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ナポリタカオの小ネタ劇場

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ナポリタカオの小ネタオリジナル作品をまとめたマガジンです。登場人物のN氏とは著者・ナポリタカオ本人のことです。
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2021年10月の記事一覧

探し物がわからない男

私の探し物はなんですか? あ~時間がない、早く取材いかなきゃ。 ちょっと待った。さっき、オレ何かやっておかなきゃって、強烈に思ったよな。なんだっけ?たしか、昨夜もやっておこうとして忘れたんだ。 いったい、なんだったんだ……やっておかないと大変なことになる気がする。 外へ出たついでに買ってくるものがあったのかな。薬局?トイレットペーパーならまだある。シャンプー、リンス、石鹸……大丈夫だ。じゃあ、なんなんだ? たいしたモノじゃないのかな、こんなに思い出せないなんて。だけど

猫と犬の抗争

本編は猫と帽子の創作コンテスト(えぴさん)において、「白ショートショート賞」を受賞しました。ありがとうございました。 侵入者の前に立ちはだかる者日本のある小さな町で暮らす、A家のニャー子(仮名)は夜遊びが好きだ。 だが、飼い主から夜8時から朝5時までは外出を禁止されているため、朝になって開放されると外へ飛び出して行く。 お気に入りは、となりのB家の納屋である。ところが、その納屋にたどり着く前に外で番犬が待ちかまえている。 今日もニャー子は忍び足でA家の茂みから、B家を

負け犬の心をなぶる街頭ビンゴ大会

※この話は前回から続いています。 ビンゴ1位を当てた持ってる男 30代半ばくらいの茶髪の男が、カードを高々と掲げている。人のいいホリエモンといった雰囲気だ。運を持ってる男。 えっ、もう当たったの?! ビンゴの餌に吸い寄せられた群衆が、ドロドロした羨望の眼差しを茶髪の男に向ける。まわりの人間は彼が掲げたカードを覗き込んだ。 彼は小走りに主催者のもとへ向かった。照れくさいのか、人混みをペコペコしながら進み、ありがたく空気清浄機を受け取っている。 ふと、猜疑心が心をよぎる

寒風吹きすさぶ、街頭ビンゴ大会

突然、舞い降りた幸運数年前の切ないお話。 プリンターのインクが切れてしまったので、量販店Kに出かけたN氏。店頭で「なんとか感謝祭」の旗がなびいているのを見つけた。 高い買い物をしにきたわけじゃないし、オレは関係ないか。インクを買おうと店内へ歩きはじめたところで、突然、赤いハッピを着た女性店員に呼び止められる。 「お客様、よろしかったらどうぞ!」 ビンゴの用紙を差し出している。 「7時からビンゴ大会がありますので!」 「えっ、まだなにも買ってないけど?」 「いいんです。