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【開発秘話】オリジナル版開発秘話6

終わったな……

※すでに公開されていないオリジナル版の開発秘話を公開していきます。
今となっては伝わりにくい部分などは修正・補足を入れてあります。
今回のものは一旦公開された先行公開版が終わり、後回しにしていたおまけ要素も完成させた完全版公開後の話。
トップの画像は、公開予定日に間に合わなかったので「今日はカレー曜日だ。まだ今週は終わっていない。」と開き直った時のものです。

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おわった……終わったよ!えーなに?5年?アホか。もう先攻公開版で終わった感はたっぷり満喫してしまったので、あの時程の充足感はないのが正直な所。もう遺跡をいじる気力も残ってなかった。でもま、せっかくなので先攻版公開から完全版公開までのお話しを、完全終了の出だしとして書いておきましょう。

ほんとは、先攻版出して1ヶ月ほど休んですぐに完成版と思ってたんですが、ご存知の通り2ヶ月程はバグ修正に奔走。その後休んでいるうちに……みんな忙しくなってしまったと。なので実質完全版の作業に入ったのは完成2ヶ月程前でした。その間にもおまけ要素の下準備は始まってたんですけどね。なにせ結構なバグフィックスに皆さんをつきあわせてしまったのと、なにより1週間程でクリアしやがる者どもがいたりでこっちにしてみればムキィーですよ。しかしながら、今はたとえフリーゲームでもネット上でどんどん攻略情報が出てしまい、自力で迷うって要素を作ること自体が難しくなっちゃったんじゃないかと。市販ゲームでも攻略本はあって当たり前ー、当たり前ー、当たり前ー!!な感じがありますもんね。
そんなわけで、感謝と恨みを込めて当時予定になかったおまけフィールドを足す事にしました。

これですね、これ。完全版開発が始まった時に動き出しましたよという意味合いも込めてしばらくサイトトップに置いておきました。データ的に空きのあったフィールド部分を全部こいつにつぎ込みました。なので1フィールド20画面という法則もこいつには当てはまりません。このおまけフィールド、上に書いたようにネット上で攻略が出てしまうっていう状況を最初から考慮して作ってみようっていう実験的な要素も入れてあります。そう、ネット上で攻略情報が出たとしてもなお難しい!これ。いやいや、実際に作ってみると何の事はない、ただ単に意地悪な、理不尽きわまりない物になってしまいました。このおまけフィールドは完全におまけです。解く必要はまったくない、無理して解くものでもない、先攻版にてやり尽くしてしまった人向けのLA-MULANA高難易度版とでも思っていただければ。ですのでこのおまけに関する質問にはいっさい答えません。最近のゲームでよくある追加隠しダンジョンとか言いつつ強力なアイテムやムービーがあってみなきゃ損じゃない!なんて事もありませんから。
というよりね、もうこのフィールドテストでもやりたくないのさ。えーもう。動作チェックで歩いているだけでもイヤになる。一部屋の仕掛けを確認する為に30分やり続けたりとか。ものすごいシビアなタイミングでアクションを要求される所など、一度偶然クリアしたので「うん、クリア可能。次!」で終わらせてしまい、パズル部分も、先攻版で知り尽くしたイベント構造をさらに無茶な組み合わせで使ってみたりとか。あとこの敵がいる所にこいつを出すなよ!な敵配置とか。地獄とか。
セーブデータの仕様が変わってしまい、みんな最初からのプレイになってしまうんだけども、そのおかげでおまけ要素全てが完全版公開直後に明るみに出る事もなくなり、誰が見つけるか、どう反応されるかが楽しみでもあります。先攻版でとりあえずな部屋だった謎のゲート2つ。この2つにはロムが。ロムの合わせ技で楽しい物が2つ、そしてこのおまけフィールド。あぁ、オープニングもやっと追加したしエンディングも少し変わってますね。

さて、今後は各ステージごとの裏話だの設定だの思い入れだのをうだうだ書き連ねていきたいと思います。個別に語っていく前に遺跡全体の構想というか、次々作っていく前段階での設定のお話等をしておきましょう。

まず前にも語ったように、早い段階から遺跡全体が一つの生き物の体だった!てのは決まっていました。いや、俺の中だけで決め込んでいました。この段階での俺のココロ会議の決議事項は反対が許されません。絶対であります。他の二人に相談せず何食わぬ顔で当たり前のようにすすめてしまうわけです。
ストーリー草案を二人に話した時、なかなか思ったままには伝わりませんでした。それはもちろん、二人の中ではガリウスのステージ構成が頭にあるし、遺跡全体が生き物とかかっ飛んだ設定が一発で伝わるわけがありません。
「ステージを全部つなげると一つの巨大な生き物なんだよ。」
「オウケー、ボス。ワカタヨ。」
とはなるはずもなく。ていうかそれ絶対わかってないよ。まず一般的な「生き物」っていう概念をはずしてもらわないと通じない。でっかいものの中にヒトが次々生み出されるわけです。そのヒトから見たらでっかい生き物の全体像なんて見えるはずもなく、産まれた空間で神殿やらなんやら作って独自の文化を高めていく。これが今で言うフィールドですね。文明が熟成すると自然にヒトは宇宙を目指して外の世界でより文明を発展させていく。世界中に残る文明遺跡はこうやって出来上がった。しかもその古代文明は天文学が進んでいて、その痕跡が残っている……と。というわけで各フィールドは各古代文明のひな形みたいなつもりで作っています。でっけぇ話だ。とにかくコレがLA-MULANA遺跡の開発初期でのイメ-ジ草案です。
そこまでは二人にも伝わりました。しかしそのでっけぇ話をどうやって伝えるんじゃい!という話になります。その時に俺がはいた言葉
「なんか不思議な模様とかが壁にいっぱいありゃいいんですよ!おおらかに!きゃはー!」
そんな感じだったと思います。ミステリーサークルも遺跡の壁に描いちゃえなんて案もありました。そのなごりがタイトル画面の丸い模様と導きの門の丸い模様です。まったく意味のないものになりましたが。そういうノリで、なんかもう、説明のつかないすごいものは全部LA-MULANA起源なのだ!と感じさせればいいんではないかと別冊ムーを読みあさってネタを集めました。なんというかこう、エヴァンゲリオンなんかの影響で設定は事細かく、つじつまがあっていて尚かつ全てが説明されなきゃいけない!みたいな空気があったじゃないですか(当時ね)。コレに逆らって、昔のゲームならではのおおらかさというか。未来の子どもを助けに行くのにポーズすると、のんきに便器にはまってたりとか。そういうおおらかさ。設定にうるさい人が乗り込んできても、
「そもそも生命の木ってのは旧約聖書が……」
「うっせぇ、全部LA-MULANAが起源なんだよ!」
で乗り切るつもりでいました。幸いそんなひとはいませんでした。というよりそんなのに詳しい人はそもそもこんなサイトに来ませんから。 逃げ所を用意したら後は簡単、生命の木、パレンケ、ラーマーヤーナ、ピラミッド、インカ、アステカ、メソポタミア、ネタになりそうなものは何でもひっぱりこんで各フィールドのネタとしてばらまいたのでありました。敵キャラクターも創作したものより伝承に残っているもの方がいいなぁって事でモンスター図鑑なんて本も買って、フィールドのネタにからめられそうなやつをピックアップしていきました。でも伝承のモンスターって動物の体に羽つけたりとか、ライオンとか蛇とかパターンが決まってて、できるだけ似たような敵ばかりにならないようにチョイスするのも大変でしたわ。

そしていろんなネタを集めつつ、各フィールドのネタが決まっていきます。それぞれがどういうネタで作られたかは各フィールドのページにまかせるとして、避けたかったのはピラミッドそのままとか、アステカそのままっていう安直なものにはしたくないっていうのと、MSXカラーなわけで、15色しか使えないってのも配慮に入れないといけません。壁や床みたいに当たり判定のある手前に来る色と、背景として背後に回る色の組み合わせが重要になるんです。太陽神殿であれば黄色と茶色、巨人霊廟であれば茶色と青というよに。この組み合わせが全てのフィールドで違わないと似たような印象になってしまうので大変です。15色ありますが、手前に来る色なんて限られますし、背景なんかにまっ黄色置いても背後に回ってくれないのでおのずと組み合わせは限られてしまいます。そこであみ出したのが混色技術であります。

このように、手前色が黄色だからと黄色のみを使うのではなく、影に行くにつれて赤っぽくなったり、青の影に緑を使ったりと、混色の組み合わせまで変えてやるわけです。これなら15色であろうが組み合わせは無限なわけでありんす。実際、MSX1のゲームでコレをうまく使いこなせていたのはコナミとT&Eソフトぐらいでした。
得にコナミは何があろうと背景は基本的に黒を使います。これはゲームとして背景とキャラクターがハッキリ区別がつくからですね。とってもゲームメーカーらしい配慮であります。

なんだかどんどん文章が長くなりますがまだまだ語るぜよ。開発当初から予定にあったのに実装されずに終わった幻の遺跡ネタを暴露します。上にも書いたように、特に会話文章でストーリーをづらづら説明できるようなゲームではないので、視覚的に遺跡全体がラスボスっていう演出をいかにするかがこのゲームの肝だったりしたわけです。これがもしスーパーファミコンクラスの描画力を再現できるのであれば、遺跡中が微妙に波打ってたりとかすれば簡単なわけですが、これはMSXです。脱出デモの地響きで画面が揺れるのさえやるべきかやらないべきか迷ったぐらいの貧弱描画でなければなりません。てなわけで、当初はこうしたかったのです。

しかしこれをやろうとすると、フィールドごとのグラフィック素材領域が全然足りないし、地形まで変ってしまうのでさらに倍のフィールドマップデータが必要になっちゃうわけで。無論、即座に廃案でございます。それならばと思い付いたのが、遺跡のどこでも体なわけで、寄生獣のようにいろんなところに目玉が出るのはどーじゃい!となりました。

これ、わりと簡単に出来そうなレベルなんですが。これを発案した頃はプログラムが結構な山場で、華麗にスルーされました。結局、遺跡全体がラスボスってのは賢者の会話で済ませてしまいました。

最後にフィールドとは別に、イベントの数々。お店の人たちでございます。前にも話しましたが店でメッセージが出る出ないで仕様を何度も変更したりといろいろいわくがあります。このお店の人たち、当初は只単にものを売るだけの存在でした。店のBGMを作った時に、サミエルさんは「この人、なんかやるつもりや!」と思ったらしいですが、俺としては夢大陸アドベンチャーのお店を想定して曲を作っただけで、あそこまで愉快な人たちにするつもりはありませんでした。フィールドごとに1店ずつ配置する事になり、店の主人も変わるしでフィールドに合わせて店ごとに特色付けられた方がいいなぁーと思って店メッセージの実装を頼んだだけです。じゃあなぜあんな、duplexさんに「ならむら商会」と呼ばれる程変な連中ばかりになってしまったのか。
理由というか、きっかけは地上の連中です。コイツら、ただの店員のくせにオリジナルグラフィックをもっているという生意気な奴らですが、長老は最初からMSX無駄話をさせる予定でした。これが俺の素のノリで描いてしまったもんだから大変。「ベルトがのびっちょる!」とかその最たるものです。もちろん、最初は変な気はないので「ボウケンにいくならかっていきな!」なんて普通な対応が出来ました。でもこんなのじゃここでもうネタ切れなわけです。ゲーム中何個もある店に特色を出すには?キャラクター性だ!と考え「やすいよやすいよ。ぜひかてくさい。」とアジアのお土産売りみたいなカタコト会話が出来ました。ここから壊れた。そしてそこからは当然の流れというか、「ねぶるぞ、コラァ!」が出来上がったわけです。これを書いた直後、自分で笑い始めたからもうおしまいだ。ノリでどんどん店のメッセージを作る!スピード勝負、買わなければ呪う、にえたぎる、ドロリ、店じゃん、魚、きゃはー!……楽しい。もっと店を!もっともっと店を!ということで当初の予定より店が増えました。
いやー、ほんとに、ただ昔のゲームのお気楽さを出したかっただけなんですよ。開発中は反対意見もありました。お二人はどうも、俺のストーリー説明と出来上がってくるグラフィックからシリアス路線のゲームだと思い込んでいたようで。しかし俺の方は聞く耳もたず、そのまま続行。慣れというものは恐ろしいもので、「これはどうなのかなぁ」と一番いぶかしんでたduplexさんが最後には大喜びでならむら商店を語るまでになりました。

盛り上がるのであれば、もっともっと掘り返してみようと思います。