二ューヨーク・リサーチ vol.2
ニューヨークのリテールリサーチの第二弾。
今回はD2Cを集積することで人気を集めている「Showfields」と「Neighboorhood Goods」についての視察情報をnoteします。
1.D2Cだけを集積した商業施設「Showfields」
Showfieldsは、オンライン販売を主戦場とするD2Cをリアルの場に集積して提案している商業施設なのですが、それをフロアレベルとかではなく、1階〜4階まである館全体に集積したのが特異な点で、「D2C百貨店」と言える商業施設です。
場所でいうと、NOHOと呼ばれる、歴史的建造物と最先端のおしゃれが融合した、いわゆるイケてるエリアに位置していて、Showfields自体も、古い建築をリノベーションしたレンガ造りの外観をしています。
何と言っても驚くのは、自らを「The Most Interesting Store in The World」と豪語していることで、シャイな日本人には考えられないアピールです。
では、何が「世界一面白い」のか。
◾️D2Cの世界観を壊さない
本来、D2Cは「直接顧客に販売する」ことなので、それを集積・編集している仲介のShowfieldsは、D2Cにとってはノイズなわけです。そこでShowfieldsが提案しているのが「D2Cの世界観を壊さない」こと。
すなわち、仲介しているにも関わらず、D2Cブランドごとのストーリーを、そのブランド以上に顧客にダイレクトに伝える仕組みを構築しています。
<区画割>
店内は、3坪〜5坪の小さい区画に分けられてブランドが入居していますが、共通什器を使わずブランドごとに内装を変えて、小さいながらも、ブランドの世界観を出せるようにしています。
<情報拡散>
ブランドの区画はいずれもフォトジェニックな内装で、館内の至る所にアートが飾られていて、思わずシェアしたくなる構造です。ただ顧客を集客するだけでは店舗への集客人数は限られてしまいますが、シェアを誘発することで、来店顧客を起点に世界中にブランドの情報を拡散することが可能です。
Showfieldsに入居すれば、D2C自身が広告を打つよりも多くの人に情報が届き、ブランド認知を高めることができるかも。と思わせる「広告価値」を高めてるとも言えます。
Showfields的には「体験に徹して欲しい」という想いもあるようですが、どう見てもインスタ映え狙ってますよね?と聞き返したくなる感じで、中にはブランドコンセプトの域を越えたド派手な内装の場所もあります。
<コミュニケーション>
では、内装を区画割してカッコ良くしておけばブランドストーリーは伝わるのか?これに対して、Showfieldsは一風変わったコミュニケーションを取っています。
それが「体験ツアー House of Showfields」です。
HP上でツアー予約可能で、対象時間に受付すると、Showfields内の各コンセプトフロアを回遊するツアーに参加することができます。
ツアー中は、俳優の卵みたいな「演者」を各フロアに配置され、ブランドコンセプトに合った服装をした演者が、フロアコンセプトや商品説明をしてくれます。
具体的には、寝室、バスルームをイメージした部屋でベッドリネンD2Cや、ルームウェアD2Cを配置した区画では、パジャマを着た女性が、ブランドストーリーや商品についてを紹介してくれます。販売員というよりは、ブランドストーリーを伝えるナビゲーターという役割です。
ブランドの販売員がつかないため、Showfieldsの店員が代わりに説明する必要があるのですが、内装による世界観だけでなく、それを語る店員の配慮も行い、ブランドの世界観を壊さない努力をしています。
<販売>
基本は、顧客自身が区画を回遊して「ブランドイメージを感じ取る」というスタイルですが、ブランドごとにタブレットが置かれていて、ブランドのストーリーなどは全てタブレット上で確認することができるので、タブレットがデジタルPOPのような役割を果たしています。
また、区画が小さいので陳列商品数はかなり少ないのですが、タブレットを通じて、その場でEC購入することもできます。
ただ、ショールーミングに徹しているかというとそういう訳でもなく、一部在庫を持っているので、その場で購入して商品を持ち帰れるブランドもあります。これは在庫管理にコストがかかるので、在庫必要なのか?という疑問は残ります。
◾️1つもブランドを覚えていない
Showfieldsは、いわゆる「売らない店舗」で、ブランド体験を通じた「広告効果」に期待していると思うのですが、いざ、30分ぐらいのツアー体験を終えて思ったことは、「面白かったけど、1つもブランドを覚えていない」ということです。
確かに、ShowfieldsのD2Cに対するリスペクトは感じるし、コミュニケーションも面白いと思うのですが、各D2Cブランドにとっての広告価値があるのかは微妙です。
直営店であれば、そのブランドだけの体験価値を提供することが可能でブランドロイヤリティを高める成果を得られると思うのですが、こういう集積・編集の売場で、個々のブランド認知を高めることは難しいので、今後の課題かと思います。
◾️世界一面白いわけではない
以上のように、「D2Cの世界観を壊さない」ことに徹し、リアル店舗としてブランドストーリーを伝えることに価値を置くと、こういう体験施設になるんですね。
今後、日本でもD2Cが乱立し、そのD2Cをキュレーションしてリアル店舗展開する企業が出てくると思いますが、その時の参考になることは間違いありません。
D2Cとしては、直営でもなければ、卸でもないので、ブランドを認知してもらうための「広告価値」がShowfieldsにあるかが最重要なので、いかに広告価値を高められるかが商業施設側には求められます。
2.D2Cセレクトショップ 「Neighborhood Goods」
もう一つのD2C集積ショップは、マンハッタン西部のチェルシーマーケット内にオープンした「Neighborhood Goods」です。テキサスに次ぐ2店舗目として、2019年12月にマンハッタンにオープンしました。
店の面積は370平米と面積は広く、約40のD2Cブランドを集積しています。
◾️セレクトショップです。
D2Cを集積する注目ショップとしてShowfieldsと並んで紹介されることが多いショップですが、見た感じは「おしゃれなセレクトショップ」です。
アパレルからコスメ、フード、書籍、ペットまで幅広い商材が並んでいますが、Showfieldsほど体験型に振り切ってるわけでもなく、レジもありますし、在庫も持ってその場で販売もしています。
体験型店舗ということで、コスメの体験ゾーンなどもありますが、コスメであれば試せるというのは基本ですし、何か目新しさがあるかと言われると、表向きの差別化は見当たりません。
見えない仕組みでいうと、ブランドから固定賃料+販売手数料をもらうビジネスモデルで、賃料にはマーケティングフィーが含まれています。
NeighborhoodGoods内に2~3名の販売員が配置されていますが、販売員は顧客との接客を通じて得たインサイトを、ブランド側にフィードバックする仕組みを作っています。
これにより、NeighborhoodGoodsが仲介することで「顧客の声」が聞けなくなることを防ぎ、ダイレクトに顧客の声をプロダクト等に反映できる配慮をしています。ちょっとb8taのモデルに似ていますね。
◾️チェルシーマーケットが面白い
ニューヨーカーが大絶賛する店舗。ということで視察しましたが、期待値が高過ぎたのか、普通のD2Cセレクトショップという感じでした。ただ、知らないD2Cも多数セレクトされていて、面積も広いので、見ごたえはあります。
また、Neighborhood Goodsが入居している「チェルシーマーケット」が普通に面白くて、元々はナビスコのオレオクッキーの工場跡をリノベーションした施設のようなのですが、レストランからフードコート、スイーツショップまで、約35店舗が入居しています。
歴史ある工場をリノベーションしたという文化的背景と、ちょっとした大人空間がマッチしていて、日本の商店街が参考すべき一つの事例になりそうです。
NeighborhoodGoodsの視察と一緒に、是非見てもらいたい商業施設ですね。
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次回vol.3は、米国D2Cのリアル店舗視察について。
Twitter @NaoyaTech