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ピアスホール

好きな人の左耳に、私がピアスホールを開けた。
大好きな人がピアスを開けると決断した。私に開けてほしいと言ってくれた。きっと深い意味はなくて、友達が開けてて羨ましくなった、でも自分で開けるのが怖かったからだろうと思う。でもその重大な役目を、私に任せてくれたことが嬉しくて。

私は人生で5回ピアスを開けたことがあって、うち1回は失敗して、うち2回はまあまあ綺麗に開いたけど塞がってしまって、あとの2回が今あるピアスホールになった(1年前の田中樹の誕生日に開けました)。ピアスを開けた時のことはどの瞬間もよく覚えていて、はじめて開けるに至った経緯だって忘れてもいいはずなのに、やっぱりはじめてのことだから忘れられなくて、決断に至った道のりや開けた後の少しジンジンする痛みもちゃんと覚えている。

この先好きな人がセカンドピアスを通す時や新しく買ったお気に入りのピアスを通す時、私がプレゼントするピアスを通す時、好きな人は私と開けたあの瞬間のことを思い出してくれるかな。
おじちゃんになって、「若気の至りでさ〜」なんて言いながらピアスホールを弄る時、子どもに「お父さんピアス開いてんの」とか言われて照れくさそうにする時、おじいさんになって耳に長い毛が生えてきてそれを切ろうとしてふと耳朶のピアスホールが目に止まった時。ピアスをはじめて開けた瞬間のこと、あの痛みと怖さと不安とそれ以上の期待と私とのやりとりと、を思い出してくれたら嬉しいな。

好きな人がこれからの人生を生きる中で、私が開けたピアスホールが寄り添っていくと思うと嬉しい。負けずに私も寄り添うよ。好きな人、これからも一緒に何気ない思い出を積み重ねて日々を過ごしていこうね。


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