今日も運転しなかった 第6回

 大倉山のツタヤでは様々なタイトルと出会った。

 旧作コーナーで意識したことは、3時間の長い映画を選ぶということ。手のひらに100円玉がある以上、1作でも多く見ようと心待ちにして部屋を出た(訂正・仕事がなく暇であった)。

 ノートパソコンに借りたばかりのDVDを入れる。その映画はハリウッド史上、最大と言っていいほど赤字を出した曰く付きのタイトルだった。「ディア・ハンター」のあと手に取ったのは、きっと私だけじゃないはずだ。監督のロシアンルーレットは倒産という引き金を引いて、ついに呪われてしまったようだ。

 映画「天国の門」についての数々の罵倒は知っていた。しかし、なぜ今日までそれが続いているのかわからなかった。映画会社ユナイトを火の車で包み、チミノ監督のすべてを奪ったこの映画に対して、私は心から感動していた。

 4時間近くの映画が終わった直後を覚えている。私はとてつもなくお腹が空いていた。床に置いたエビアンのみで長時間の船旅に出たらしかった。当時は水とガム程度しか買えない生活をしていたので、(映画を見ることで)空腹を紛らわせていたようだ。

 マイケル・チミノはついに名声を回復することなく死んだ。もし本当に映画が退屈であれば、ツタヤにも、どこの店にも置いていないはずだ(確かに冒頭、ハーバード大学の卒業シーンですでに回収不能である)。

 1Kの明るい部屋で、遺されたHeaven’s Gateをくぐり抜けることができて幸福である。

(つづく)