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泊まれる演劇をはじめた理由

(普通こういうのを書くのは全公演終了したタイミングな気もしますが、宣誓の意も込めて、あえてこのタイミングで公開します。前半は愛するSHE, KYOTOの話です。)


HOTEL SHE, KYOTOで働きはじめて5ヶ月が経ちました。

もう5ヶ月経ったのか...という気持ちと、まだ5ヶ月だったのか!!という気持ちが入り混じっていますが、兎にも角にもこれまでの人生の中で最もエクスタシーを感じられた半年弱でした。(ちなみにL&Gは入社6ヶ月までは試用期間なので、僕はまだ契約社員なのですアーメン🙏)

今はフロントに立つことが少なくなってしまったのですが、最初の3ヶ月はフロントでのお客様のチェックイン対応からお部屋の清掃、朝食の調理まで、ホテルに関する業務を幅広く担当しておりました。(L&Gではいわゆる分業型ではなくマルチタスク型。詳しくはSHE, KYOTOの大先輩田中さんのnoteを見てみてください!!)

実質3ヶ月ほどしかフロント業務をしていないので偉そうに恐縮なんですが、この3ヶ月で学び感じたことは振り返ってみても山のようにあります。

そんな中で今でもホテル業務の中で最も好きな瞬間は、お客様のチェックイン対応(ご精算や館内のご説明など)が終わり、客室のルームキーを渡す瞬間です。


客室の扉から刹那的な非日常がはじまる

L&Gのホテルプロデューサーの龍崎翔子が度々インタビューで話している物語があります。(引用元:TOKYO INNOVATION RESEARCH

ホテルの原体験は、小学2年生の時に家族でしたアメリカ横断旅行です。東海岸から西海岸まで、1カ月かけて父の運転でアメリカを横断しました。両親はドライブでの長旅を楽しんでいたと思いますが、私はひたすら後ろの座席から、変わらない景色を十数時間ずっと眺めるだけの毎日でした。そんな中でいつも楽しみにしていたのが、その日の最終目的地であるホテルだったんです。ところが、部屋のドアを開けてみると、どこも同じような景色で、日本のホテルにいるのとほとんど変わらない。それがとても不満でした。

客室のドアを開けた時のガッカリ感こそが今の僕たちのホテルヒストリーの源であるわけで、それ故にHOTEL SHE, KYOTOを含むL&Gのホテルでは、ドアを開けた瞬間にテンションが上がるように工夫し、設計されています。

例えば、ドアを開けた瞬間の”空間美”を保つために死角にゴミ箱を配置したり、横向きの棚にアメニティ類をまとめて収納したり、

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ルームキーも最新のカードタッチタイプではなく、オシャレで可愛いキーホルダーになっています。

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他にもSHE, KYOTOでは客室に向かう廊下に世界観を演出するためのネオン管が設置されており、今後は客室を開けた瞬間にレコード音楽が流れているようにしたいなぁ...などなど考えております。


このように、僕たちは滞在するための機能的な客室を売っている訳ではなく、客室ドアを開けた瞬間の”感動体験”を売っているのです。

ただ、残念ながら僕たちホテルスタッフは、全てのお客様の感動の瞬間に立ち会うことはできません。その代わりに、ルームキーを渡して客室に向かっていくお客様を見て想像し、願うのです。客室のドアを開けた瞬間に笑顔になってれるといいなぁ、と。


ホテルは刹那的な夢が集まる唯一無二の空間だ

ホテルは不思議な空間だと、常々思っています。

世界中さまざまな場所からゲストが訪れ、一つの建物の中で幾多の物語が生まれている。その物語は、いつもの日常よりほんのちょっと美しくドラマチック。でもチェックアウトするとそのドラマはエンドロールを迎え、いつもの淡々とした日常がはじまる。ホテルスタッフのエゴ的視点も入っているかと思いますが、ホテルとは美しくも儚い、刹那的な夜の集合体だと思っています。だから足を踏み入れるだけでワクワクする、ホテルの空間全体がそんな空気感を生んでいるのだと。

ただ、きっとこんなことをnoteで言葉で表現しても理解が得られないと思っています。それは実際問題、ホテルは客室というインフラにも似た宿泊機能を売っているところが大半で、むしろそのお陰で宿泊/観光産業はここまで大きくなりました。全てのホテルが「感動が〜〜」「世界観が〜〜」と言っていると出張利用はできないし、気軽に安価な国内旅行もできないのです。

大切なのは、機能的なホテルとHOTEL SHE, KYOTOのようなホテルのどちらが良い/悪いという話ではなく、世の中にはどちらも必要(むしろ前者の方が圧倒的に必要)で、ただホテルに宿泊するということが、ほんの少しでも何か感動が生まれるようなものになれば良いなぁ...と思っているのです。


ホテルという空間的魅力を、表現で伝える

先ほど「言語的に表現しても理解が得られないだろう」と書きましたが、ではどうすれば伝えることができるのか、頭を悩ませました。

そもそも伝わらない、というのは情報量が十分に足りていないからであり、映像や音声、物語を絡めることで情報量は幾分にも高めることができます。(教師が主人公のドラマや映画を観て、その職業に憧れるのと同じ論理です)

であるとすれば、ホテル空間というものを主軸に置き表現すれば、よりホテルの魅力が直感的に伝わるのでは...!!!と考え、ホテルを舞台にした群像イマーシブシアター「泊まれる演劇」が生まれました。


泊まれる演劇

内容に関してはまだ言えないことがほとんどで、それに実験的な部分も多分にあります。正直こだわり過ぎて収支面が死ぬほど怖いですし、一緒に組ませて頂いている方々も最強過ぎてそれもそれで怖い。

今ここで書くことができるのは、目指している作品は単に「宿泊が付いた演劇体験」ではない、と言うことです。

上海でSleep No Moreを観て嗚咽するくらいに感動したのですが(前回のSleep No Moreの体験メモは以下)、あの芸術性の極めて高い演出や脚本をそのまま日本に持ち込んでも、受け入れられない部分があるだろうし、かと言ってホテルを舞台にストーリー性の高い群像劇をおこなっても没入感が得られず大切なことはなにも伝わらない。。。

参考にする部分と、変えなければいけない部分。ホテルという空間の特異性をHOTEL SHE, として再解釈し、誰も体験したことのない一夜を作り上げていきます。(ちなみに夜のホテルが舞台ですがホラーではないです。ただし美しいものだけを並べても伝わらないので、相反する毒々しさや怪しさがスパイスとなった作品になります。サウナと水風呂の関係と同じですね。)

早ければ年明けすぐに、公式サイトなどで情報公開できると思います。

是非、楽しみにしていてください。




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