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「あたしは柴犬のアキ」24

 今日もモモちゃんが迎えに来た。
「アキちゃん、今日私は行けなくなっちゃった。あなた一人でクロの所にいってね。そろそろ近所の道もおぼえたでしょ。何でも一人でできるようにならないと」
無理無理、絶対無理。あたしはそう言ったけどモモちゃんはどうしても一人で行って欲しいらしい。仕方ない。モモちゃんがそう言うのなら行こう。

 モモちゃんに見送られながらクロの所に向かった。モモちゃんがやっているように注意深く周囲を見渡して確認しながら歩いた。クロの家についた。家の人がいないのをしっかり確認してクロの前に行った。
「今日も来てくれたの。今日は一人?」
「うん」・・・・・・・
それっきり話は続かなかった。もう帰ろうとして向きを変えた時
「待って、まだ帰らないで。さみしいよ」クロが悲しそうな声で言った。
それからクロはいろんな事を話し始めた。

 小さな時はペットショップにいたこと。この家にはどんな人が住んでいるのか。好きなことは何でも噛むこと。散歩はパパと行く。パパは仕事から帰ってくるのが遅くて夜中の散歩になることもよくあるらしい。だから他の犬にほとんど会わない。お昼は庭にいるけ話しかけた犬はあたしとモモちゃんが初めてだった。話しながらクロはあんまり楽しくなさそうだった。

 もっと話を聞きたかったけど、長くなっては困るのでもう帰ると言うと、「絶対また来てね。絶対絶対約束だよ」クロが言った。クロは立ち上がってフェンスに前足をかけた。隙間からちょっとだけ前足がはみでた。あたしもフェンスに手をかけてクロの前足にタッチした。肉球が触れあった。とても気持ちよかった。誰かと肉球タッチしたことなんてなかった。あたしは恥ずかしくなって手を引っ込めて逃げるようにして帰った。
 お家の前まで帰って来てモモちゃんにクロの事を報告した。モモちゃんは「明日も私は行けないからアキちゃん行ってあげてね」と言った。肉球タッチのことは恥ずかしくて話せなかった。

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