言葉

あんなに辛くて苦しかったはずなのに、思い出そうとしても言葉の表面をなぞるだけで、思い出せない。言葉にならないものを必死で書いた日記も、言葉になっていく。あの時本当はどうだったとか、私は誰なのかとか、そういうことが必要になった時は、昔書いた言葉をそのままなぞって口に出す。思い出そうとしても目が上手く開かずに、モヤがかかっている。記憶の結晶は指の上で上滑りする。この目は今でさえ見えない。でもこの部屋の天井は見える。俺は何を見て生きているのか。見たいものだけを?そんなことは不可能だろう。言葉…?言葉を見ているのだろうか。言葉になった過去を重ねて、この今に言葉を。


美味しいお酒でも飲みます。