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『教えて!村のおとーさん』! Vol.2

私たちが日々抱えているお悩みに、カンボジアのある村の芯のあるおとーさんならどんな風に答えるだろう?という企画の第2弾。今回は普遍的な人生の質問をしてみたら、新型ウイルスで世界が揺れるこの状況だからこそ、大切だなと思う話につながっていきました。2部構成でお届けします。

『教えて!村のおとーさん』! Vol.2

第2回はバンコク在住の大好きな友人から預かった質問。
繊細で、いろんな角度からものを見て、いろんな人の気持ちに思いを馳せられる人だからこそ抱えるお悩みかな、と。

「ああ、あの時こうしておけば良かった」と後悔することが多いのですが、おとーさんは後悔することありますか?後悔ばかりする人はどうしたらいいと思いますか?」

おとーさん:うーん、後悔ね。こうしておけばよかった、これができたらよかった、というのは、言い始めたらどんどん出てくる。限りがないです。パソコンが使えれば、誰かに教えてあげられた。若いときにもっと勉強ができたら、飛行機をつくることができたかもしれない、とかね笑

だけど、大切なのは、私たちはみんなで生きているということです。
自分にできないことも、他の人ができる。それができる人はそういう役目を担って、この社会にいる。いい人も、よく働く人も、アル中の人も、怠け者も、本質的に”悪い”ということはない。人間も、他の生き物も、植物も、目に見えないものも、みんな集まってこの世界がつくられている。そうやって、みんなで大きなひとつとして進んでいくんです。そのことを心に留めていれば、自分には何ができるか、に集中できます。

飛行機はつくれないし、パソコンは使えないけど、
ちょっと話を聞いてくれと言われたら、話を聞く。
家をつくるのを手伝ってくれと言われたら、手伝う。
誰かが訪ねてきたら、庭のマンゴーは分けてあげられる。
それが、自分が昔からずっとそうやってやってきたことです。

今、求められていること、自分ができることに集中すると、「こうすればよかった」は自然と浮かばなくなる。自分が間違えたと思った時には、それを素直に伝えて、どうしたらいいか相談したらいいんです。

おとーさんからは、以上です。と思ったら、このあと話が意外なところに。

今だから、大切な 暮らしを手の中に収める

今、新しいウイルスが流行って世界が大変になっているけれど、そのなかでも自分たちがやってきたことは間違っていないと思っています。

出稼ぎに行けば、お給料がいい。
土地を売って街に行けば、立派な家を建てて、もっと便利に暮らせる。
そういう話はたくさんありました。
でも、今、国境が閉じて、工場での仕事もなくなってしまうと、生きていく術がなくなって、困っている人がたくさんいます。

内戦が終わったばかりの頃、街の食堂の厨房で働いていたことがあります。若いときにしたいろんな仕事の一つ。そのときに、いろんな人がお店に来て話をしました。勉強をものすごく頑張っている優秀な人もいたし、自分で事業を興してお金を稼いでいる人もいました。
でも、みんな、どんな人でも、ごはんは食べるんです

その時の経験から、”食べること”を自分たちで支えられるように力を注いできました。この家の庭には、バナナやカシューナッツにマンゴー、レモングラスやライム、瓜とかウコン、香草などの毎日の生活に必要なものが植えてあります。鶏もいるし、卵もある。村の人が夕方近くの湖で魚をとって売りにくることもあるし、うちの庭で採れたものを、お店をやっている人が少し買いに来ることもあります。すぐに暮らしに困るということはありません。

今、この新しい病気は、今生きている人たちに暮らし方をもう一度考えてごらん、ということを伝えていると思っています。
暮らしの中のどのくらいが自分の手の中にあるか。
家族やまわりの人たちと一緒に”なんとか”できることが、どのくらいあるか。それを考えてみたらいい。
若いときから経験してきたことが、ずーっとつながって今に生きている。無駄なことはありません。

おとーさんからは、以上です。

今までギリギリのところで回っていた大きな仕組みが速度を落とし始めてから、今まで感じていた大地とともにある暮らしの豊かさは、暮らしの体幹を支える大事なインナーマッスルだったのだと改めて気がつきました。

いますぐ帰農せよ、古えに戻れ、ということではなく、今までの暮らしの中の”危うさ”、”やりづらさ”を変えていく具体的な手法がここからどんどん生まれるのだと思っています。そのときに、デバイスや技術の発達、オンラインの交流は私たちを助けてくれるはず。

出荷が滞ってしまった農家さんから直接野菜を購入したり、みんなで食べる野菜を共同で支える取り組みが加速したり、いますぐ自分で作れなくても、誰かからもらったり、何かと交換したり。”かつて”の暮らしが持つ良いところと、”新しい”暮らしが持つ良いところのハイブリッドに、”これからの安心できる暮らし”をみんなでつくっていくのが今なのだろうと感じています。


*この質問への回答は私とおとーさんの会話の中で交わされたものであり、こういう在り方を強く勧める意図はなく、何かを代表するものでもありません。あくまで個人間での記憶に留めたい対話のおすそ分けです。

高床式の家の下で、テーブルを挟んで、雑談も交え、時々子どもたちが乱入してきたり、他の話題に移ったりしながらのゆるやかな対話から私が得たエッセンスを、読みやすいかたちにまとめたものです。

2020.04.12

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