先に全仕掛けを考える必要があったことと、全文章から使用される漢字のリストアップができちゃうわけだ。じゃあ頑張って全漢字にLA-MULANA文字を考えればいいだけだな!
なにこの文字数。バカじゃない。
実際にはメニュー画面でのみ使われる漢字もあるので若干減りますが、頑張ってやるしかない。オリジナル版でデザインを横着したおかげか、仮名はかなり楽に作れそう。これは気付いた人も多いと思いますが、仮名は単なるローマ字です。母音と子音を作っただけですね。
右下にある部分が母音。子音の必要ないアイウエオにもバランスを取るためにア行専用の子音つけてますが、母音5文字をコピーして子音パーツを乗せるだけ。
オリジナル版では無頓着だったアルファベットですが、リメイクを機に作り直しています。と言っても新たに作ったわけではなく、発音の近い平仮名を当てただけ。例えば「U」なら「ゆ」、「K」なら「け」という具合に。なぜ外国語の扱いがこんなに軽いのか?それは今書いているような小難しい話を外人に説明する機会などあるわけないと思っているからだ!大丈夫、あんな肉ばっかり食ってる奴らに表意文字なんてわかんねーYO!
漢字ですが、オリジナル版の時に何を思ってデザインしたかなんて忘れているけど象形文字で考えられるものとそうでないものぐらいは同じ考えで作ってますね。結構な数を作っててすごいなぁと思うかもしれませんが、私は思いません。深い考えなどないからです。漢字同士の繋がり、関係など頭になし。ただ先頭から順番に頭を無にして書き進めるのみ。
ただ謎解きを全て考えていたおかげで、LA-MULANA数字に意味があるというネタは既にある。それならばということで先頭から描き進めながらも、「争」が出てきたら「あぁ、争いだから6と同じ文字にしよう」ぐらいには考えてますね。そしてこの数を猛スピードでやっているとそれなりに頭のスイッチが切り替わるのか、古代文字らしくしようという考えは徐々に芽生えたようで。
オリジナル版の「地」や「夜」みたいなシンプルな線は何かのシンボルと考えると神秘的に感じる。この上下の曲線を「上下」とする。上は同じ文字で空、天、世界なんかも意味すると決める。下は地面、地球、土なんかを意味すると決める。それと漢字の象形文字にもよくでてくる人を示すマーク。これは使えます。人が関係する文字には積極的に使ってみよう。
「人」が基本。横向きの人間。あえて下半身が足とも蛇とも取れるような形に。人マークが向き合って「伝」、そっぽ向かせて「他」、「上」の下に「人」で「仕」、上下を1つの文字にして「全」とかとか。そしてこのゲームで頻繁に出てくる漢字「母」が「全」と同じ文字、すなわち「天」から「地」に降りてきたものを示す。MUを示す「無」がロケットのような形にしてある。そして「祭」って文字が地面からロケットが飛んでいるような形なのも面白い。色々やってますね。この辺は連続で描くことでハイになってニヤニヤしてやってたんでしょう。
まぁこれ以外の思いつかないものはなーんとなくごちゃごちゃーと筆を走らせております。
ここまでやったら2はもういいだろ
ところがLA-MULANA2になるとスキャナ画面でLA-MUANA文字が出ません。これは一体どうしたことか。
最初に書いた実況者は極端だけども、古代文字と現代文字を見比べるというのは前作でやりつくした感がある。そりゃ考えればまた何か思いつくかもしれないけども、前作と同じ謎解き方法をまた続編で使うってのは芸がない。それより何より、この古代文字が翻訳されて現代語になるという演出のおかげでローカライズが地獄のような作業になったのだ。そりゃそうだ、文字構成の違う言語ごとにLA-MULANA文字対応表を作らなきゃいけない。英語に近いヨーロッパの各言語やロシアのキリル文字ぐらいはまだいい。中国語と韓国語はもうやってらんねって感じ。中国なんて漢字しかないぞ!あとはUnityで現代文字は出せても、それと同じ文字幅セットのLA-MULANA文字セットを作る方法がわからなかったのだ。いやわかるんだけども、日本語で使ったフォントと全く同じ文字構成・文字幅のLA-MULANA文字のフォントを自作するしかないのだ。そんなの嫌だ。
盛り上がるのであれば、もっともっと掘り返してみようと思います。