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【開発秘話】オリジナル版開発秘話8

地上 ~よくこんな所で生活してるよね~

冒険のスタートする地上でございます。初期の予定では全く計画になかった地上フィールド。ここだけ地上らしさとギミックの為に4×5を無視した作りです。予定になかったものだから、この地上にはいろいろな逸話が残っております。楽しいですよ。わくわくですよ。

まず、地上が組み込まれる事が決まってからは、地上には何が必要かを考える所から始めました。サミエルさんがウシャスのオープニングのような「さぁ遺跡に入りますよ」な冒険の始まりを感じる導入が欲しいという事にこだわったので、GR3でデモを作る事に心底疲れていた俺とduplexさんがデモではなく導入を感じされるものとして、長老を置きました。これにセーブ機能を任せる事で、地上が冒険の拠点って位置づけに決まります。それをふまえて店の商品ラインナップが決まります。いろいろ議論して、結局わかりづらくなってるんですけども、機械的なもの・遺跡風味のないアイテムを地上で売ってます。防水ケースとかMSX2ですね。結局ならむら商店が暴走して遺跡内でロム売ってたりしちゃうんですが。この地上を拠点にするっていう案にサミエルさんはこだわってましたね。サブウェポンも地上でしか購入出来ないようにとか、銃だけは最初から弾なしで持ってるとか、いろんな案がありました。説明書に書いてある親父から見知らぬコインが届いたっていう設定を活かして初期所持金を1にしたいとか。すべて時の流れとともに忘却の彼方に流しました。

地上にはいくつかお金の出る壷があります。このへんの調整は随分時間をかけたんですよ。地上で稼ぐのではなく、遺跡に降りてお金を貯めてどんどんアイテムが強化されて行く、地上を拠点にする意味を出す為に。地上で拾える30Gでゲームのセーブに必要な10倍カートリッジとスキャナが購入出来るようになってます。古文書カートリッジを高くしたのはduplexさんのアイディアです。最初は読めない石碑があり、冒険を進めて行くと読めるようになって改めて謎の意味が分かるようにしたいと。この頃は何度も通しプレイしたなぁー。銃弾は最初999Gだったし、MSX2も500Gぐらいしてました。通しプレイで自然に入る金額を想定して値段を何度もいじりました。ところがですよ。この冒険をしながらお金を貯める案を出したduplexさんがですよ。事もあろうに打ち合わせ時にこんな事を言い出しました。
「ワシは地上でお金集めてセーブ&ロードしてツボのお金を復活させて、金を貯めてから地上のものを買いそろえて進めてます。」
バカな!言い出しっぺがズルしてる!ということで地上の金は一度取ると二度とでないように変更させてもらいました。あんたの野望、ロスト。お金は苦労して貯めるものです! 地上には他にも印で隠された財宝があります。一度に100Gぐらい入ってる壷ですが、これももちろん一度取ったら二度と出ません。

おつぎはギミック的な事を。我々、こんなゲームを作っているぐらいなので昔のゲームの良かった所などは積極的に自分たちのゲームに取り入れます。常々自分のゲーム論として語っているんですが、スタート位置から川の向こうにものすごい強そうな敵が見えるとか、最初の城の対岸に最終目的の竜王の城が見えるとか、いずれたどり着くであろう未知の場所を最初から見せてワクワクさせるっていう手法。地上に取り入れたのは初期状態では絶対勝てない中ボスと装備がないと即死レベルの滝です。中ボスはネタ出しの参考にしていたモンスター図鑑を見て、「蛇の杖がないと倒せない」というおあつらえ向きの設定を持ったアルゴルに決めました(アルゴスのこと。いまだに思い出せないが、当時読み間違いだかなんだかでアルゴルにしてしまっていた)。ヒントとして隣の画面に立て札とテントを置きましたが、よくもまぁ、こんな恐ろしいものがいる近くに住んでるものです。

滝の方は、すでに書いた体験版の紆余曲折からああいう形になってますが、暗い画面を抜けると青空が広がっているという開放感の演出は残してあります。ここにはイレギュラーなゲートがありますが、これも昔ゲームからの知恵で、初期によく行っていた何気ない所に重要なものが出て来るってのがやりたかったんです。水場の側のゲートが水を使う塔に続いてたりとか、その表の空の水源から水が来ているとか、非常に良く出来ていますが、すべて偶然です。考えてません。とにかく後半のキーになる場所に行くにはイレギュラーなゲートを使いたいって為だけに置かれています。
(追記:さらにもう1つLA-MULANAの設計として、この地上に出現する意外な隠し場所のゲートというのは、「進められる場所が無くなって全マップをしらみつぶししようと軽く絶望した頃に見つかるように」という狙いもあります。)
空の水源からここにつながっているってのは前にも書いたようにサミエルさんのこだわりを活かした結果。ジョカのピラミッドに向かうのに一度地上に出てしまうのは、最初から決めてました。「えぇ~、実はこんな所にルートが出来るんだぁ!」がやりたかっただけ。

地上にはアイテム、ほら貝が落ちてます。普通にプレイしていればおそらく一番最初に目にする宝箱です。これにはduplexさんのこだわりがあって、LA-MULANAの昔のViewページにあるスクリーンショットでほら貝の出し方の解答が載ってました。うふふ、こう見えても我々、少しは考えてるんですよ。

そうそう。開発が進んでそれほど深く考えていなかったのに各フィールドのつながりとか裏表の法則とか、なんかうまい具合にまとまり始めた頃。各フィールドには必ず裏表があるとなったわけで、姿がかわる聖母の祠も裏表みたいなもんで、となると地上にも裏が!さらには隠しガーディアンが!とか考えてました。会議でぽろりと出してみましたが、プログラムラッシュ中だったためさらりと忘却の彼方ですよ。

こんな事を妄想してました。やりたかったな。あ、今思えば夜の地上が裏みたいなもんですな!奇麗にまとまりました。夜と言えば遺跡入り口の石像。このへんは何も考えず思いつきで作ったので、なーんの意味もありません。何を考えて石像をこの形にしたのかも記憶にありません。多分、体験版開発中から出来上がってたんだと思います。

曲はサミエルさんですね。ふふん、俺の知らない間に導入の決まっていた地上フィールドです。曲も知らないうちに出来上がって勝手に鳴っていました。ボクの出番はいつでしょう。

盛り上がるのであれば、もっともっと掘り返してみようと思います。