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重たい体

お風呂にゆっくり浸かる
自分が溶けそうなくらいに
そして十分に体が温まったら
湯船に入ったまま栓を抜く
徐々にお湯が流れていく
水面が下がっていく
だんだんと体が重みを取り戻していく
重たい
血と肉の詰まった皮袋である肉体は
とても重たい

思考が乱反射する脳内で
自分の肉体を改めて再認識する
手が
脚が
胴体が
だんだんと重さを取り戻していく
皮袋の中に
魂を閉じ込めていく
結局私の肉体なんて
自分という意識を閉じ込めるための檻だ
そうして閉じ込められた私は
ゆっくりと立ち上がる
重さに耐えながら
罪に耐えながら
引きずるように
肉体を動かすためだけに脳を使う
なぜ
何のために
この体は動いているんだろうか
私には分からない

人を辞めたがっている私には
人を辞めているかもしれない私には
私が人間であることが
何よりも受け入れがたい
なぜ人でなければいけないのだろうか
私という意識は
せめて
せめて人でさえなければ
何度そう願っただろう

ドラえもんの秘密道具の中に
石ころ帽子というものがある
その帽子を被ると
そこら辺の石ころと同じように
気にも止まらない物体になり下がることが出来る
私は喉から、いや、血反吐が出そうなほど
その道具が欲しくてたまらない
私の意思を文字通り、石にして欲しい
重たく
沈んで
どこともしれない暗闇の中に
ただただ在るだけの石ころでありたい
私の生命が、ただ憎い

重たい体は残念なことに
呼吸をする
食事をする
睡眠をとる
どれも、出来てしまう
残念でならない
私は石ころにはなれない
きっと生まれ変わっても

重たい体を引きずって
産まれたという罪を背負って
ただ
死だけを眺めて
茫然と
時が私を殺す日を願っている

いつまでも、重たい体のまま

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