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本への愛が溢れまくる映画『ブックセラーズ』

原題:THE BOOKSELLERS

アメリカ映画/2019年/99分/

監督:D・W・ヤング

製作総指揮&ナレーション:パーカー・ポージー

字幕翻訳:齋藤敦子

配給・宣伝:ムヴィオラ、ミモザフィルムズ

~以下感想文~

ブックセラーズはハンターでありエンジェル

まず、「bookseller」という単語をCambridge Dictionaryで検索してみると

a person or company that sells books

とあります。まさしく「本を売る人・会社」、そのままです笑

ところが、この映画のフライヤーには何とも魅力的な見出しが付けてあります。

ブックセラーズとは、ただ本を売る人じゃない。
彼らは本の狩人(ハンター)で、本を守る天使(エンジェル)。

ハハ、ハンター!?なんだかこの響きに目がキラキラしてしまいました笑

“ハンター”であり”エンジェル”である人々が生き生きと物語る、そんなドキュメンタリー映画です。


記事タイトルにもなっていますが、何といっても「本」への愛がすさまじいです。
実際のbooksellersが語っていくので、彼らから出てくる言葉は演技ではなく、本と関わる日常から出てきた本物の言葉です。

もうね、「本好きなんやな~~~」というのがひしひしと伝わってきます。


本は読むためだけのものじゃない

昔は、古書収集というのは貴族の趣味だったそうです。
現在はというと、デジタル化が進みそれを危惧している発言も多くありました。
「コンピューターの登場で悲劇的に変化した」というような語りがありましたが、確かに、わざわざ本そのものを手に取らなくても、デバイスがあれば本の内容は読めてしまいます。
でも彼らbooksellersが語るところによると、「中身が読めればいい」というそんな安易な思考ではないのです。

「薄暗くてうさん臭くて面白い部分を失う」という言葉でデジタル化を語っているbooksellerがいましたが、集めて並べて探し出すことも彼らにとってはやめられない魅力なのです。この一文を聞いただけで、ちょっと入りづらくて、埃っぽくて、ギチギチに積まれた古書の香りで充満している書店が一瞬で映像化されませんか?



本には歴史があり、証拠があり、探検であり、そして恋愛なのです。

「恋愛だから他人には理解できない」、とありましたが、なんだかいいな~!と個人的にうなったところでもあります。
本が好き!だから集めたくなっちゃう!すっごくシンプルで好きです。

本と美術品

以前から、ものすごい額で取引される美術品の報道を見聞きし、いったいどこまでその作品や作家に興味があるのだろう?と個人的に疑問に思うことはありました。
私は素人ながら、なんだか気になる作品があると、それを生み出した作家の当時の気持ちや環境がとても気になります。どういう想いでそこに至ったのかが気になるのです。もっと言うと、美しい完成形よりも、心の中のぐちゃぐちゃしたところが見たい笑

けれど、市場で取引される美術品を集めるのは、自分の資産価値を高めるためなのか、はたまた本当にその作品が好きで自分のものにしたいのか・・・・・・動機に正しいも間違いもないし実際のところ曖昧でしょうが、ただ「アート」をビジネス化してしまうと、創造する行為の意味が変わってしまいそうで怖い気はします。

意味のないもの、こそ、意味があるもの、だったりすると私は思うのです。

「アートのコレクターが多いのは見せびらかせるから」というアイロニックな言葉がありましたが、たしかに絵が飾ってある空間は素敵です。なんなら私も好きだし、しっかり飾ってます笑
ほいで、行く行くは自分の絵を飾りたいナルシスト野郎でもありますww(
ここ小文字にしたいのですが・・・noteさーん!!!)

ただ、作中でも述べられていたように、本は唯一無二ではないのに対し、美術品は基本的に一点のみです。
その希少性が所有欲や競争欲を刺激するのでしょう。
アートも本も好きな平凡な一般人としては、ビジネスモンスターたちが食い散らかさないことをただただ願います。


多様性

以前は収集の対象にならなかったものまで、今では幅広くその特定分野のコレクターがいるようです。
社会が多様化するにつれ、興味の幅も広がっているなんて人間て面白いな、と思いました。
その時代、何が人気があったのか、どんな分野の本が集められていたのかという歴史をたどると、人々の興味の変遷までわかります。

本は「本物のsurvivor」であり「文化の持つ記憶」という素敵な言葉を語っている人もいました。
時代の激変に置いて行かれそうになりながら、ただただ流されている一個人としての意見ですが、本は失ってはいけないものだと私は思います。
データで残していくのではなく、「本」として残ってほしい。手に取って触れる形であってほしい。

面白い小説を読んでいる時、ページをめくるのは理由もなくわくわくします。それが電子書籍だと全然感じが違います。
「読む」ことだけが目的になっている感じがして、本を「楽しむ」感じがあまりないのです。
なんだがスマホで検索するのと似ていますね。目的地にすぐにたどりついてしまう感じなのです。
同じ文章を読んでいるのになぜ感情に違いが出るのかは、脳科学などの賢い先生方にお任せしたいと存じます。笑


最後に、作中一番心に響いた言葉です

図書館は永遠 宇宙だ

本の壮大さが伝わってくる言葉で素敵だな、と思いました。


電子書籍もいいけど、本は残してくれ~~~!!!と心の叫びを記して終わりにします。



~感想文の感想~

見出し機能を使ってみた(←おそ)
見出しをつけるセンスのなさに愕然としながらも。


さてさて、本の魅力はさることながら、いろんな種類の本がたくさん登場してそれを眺めているだけでも楽しい映画でした。

特に、美しく装幀された本があんなにたくさん並んでいるのはなかなか見る機会がないので、本が大好きな人は、映像をあたかも美術品のように観て楽しむことも出来そうです!

99分ということもあり、さくっと観れるのもまたよいです。

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