所有不明土地の解消に向けた民法・不動産登記法等の改正、相続土地国庫帰属法の制定⑩

今回は、DV被害者等の保護のための登記事項証明書等の記載事項の特例等について書きます。


DV被害者等の保護のための登記事項証明書等の記載事項の特例

現状、登記事項証明書(不動産・商業法人)の交付請求により、何人でも登記名義人等の住所・氏名を知ることが可能です。

DV被害者等が、不動産を所有していたり、会社の役員に就任していたりする場合、誰にでも住所を知られることになり、生命・身体に危害がおよぶおそれがあります。

実務上は、前住所を住所として登記をすることを認めたり、住所の閲覧を制限するような取り扱いがされています。

他方、今回の相続登記や住所変更登記等の申請義務化に伴い、一律にDV被害者等についてもその義務が及ぶことになり不都合が生じることになります。

そこで、現在の実務の取扱いについて必要な見直しをした上で、DV被害者等の保護のための措置を法制化しました(新法119条6項)。

対象者は、DV防止法(配偶者暴力防止法)ストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)、児童虐待防止法(児童虐待の防止等に関する法律)等を想定しています。
対象者の具体的な範囲は省令で規定する予定です。

具体的な手続は、DV被害者等が法務局に申し出ることにより、対象者が載っている登記事項証明書等を発行する際に、現住所に代わる事項を記載した登記事項証明書等を発行することになります。

現住所に代わる事項には、委任を受けた弁護士の事務所や被害者支援団体等の住所、法務局の住所などになる予定です。

この制度は、令和6年4月1日施行となります。

登記簿の附属書類の閲覧制度の⾒直し

現在、土地所在図等の図面以外の登記簿の附属書類については、請求人が利害関係を有する部分に限って閲覧が可能とされています。

利害関係といっても、具体的にどの範囲のものに対し利害関係があるのかは明確ではないという問題がありました。

また、プライバシー配慮の要請が強まり、附属書類に含まれる個々の書類の性質・内容ごとに閲覧の可否を検討すべきでもあります。

そこで、登記等附属書類の閲覧の基準を合理的に判断できるように規定を見直しました(新法121条)。

これまで、要件は、利害関係だったが、これを正当な理由に変更しています。
また、閲覧対象となる文書の性質ごとに閲覧の可否を判断することになりました。

正当理由の内容は通達で明らかにすることを予定しています。
例としてあげるなら、ある不動産の買取りを検討している人が登記名義⼈から承諾を得た上で、過去の所有権の移転の経緯等について確認したり、昔に⾏われた分筆登記の際、隣地の筆界の確認の⽅法について確認しようとしたりするようなケースが考えられます。

なお、自己を申請人とする登記簿の附属書類については当然に閲覧可能となります。

この制度は、令和5年4月1日に施行しています。

次回から、相続土地国庫帰属制度について書きます。



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