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所有不明土地の解消に向けた民法・不動産登記法等の改正、相続土地国庫帰属法の制定⑤

今回は、所有不動産記録証明制度や所有権の登記名義⼈の死亡情報についての符号の表⽰に関して書きます。

今回、不動産登記法を改正して、相続登記の申請を義務化して、所有不明土地の発生を予防しようとしています。
しかし、現行の不動産登記記録は、土地や建物ごとに作成されており、全国の不動産から特定人が所有権登記名義人になっている不動産を網羅的に抽出して、その結果を公開する仕組みがありません。
このような仕組みのもとでは、所有権登記名義人が死亡した場合に、相続人では、被相続人が所有しているすべての不動産を把握できず、見逃された土地が相続登記されないまま放置されているケースが少なからず生じています。
このような事態にならないように、今回の不動産登記法改正で、所有不動産記録証明制度を新設した(新法119条の2)。


所有不動産記録証明制度

一覧的リスト化

登記官において、特定の被相続⼈が所有権の登記名義⼈*1として記録されている不動産をリスト化し証明する制度を新設した(新法119条の2)。
被相続人に、そのような不動産がない場合にはその旨の表示がされる(相続手続を行う士業は、所有不動産記録証明制度を利用して証明書の発行・確認をすることが当然の業務として行われることが想定される。)。

*1 表題登記しかなされていない不動産も多くあり、将来的には表題部所有者への拡大も検討される予定である。

所有不動産記録証明書の交付請求が可能な者の範囲

ある特定の者が登記名義⼈となっている不動産を⼀覧的に把握するニーズは、被相続人の不動産だけでなく、⽣存中の⾃然⼈のほかに法⼈についてもある。
したがって、生存中の自然人や法人についても所有不動産記録証明制度の対象とした。
ただ、プライバシー等の配慮の必要性から、請求範囲を下記のとおり限定している。

・何⼈も、⾃らが所有権の登記名義⼈として記録されている不動産について本証明書の交付請求が可能

・相続⼈その他の⼀般承継⼈は、被相続⼈その他の被承継⼈に係る本証明書について交付請求可能

証明書交付請求先の登記所及び手数料

交付請求先は、法務大臣が指定する予定である。
手数料の額については、政令等で定める予定である。

所有権の登記名義⼈の死亡情報についての符号の表⽰

現行法では、特定の不動産の所有権登記名義人が死亡しても、申請に基づいて相続登記等が申請されない限り、その所有権登記名義人が死亡した事実は、不動産登記簿に公示されない。
登記記録から見て、所有権登記名義人の死亡の有無を確認できないと至極不便である。

公共や民間の各事業を計画する際に、対象地の特定の土地や建物の登記記録を確認することになるが、その段階で死亡の有無の確認が可能になれば、所有者の特定やその後の交渉に手間やコストを要する不動産を避けることが容易になり、事業用地の選定が円滑になる。
このような問題から、所有権登記名義人の死亡情報を登記に反映させるべきだとして、今回の改正で、所有権の登記名義⼈の死亡情報についての符号の表⽰することとした(新法76条の4、151条)。

死亡情報についての符号の表⽰

登記官が他の公的機関(住基ネットや固定資産課税台帳など)から取得した死亡情報に基づいて不動産登記に死亡の事実を符号によって表⽰する制度を新設することによって、登記記録を⾒ればその不動産の所有権登記名義⼈の死亡の事実を確認することが可能となる(新法76条の4、151条)。

手続

① 登記官が、住基ネット等から死亡情報を取得する*2。
② 登記官が、所有権登記名義人の死亡の有無について戸籍等の確認を実施する。
③ 所有権登記名義人の死亡の事実が認められる場合*3、登記官が、不動産登記情報システムに所有権登記名義人について死亡を示す符合を表示する

*2 住基ネットについては、所有権登記名義⼈の住所等の変更情報を取得する仕組みの中で、死亡情報も取得することが可能となるため、この仕組みを活⽤することを想定している。

*3 条⽂上は「権利能⼒を有しないこと」とされているが、法務省令で必要性の⾼い⾃然⼈を対象とする予定である。

次回は、住所変更登記等の申請の義務化と職権登記制度について書きます。



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