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深夜の百貨店・笑いの吸血鬼とネズミランプ

※前回の記事から続いています。

前編に引き続き、虹倉きりさんに「noteを朗読する企画」で朗読していただきました。音声もお楽しみくださいね。

虹倉きり@note朗読
深夜の百貨店・笑いの吸血鬼とネズミランプ
作:ナポリタカオ 時間5分21秒

【note版】

【Youtube版】

深夜の百貨店・ネズミランプとは

現在の百貨店は最新のハイテク装備が施されていると思うが、ナポリ氏がガードマンをやっていた頃のシステムは頼りないものだった。

夜間のフロアに不審者がいれば、店内各フロアにある赤外線探知器によって警備室から探知できるシステムだった。

人間がどこを通ってどのように移動しているか、警備室にいながら電光掲示板の光の点滅によってキャッチできるのである。

しかし、ときどきネズミが走りまわって点滅させるのでろくに役に立たず、ガードマン達からは「ネズミランプ」と呼ばれていた。

深夜の警備ではこのネズミランプのある警備室にひとりが残り、ほかの者は定時の巡回を終えた後、仮眠をとっていた。

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本来は用意された仮眠室で寝なければいけないのだが、タコ部屋のような狭い部屋だったので、勤務歴の長いガードマンは頑丈そうな長椅子のある展示コーナーで寝ることも多かった。

ここで前編の先輩登場だ。

「ナポリ、今日6階で寝ろよ。あそこ、長椅子があっていいぞ。オレ、仮眠室で寝るから」
「ありがとうございます。でも先輩、またなにか、へんなことたくらんでるんじゃないでしょうね?」
「やだなあ、そんなはずないだろ」

彼は笑ったあとに、妙な言葉をつけたした。

「夜中の2時を楽しみにしてろよ」
「なんですか?」
「教えない」
「まさか、出るんじゃないでしょうね6階。お化けとかやめてくださいよ」
「そんなのじゃないよ。お楽しみだよ、へへへ」

笑いの吸血鬼の新たな罠

交代時間が来て、ナポリ氏は先輩のすすめに従い、6階の長椅子に横になった。そしていつのまにか、眠りに落ちた。

そして…。

リリリリリ! ビビビビビ! ジリジリジリ!

突然、けたたましい物音が6階のフロア全体に鳴り響いた。思わず飛び起きる。

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「火事なのか?!」

あわてて、あたりを見回すが、煙は出ていない。焦げるような臭いもない。もしかして、侵入者か?!

慎重に暗い店内に目を凝らす。 侵入者にこちらの位置がバレないように、懐中電灯はつけない。

ところが、だんだん何かがおかしいと気づき始めた。

耳に意識を集中してみると、 警報音はどうやらこのフロアの中だけで鳴っているようだ。 しかも、ある区画から多数の音が響いている。

向かってみると、音源は時計売り場だった。そこに置かれた数十個の目覚し時計が、一斉に鳴り響いていたのである。

目覚ましは全部、深夜2時にセットされていた。

「あいつ……」

その頃、警備室ではネズミランプが目まぐるしく点滅していた。ナポリ氏が時計売り場で目覚し時計のスイッチを端から端まで切ってまわる様子が、逐一報告されていたのだ。

そんなネズミランプを見ながら、先輩はまたも悪魔の笑みを浮かべるのだった。

今ではこの男の顔も名前も忘れてしまったが、口元の悪魔的な笑みだけはナポリ氏の記憶から離れることがない。

都会の恐怖を堪能したい方には、宿直のガードマンをおすすめしたい。


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