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カネを語るおばちゃんたち・青セーターの強引な割り込み

なにかが起こりそうなおばちゃん3人組の関係

数年前、世田谷区内のドトールで19:00。N氏の目撃談である。

おばちゃん2人組が店内に入ってくると、新聞を読んでいたN氏の横にテーブルがふたつ空いているのを見つけた。

殴り込みをかけるような勢いで近づいてきた2人組は、地味な色の大きな布製バックやコートを椅子にドスン!と置いて、さっそく4人分の席を確保した。

それから、「あーあたし、カフェラテ!」「あたしはどうしようかな?」と、大声でやりとりをはじめた。

ひとりは50代中頃(パーマ)、もうひとりは60代中頃(青セーター)に見える。入り口を気にしている雰囲気から察すると、あとからだれかが来るようだ。

飲み物を注文して戻ってくると、どうでもいい会話。

青セーター「アタシ、Mにすればよかったわ~ちょっとこれ多いわよね~」
パーマ「でも、飲みたかったんでしょ」
青セーター「フフフ、つい、こういうとき欲かいちゃうのよね~」

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やがて、もうひとり、50代中頃のおばちゃんがやってきた。後述するが、株に関係が深いので、以後「株江(かぶえ)」と記載する。

株江はパーマと友達だが、青セーターとは初対面であることが判明した。

株江「ゴメンゴメン!よかったかしら、お友達といっしょなのに」
青セーター「いえいえ、いいんですよ~」

にこやかに言いながらも、名残惜しそうな表情で青セーターはとなりの席に移った。

蚊帳の外に置かれた青セーター、隙を窺う

ドトールはとなりの席が近い。だが、微妙に距離が空いているのでテーブルをつけないでとなりに席をとると、蚊帳の外のような雰囲気になる。

パーマと株江は「ねえ、あれさ~」と、友達同士の会話をはじめた。

ふたりから45度ほど視線をずらし、所在なげに天井を見つめる青セーター。ドトールの天井には見ていて楽しいものなどない。明らかに不自然な態度。

やることがないなら、今日は帰ればいいのに。N氏は思うが、青セーターは2人の話が気になってしかたがないようだ。

おしゃべり好きな人間には、こういうのは酷な状況なのか。しかし、むこうもなかなかの強者。話の邪魔をされるのがイヤそうだ。

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パーマは友達のはずなのに、青セーターの気持ちを知ってか知らずか、いや、絶対に知っていると思うが、まったく青セーターに気づかいもせず、会話を楽しんでいる。

青セーターを無視するこの状況をかえって楽しんでいるようにも見える。さっきまで友達だと思ったのに、女は怖い。

しかし、青セーターは不屈の女だった。とうとうガマンができなくなり、ツッコめるタイミングを見はからって、となりの車線から急角度でハンドルを切って会話に横入りしたのだ。

「あ、それ!そうよね!」

これを皮切りに、どうでもいい話に「私もそうよ~!」などと口を出しはじめた。

N氏はふと思う。

そうか、パーマは青セーターのこういうところが嫌いなのかもしれない。かと言って、青セーターと付き合いを絶つまではできない。

この機会に、こっそりと陰湿な甘い復讐の時間を楽しんでいたのか。だが、パーマには短かすぎただろう。

このまま、ずるずる世間話が続くと思われた3者会談。

金の話がチラッと出たとたん、3者の関係にひびが入り始め、青セーターの目つきは豹変することになるのだ。

後編はこちら!


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