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所有不明土地の解消に向けた民法・不動産登記法等の改正、相続土地国庫帰属法の制定①

自分の頭の整理として、令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法についてnoteでまとめていくことにした。
かなりの長編になると思うが、時間のあるときにまとめて行く。


課題

不動産の相続登記や住所変更等がなされないことにより所有不明土地が発生している。

そもそも、所有不明土地とは、①不動産登記簿より所有者が直ちに判明しない土地、②所有者が判明していても、その所在が不明で連絡がつかない土地をいう。

平成29年の国交省の調査では、約22%の土地について所有者不明の土地があることが分かっている。
その主な原因として、相続登記未了のものが約66%、住所変更登記が未了のものが約34%であった。
都心部ではこれが逆転している。
都心部では、不動産価値が高く、相続人が自己の名義にしておくインセンティブが働きやすいためである。
他方、地方では、相続人が自己名義にするための費用・手続負担が重く、不動産価値も低いので自己の名義にしておくインセンティブが働かないのが原因である。

所有不明土地が生じた事情

相続は登記しなくても、その所有権を第三者に対抗できるため申請しなくても不利益を受けることがほとんどない(相続登記の申請は義務ではない。)。
都市部に暮らす相続人にとっては、相続した地方の土地への所有意識は低い。また、相続した土地を利用したいというニーズもない。
特に地方の土地は、遺産分割協議をしないまま時間が経過し、その間に複数の相続が発生して相続人が何倍にも増えているから相続登記手続が重くなっている。

問題点

手続面として、現在の所有者の探索に多大な時間と費用を要する。
明治・大正、昭和初期から相続登記されていない土地は多くあり、戸籍・住民票の収集だけでも相当な時間と費用を要する。
また、戸籍を読み解くのは容易ではない。

現地面として、相続登記をせずにそのままにしている土地は、現実に土地を管理する相続人がいなく、放置されていることが多い。

管理・利用面として、共有者が多数になっている土地や共有者の一部の所在が不明な場合、土地の管理・利用のための合意形成が困難になっている。
公共事業が円滑に進まず民間取引もなされないので、どんどん土地が利用されなくなっている。
土地が管理されていないため、周辺の土地へも悪影響を及ぼしている。

今後ますますこのような土地が増えて行くことが容易に想定できる。

→ このような問題点を解決するために法制化が必要。

所有者不明土地の発生を予防する制度 → 不動産登記法の改正
管理不全を起こさないため土地所有権を手放すための制度 → 相続土地国庫帰属法
土地の管理・利用が円滑にできるための制度 → 民法の改正

所有不明土地の発生を予防する制度としての不動産登記法の改正

【相続登記未了】
・相続登記の申請の義務化
・相続⼈申告登記を新設
・相続関係の登記⼿続を簡略化(単独申請可能な場⾯を拡充)
・所有不動産記録証明制度を新設
・所有権の登記名義⼈の死亡情報についての符号の表⽰制度の新設
【住所変更登記未了】
・住所変更登記等の申請の義務化
・職権的に住所変更登記等をする新たな仕組み
【不動産登記の公⽰機能をより⾼める改正】
・法⼈につき会社法⼈等番号、外国居住者につき国内連絡先を追加
・ 登記された存続期間が満了している地上権等の権利に関する登記の抹消⼿続の簡略化
・ DV被害者等の保護のための登記事項証明書等の記載事項の特例の新設
・登記簿の附属書類の閲覧の可否の基準の合理化

土地を放置させないために土地所有権を手放すための制度としての相続土地国庫帰属法

・相続土地国庫帰属法を創設
相続等により土地の所有権を取得した人が、法務大臣の承認を受けて土地の所有権を国庫に帰属させることができるようにする。

土地の管理・利用が円滑にできるための制度として民法の改正

【相隣関係の見直し】
・隣地使用権
・ライフラインの設備設置使用権
・越境した竹木の枝の切取り
【共有の見直し】
・共有物の変更・管理に関する⾒直し
・共有物の管理の範囲の拡⼤・明確化
・共有物を使⽤する共有者がいる場合のルール
・賛否を明らかにしない共有者がいる場合の管理
・所在等不明共有者がいる場合の変更・管理
・共有物の管理者、共有の規定と遺産共有持分
・裁判による共有物分割
・所在等不明共有者の不動産の持分の取得・譲渡
【財産管理制度の見直し】
・所有者不明⼟地・建物管理制度
・管理不全⼟地・建物管理制度
・財産管理制度の相互関係
・相続⼈不存在の相続財産の清算⼿続の⾒直し
・財産管理制度に関するその他の⾒直し
【遺産分割の見直し】
・遺産分割に関する⾒直し
・具体的相続分による遺産分割の時的限界
・遺産共有と通常共有が併存している場合の特則
・不明相続⼈の不動産の持分取得・譲渡

施行日

⺠法⼀部改正法
原則として公布(令和3年4月28日)後、2年以内の政令で定める⽇
→令和5年4月1日
不動産登記一部改正法(相続登記義務化関係)
公布(令和3年4月28日)後、3年以内の政令で定める⽇
→令和6年4月1日
不動産登記一部改正法(住所変更登記義務化関係)
公布(令和3年4月28日)後、5年以内の政令で定める⽇
→未制定
相続⼟地国庫帰属法
公布(令和3年4月28日)後、2年以内の政令で定める⽇
→令和5年4月27日

次回は不動産登記法の改正を書きます。



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