【ライブレポ】GRANRODEO "Rodeo Coaster"二日目

2020年に結成15周年イヤーを迎え、本来であればその集大成を様々な形で披露していく予定だったGRANRODEO。
しかしコロナ禍という未曽有の危機に直面し活動を制限された結果、今年2021年を15周年イヤーの延長線として再始動。
2月は彼らに所縁のあるバンドやアーティストを招き、2回目となる自主企画フェスの「GRANRODEO 15th ANNIVERSARY FES ROUND GR 2020」を開催し、約一年振りとなる有観客ライブを敢行した。

3月にはワンマンライブ「GRANRODEO limited SHOW 2021」を東京と大阪でそれぞれ開催し、5月に本公演「GRANRODEO "Rodeo Coaster"」を14日、15日の2日間に渡り開催した。
今回行われた"Rodeo Coaster"は、二日間それぞれ構成が全く異なるセットリストとなっており、初日はアルバム曲をメインに据えた、いわば15年間を共に歩んできた"RODEO BOYとRODEO GIRL"へ向けた構成となり、対して二日目は全国同時配信という点を踏まえ、全曲シングルカットという"THE・GRANRODEO"と言わんばかりの、サービス精神全快のセットリストとなっていた。
その二日目の様子を可能な限り詳細に書き記していこうと思う。

会場のZepp Hanedaには約1,000人のRODEO BOYとRODEO GIRLが集まり、公演が始まるのを今か今かと心待ちにしていた。
コロナ禍の対応で着席指定、声出し厳禁、体を大きく揺らす行為も禁止と、多くの制限こそあるが、今回の公演がそれまでの制限下と違っていた点は、会場キャパのほぼマックスまでオーディエンスの導引が可能になったことだ。等間隔に空席があった今までの公演と違い、「いつもの公演」と同じようにすべての椅子が埋まっている光景はどこか懐かしさすら感じ、それだけで不思議とあの非日常感を少しだけ取り戻せたように感じた。

会場のBGMが大きくなるに連れて手拍子が大きくなり、暗転と同時にそれは大きな拍手へと変わった。声が出せない分、その拍手は長く大きく響き渡る。
SEとともにバンドメンバーが登場、間を置かずにe-ZUKA、KISHOWもステージに姿を現し、ギターの音とともにステージが明転。
「ハローZepp Haneda!楽しんでいこうぜ!」
KISHOWのシャウトを混ぜた軽快な挨拶とともに、「The Other self」がスタート。"Rodeo Coaster"2日目の幕開けだ。
声が出せない環境だと、自ずと音楽に合わせて体を揺らしたくなる衝動に駆られるが、それを最小限に抑えながら音像を体感する。そこで改めて感じたのがバンド隊のスキルの高さだ。
e-ZUKAのギターサウンドはいつも通りパワフルだが、アルペジオはハッキリと聴こえるし、SHiNの叩くドラムは子気味良く、しかしどこまでもズシンと身体に響く。そしてベースの瀧田が奏でるグルーブは相変わらず色気が溢れ出ていて、うねる様なサウンドが美しい。
いつもなら声を出し、身体を揺らしながら楽しむことがほとんどで、細かい音の部分を正確に聴き入ることが難しかったが、この声出し禁止という条件下で新たな発見を見出すことができたのは禍を転じて福と為した結果かもしれない。

コーラスパートをe-ZUKAと瀧田がいつも以上に力強く歌い、ファンの思いを代弁する光景もエモーショナルだ。そのまま「RIMFIRE」「変幻自在のマジカルスター」と黒バス楽曲が3曲立て続けに披露される。

「一夜明けて今日は違うセットリストで皆さんのロデオ心をくすぐっていこうかと思います。最後まで楽しんでってください!」
KISHOWの挨拶が終わり、e-ZUKAは「いや、昨日以上に汗がすごい(笑)今日はね、ほんとセットリスト全然違うので、新しい"思い出"をみんなと作っていこうと思います!」
と次の曲の前振りも兼ねる。
「完全な予定調和だな(笑)みんなで作ろうぜ!最高のメモリーズを!」
と、その"予定調和"にKISHOWも乗っかり、「メモリーズ」でライブが再開、新規のSEを挟んで「HEAVEN」「慟哭ノ雨」と懐かしいナンバー
が続く。サポメン紹介では
「"密"はダメですが、僕にとっては皆さんが"蜜"です」と下ネタ全快の瀧田と
「すいません。"蜜"ってなんですか?」と純粋な少年のフリをして話を振るSHiNのトークに、声出し禁止状態のオーディエンスは必死に笑いをこらえていた。
SNSでもらったライブの感想を読み、改めて無観客だけではバンドは生きられない、制約があるなかでも、お客さんとともに在りたいと、まじめなトークになった流れで「みんなと誓い合いたいんだよ、インフィニットなラブを!」と半ば無理やりに曲へつなぎ「Infinite Love」を披露。アニサマ2018を彷彿させた「少年の果て」からの「Punky Funky Love」では、ステージから火花が上がり楽曲を彩った。
重厚なサウンドを五感で体感できた「Gloriousdays」では、Bメロをコーラスパートのハイトーンで歌い切り、KISHOWの持つボーカリストとしてのポテンシャルの高さを再確認した。
その後も勢いは収まらず「BEASTFUL」でもシャウトを何発も繰り出し、それはまるでオーディエンスの思いも代弁しているかのようにも思える。

「すでにお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、ここまで全部シングル曲です。本当にSHiNくんが今日はめちゃくちゃ大変なんだよね。この後もまだまだヤバい曲あるし(笑)」

KISHOWも言う通り、ここまで"サービス精神全開"なセットリストは本当に珍しいし、シングル曲だけでワンマンライブが出来てしまうほどのストックがあるという強さが、15周年の軌跡を辿っているようにも感じる。
曲を聴けば脳裏にアニメ映像が一緒に流れるし、当時の自分の環境や抱えていた悩み、そしてそれを時に励まし、時に軽快に笑い飛ばしてくれた楽曲の数々がこれでもかと連発されるのだから、感情の行き場が迷子になったのは自分だけではないだろう。
オーディエンスそれぞれの「この曲でGRANRODEOを知ったんだ」となる楽曲が、きっとこの日のセットリストには散りばめられていたはすだ。

ライブの熱量はさらに勢いを増し、「ROSE HIP-BULLET」、デジタルサウンドとハードロックが絶妙に織り交ざった「DARKSHAME」、
随所に散りばめられたフックサウンドが特徴的な「Deadly Drive」、さらに「TRASH CANDY」、「愛のWarrior」と休む間もなくエース級楽曲が連続で披露され、座っていても熱量を感じれるまでにボルテージが上がっていく。

歓声代わりの拍手が鳴りやまぬ中、
「ヤバいね、もうこんなセトリでやりたくない(笑)でもみんなが立って暴れてうねってる様子が一瞬見えた気がした」
と皮肉交じりにも想いを口にするKISHOW。
実はリハのときにケータリングのお弁当を一人で3箱平らげてしまったというエピソードが飛び出し、
「ライブの時はお弁当一箱でいいね。三箱だと苦しくなる(笑)」
「15年間やってて今それに気づくのね!普通は一箱しか食べないよ!(笑)」
とこの日一番の笑いが飛び出すシーンも。
「やっぱり一方通行じゃライブはできないね。みんながいてくれたからこの二日間、いいライブが出来ました。ありがとう!」
e-ZUKAも感謝の言葉を口にし、満面の笑みを見せる。

「世知辛い世の中だけどさ、だからこそやれるだろ、できるだろってところを見せてやろうぜ!Can Do!」

本編ラストを飾った楽曲はやはり「Can Do」だ。リリースは今から9年前になるが、今まさに必要とされる曲だと感じたのはきっと自分
だけではないだろう。
歌詞にもある"孤独が苛む夜にだって明日待ちわびる光がある"というフレーズが現状とリンクしているように感じ、
暗い状況でも明るく進むことの大切さを改めて実感した。

いつもなら「グラン」「ロデオ」のコールでアンコールを待ちわびるところだが、現状のレギュレーションを踏まえ、手拍子にアレンジ
された待機時間を経て、再びメンバーがステージに登場。

e-ZUKAのシグネチャーギターのミニサイズ「RODEO Phoenix mini」の紹介の後に、8月に開催するアコースティック凱旋ツアーの告知、
さらに新情報として、年明けに「G15 ROCK☆SHOW & G16 ROCK☆SHOW」の開催を宣言。
声を抑えつつも、少しばかり小さい悲鳴が聞こえてしまうくらい、オーディエンスにとってはうれしい情報が告知された。

「最後に1曲だけ。声出せない分、全力で歌うんでブチ上がっていこうぜ!」
KISHOWのシャウトとともに「modernstrange cowboy」のイントロが響く。
"星の数の喜怒哀楽をいつか空に放てば 魂だけは全部を知ってるんだろう"
この約1年間でいくつもの感情を抱え、それを解き放つことすら制限された今、このフレーズが不思議と心に響いた。

いつかまた、ライブハウスが在るべき形に戻った時に、本当の意味でそれまでの喜怒哀楽を空に放てるんだろうか。
そんなことを思いながら聴く「modernstrange cowboy」は、今までのライブで聴いたときよりも希望に満ちている楽曲に感じた。
これでもかとシャウトを連発し、盛大に最後を締めくくると、メンバー一同でステージに一礼。鳴りやまぬ拍手を受けならがら、彼らはステージを後にした。

最初から最後までがエース級楽曲で構成された公演は、きっと後にも先にもこれきりだろう。
15周年はまだ始まったばかりだし、その先には16年目へ向けた大きなステージも控えている。
彼らの船旅は、まだまだ終わらない。

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【セットリスト】

01:The Other self

02:RIMFIRE

03:変幻自在のマジカルスター

04:メモリーズ

05:HEAVEN

06:慟哭ノ雨

07:Infinite Love

08:少年の果て

09:Punky Funky Love

10:Glorious days

11:BEASTFUL

12:ROSE HIP-BULLET

13:DARK SHAME

14:Deadly Drive

15:TRASH CANDY

16:愛のWarrior

17:Can Do

EN1:modern strange cowboy

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