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「あたしは柴犬のアキ」22

 朝、目を覚ますとお姉ちゃんはまだ寝ていた。あたしは起こさないようにじっとしていた。ママとパパはもう二階にはいなかった。暫くしてお姉ちゃんが目を覚ますとすぐにあたしの頭にチューをしてくれた。嬉しい。あたしもお姉ちゃんの顔をペロペロした。それからお姉ちゃんはあたしを抱っこして一階のリビングまで連れて行ってくれた。お姉ちゃんにとってあたしは赤ちゃんか小さな子供みたいな感じね。

 リビングにいたママにすぐにお庭に出された。おしっこしてきなさいの合図。庭でおしっこしてから寝転んで前の道を走る車を見ていた。

 お出かけできる時間になった。モモちゃんを誘いに行った。
「昨日はごめんね。ママがお出かけで家の中でお留守番だったの」
あたしは昨日、黒柴に出会ったことや家の人に見つかっちゃったことを話した。
「黒柴ちゃんの家なら私も知っているわ。今日はあたしが見つからないように連れて行ってあげる」
モモちゃんはそう言うとクロの家に向かって用心深く歩き始めた。あたしは後ろをついて行った。モモちゃんは人に見つかりにくいルートを考えてクロの家まで連れて行ってくれた。

 クロがいた。モモちゃんは家の人がいないかしっかりチェックして、あたしに目くばせをした。あたしは頷いてクロが見えるところまで近づいた。
クロも気が付いてじっとあたしを見ている。心臓がドキドキする、なんだか体が熱い。あたしは今まで感じたことのない感覚に少し戸惑った。相変わらずクロはじっとあたしを見ている。「お話ししないの?」モモちゃんの声に我に返った。あたしは、今日はもう帰るというと、モモちゃんは来た道を歩き始めた。あたしはついて行った。帰り道に心臓がドキドキしたことをモモちゃんに話すとモモちゃんはにんまり笑った。どういう意味かあたしにはわからなかった。
 家の前で別れる時に「明日も行くよ」モモちゃんが言った。明日も行くの?明日はクロに話してみようかな。ムリムリ。でも見るだけでもいいや。
 今日もお姉ちゃんにいっぱい甘えながら寝よう。お姉ちゃん早く帰ってこないかな。なぜかお姉ちゃんに凄く甘えたい。人恋しい気持ち。夕方になりお姉ちゃんが帰ってきた。あたしは足に纏わり続けた。
「どうしたのアキちゃん。昨日も今日も甘えん坊さんね」と言って散歩に連れて行ってくれた。帰ってきてからも抱っこしたりソファで膝にのせてナゼナゼしたりしてくれた。甘えたい時はお姉ちゃんね。こんな時はお兄ちゃんじゃないわ。あたしを乱暴に扱うもの。
「アキちゃん昨日も今日もとっても甘えん坊よ」お姉ちゃんがママに話した。
「甘えん坊のアキちゃん可愛いでしょ?」
「うん。可愛い可愛い。世界で一番かわいい」
あたしは二人の会話を聞いて涙が出そうになった。この家の家族になれて良かった。
今日も思いっきり甘えて寝よう。お姉ちゃんいっぱい撫ぜてね。

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