LGBT法案に反対する議員の「本当の気持ち」って

 いろんなニュースで報道されてますが、LGBT法案、法律の目的と基本理念に「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されないものであるとの認識の下」と加えることについて、国会議員の間で揉めちゃって、成立が危ぶまれているようです。Yahooニュースでは以下の通り。

https://news.yahoo.co.jp/articles/de56881bbda54cdb39d9be4ee661887891e6abe3

 自分も、このニュースについて調べてみたくなり、まずは、その「法案」ってのを読んでみようと思って探したんですが、なかなか見つからない。ネットのニュースって、法案のリンクを、どこも貼ってくれてないんです。10分くらいあちこち検索しまくって、結局、衆議院のサイトで見つけました。法案と、その要綱のサイト、貼っときます。こういうの、ニュースサイトなら、まず貼っといてくれるべきと思うんですが、日本のニュースサイトって、ソースを本当に貼っといてくれないこと多いんだよなあ。

後に貼った「要綱」のほうが、重要部分は法案そのものと同じで、些末的な部分(例えば「行政機関」の、どうでも良いような長々とした定義とか)がそぎ落とされていて、読みやすく理解しやすいと思います。

要綱の「第三、一、1、(1)」には、「行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、性的指向又は性自認を理由として、不当な差別的取扱いをしてはならない」と規定され、「第三、一、2、(1)」には、「事業者は、その事業を行うに当たり、性的指向又は性自認を理由として、不当な差別的取扱いをしてはならない」と規定されており、「差別は許されない」なんてことは、もう、すでにハッキリ書いてあるんですよね。なんで今更、法案の冒頭の「目的」に、「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されないものであるとの認識」という文言を入れるか否かで揉めるなんて、全然理解できません。

ところで、反対派の議員の意見と思われるものについて、松浦大悟氏という元参議院議員の有名な論客の方が、アゴラに以下の記事を投稿されてます。

この記事を読むと、自分には「ヘリクツ」としか思えない、以下のような法案の問題点が記載されています。

① 修正案が可決されれば、『ミッドナイトスワン』のトランスジェンダーの役をストレート男性の草薙剛氏が演じたのは「差別」として、糾弾されるかも。

② 修正案が可決されれば、「札幌同性愛婚裁判の判決について、『同性婚できないのは憲法違反』報道はミスリード」と述べた日本維新の会の音喜多駿参議院議員に対し、「故意にデマを流そうと差別で喋っている」と断罪するようなLGBT活動家の主張が認められ、左派と親和的なLGBT活動家が、政敵を簡単に失脚させる可能性が出てくる。

③ 修正案が可決されれば、新宿二丁目にある老舗のレズビアンバー『Gold Finger』が、トランスジェンダーの元男性の入店を拒否したようなことが、「差別」として糾弾されてしまうかもしれない。

上記の①~③、どれも、自分にはヘリクツとしか思えません。上記引用した通り、法案要綱には、行政機関も事業者も「不当な差別的取扱いをしてはならない」、と明記されており、上記のケースのような問題が本当に裁判に持ち込まれれば、そこでは「不当な差別」かどうかが、判断されるんです。トランスジェンダー役をストレート男性が演じたり、判決の内容についての意見を述べたり、女同士のカップルが楽しむための店がトランスジェンダーの元男性をお断りすることが、「不当な差別」と判断されるとは、とても思えない。日本の裁判官は、そんなにバカじゃないです。

「差別」かどうかは、微妙な判断になりがちで、確かに難しいです。しかし、「不当な」という歯止めをキチンと文言上付けておくことで、個々の紛争事例において、「何が不当な差別なのか」ということが裁判の中で争われ、そこでようやく「正義」にかなった「不当な差別」の具体的内容というものが、明らかになるのだと思います。

どのような場合が「法的に認められない差別」なのか、すべてを網羅的に事前に法案に書き尽くしておくことなど、世界の多様性を考えると明らかに不可能です。「不当な」という、抽象的な基準をつけておいて、事後的に個々の事例について裁判で判断していくという方法でしか、「差別」の無い「正義にかなった」社会へ向かう道は、無いと思います。それなのに、法律を作る段階で、そういう微妙な個々的な事例を持ち出して、「難しい争いになる可能性がある」ということを指摘して法案を潰してしまうことをやっていたら、いつまで経っても社会は変わりません。「個々の裁判事例をの積み重ねを通じての、「差別」概念の明確化」ということについて、松浦氏は、もうちょっと信用してもらえないかなあ、と思います。

松浦氏は、僕は実は個人的にはすごく好きな論客で、彼の「保守寄りLGBT擁護派」というスタンスは、僕自身のスタンスにとても近いです。以下の記事などは、本当に素晴らしい指摘と思います。

こんなきちんとした指摘もできる松浦氏が、LGBT法案については、上記のようなくだらないヘリクツを並べて反対されているのは、自分にはよく分からないし、残念です。

それでも僕は、松浦氏については、LGBT差別について真摯に取り組んでおられることについて、全く疑っていません。

しかし、松浦氏が書いておられるいような、「言いがかり」に近いヘリクツでLGBT法案に反対している自民党議員については、僕はその「本音」をいろいろと勘ぐっています。彼らには結局、「LGBTについての自分たちの保守的な感覚を、なるべく変えたくない」という本音があり、その本音を隠して、上記の①~③のような、もっともらしい理屈を並べて法案に反対しているのではないかと、そう勘ぐってしまうのです。



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