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Hasselblad X2Dの購入を検討するにあたって考えたこと

みなさん、こんにちは。こちらのエントリでは、Hasselblad X2Dの発表を見て、思うことを書き記しておきます。

はじめに

私自身はこれまでHasselbladのカメラを使っておりまして、特に本エントリにあるX2Dの前モデルに相当する「X1DII-50C」や、往年の名機との接続も行える「907X-50C」などの製品は、ある程度の期間にわたり使用してきました。

2022年09月にHasselbladからXシステムの新モデル「X2D」がリリースされてから約半年が経過していますが、製品のスペックシートなどを見て思うことや、新規購入・アップグレードをする際に気をつけておくべき点などを記します。本記事の内容がどなたかのお役に立てばという思いもありますが、自身の備忘録的な役割も兼ねていますので、ご承知おきください。
※ご参考までに、製品を購入した時のエントリも貼っておきます。

Hasselblad X2Dリリースノート&ムービー

製品発表時のリリースについては、Hasselblad社のWebサイトに記載がありますので、そちらを参考にしてください。

■プレスリリース
https://www.hasselblad.com/ja-jp/press/press-releases/2022/hasselblad-launches-new-flagship-camera-and-three-all-new-lenses/

■製品紹介動画

Hasselblad X2D 100C購入前の印象と懸念

既に発表から半年近くの時間が経過していますので、検索するとそこそこ関連した記事が出てきます。ですので、本製品を検討する方はそれらをチェックしているかもしれません。

いっぽう、私は本記事を書いている現在、カメラのアップグレードを行っていません。かと言って、新製品が出たからすぐに買い替える、と言うほどの余裕もありませんので(苦笑、製品の詳細を見た上で、買い替えるのが正解稼働かも含めて検討する必要があります。

というわけで、アップグレードを含めて気をつけるべき点を以下に記載しておきます。

5,000万画素から1億画素への高画素化

まず大きな仕様変更の中に1億画素化があります。これまでのHasselbladのRAWデータは1カットで約100MB程度ありましたが、これが倍程度まで増大することを意味します。要はファイルサイズが大きくなるので、データを扱う環境も見直さなければならなくなるわけです。

昨今の一眼カメラは十分すぎるほどの画素数があり、ハンドリングの負荷が高まっています。例えばストレージ容量の増強、編集PCのスペックアップ、高画素に耐えうる解像度を持つレンズへの買替などが必要になってくるでしょう。カメラ本体だけを変えたとしても、レンズ資産が余すところなくデータを取り込めないと、そのポテンシャルが活かされません。

今回、カメラボディの他に新レンズが3本発表されています。デザインも新しくなり魅力的ですが、プライシングもそれ相応なものですので、これらを含めて検討する必要があります。

撮影オペレーションの大幅刷新

フォーカスポイントの拡充、AFの高速化は大いに歓迎すべき内容であると思います。X1Dも必要十分なAF機構ではありますが、35mmのデジタル一眼カメラと比べれば、その差は大きいです。自身の場合はそこまで高速なAFは必要ないケースがほとんどですが、動きのある被写体を狙う時に強力な武器になる可能性は高いです。

また、可動ディスプレイの存在も大きいと感じます。地面スレスレのアングルからの撮影など、ファインダーを覗けない環境で撮影する際にも活用できると思います。これまでもPhocus Mobileを使ったテザー撮影にすればライブビュー撮影はできていましたが、スタンドアロンの環境でも活用できるようになりますので、活動の幅は広がるものと思います。

手ブレ防止機構の実装

リリースノートでは、5軸で最大7段補正のボディ内手ブレ補正 (IBIS)を搭載とあり、中判デジタル一眼カメラでは初?のような気がします。Xシステムはカメラボディ内にセンサーが搭載されている構造で、これまでの既存システムではボディ内補正は現実的では無かったのかもしれません。

かといって、レンズ側に手ブレ補正機構が入ることもありませんでした。レンズシャッターシステムを採用している製品で、スタビライザーが付いた製品なんてあるのかな、とも思いますが・・・。

この手ブレ補正システムのお陰で、スローシャッターでの撮影が今まで以上に行いやすくなることが想像できます。レンズ内に手ブレ補正機構があると、ファインダー内で補正効果を確認しながら撮影できるのですが、今回の仕様を見るとその効果を感じながら撮影することはできないのかなと感じます。※実機を触る機会があれば、体験後に後日書き直すかもしれません。

1TB SSDの実装

カメラボディ内に大容量ストレージを収納してしまいました。こうした取り組みは他社メーカーでも一部の製品でやっていたとは思いますが、これだけの容量があると、ある程度の撮影であれば外部ストレージがなくても大丈夫そうな気がします。SSDを使うことで高速書き込みを実現し、連写時のデータ記録にも大きな貢献を果たしてくれるようです。

ただいつ起きるかわからないマシントラブルに備え、外部ストレージを全く使わずということにはならない気はします。やはりデータに対する備えはしっかりしておくのが賢明だと思います。

USB3.1 Gen2 インターフェース + PD充電

カメラのインターフェースがFireWireからUSB3に代わりある程度の時間が経ちますが、USB経由でカメラバッテリーの充電を出来るようになったのは、個人的には大きなメリットです。しかも今回はPD充電に対応しているので、充電時間の短縮化が見込まれます。

カメラのバッテリーは昨今のスマホ充電と比べると若干出遅れ感があります。専用バッテリーの仕様も高速充電に対応できるようにしなければならないからだと思うのですが・・・。最近はロケーション先で電池が切れてしまうことが多く、十分な撮影ができない事態が続いていました。ですので、電池を2つ持ち、使い終わった電池をモバイルバッテリー経由で充電して交互に使う・・・みたいなことができるようになると、利便性が高まります。

USB-Cの規格は複数会って非常にややこしいのですが、今回搭載しているUSB-C Gen2は10Mbpsの転送速度を持つインターフェースですね。最近のiPad ProはThunder Bolt 4インターフェースを持ち、最大40Mbpsの転送速度に対応しています。これはMacBookProなども同じだと思いますので、このあたりの連係も加味してほしいな、と思う点です。同じようなパフォーマンスがあると、Phocus/Phocus Mobileとの連携も超快適になりそうな予感がしますよね。

新レンズの登場

個人的には55mmのレンズに注目しています。私はここ10年程度の間、多くの撮影を50mmレンズで行っています。標準レンズでの撮影しかしていない自分にとって、X1DII-50Cとセットで購入した45mmレンズは、少々広角気味な面がありましたので、標準に近い画角で撮影をしたいなと率直に感じました。

今回発表されるレンズはインナーフォーカス機構を備えているので、AF駆動時に前玉が動くということもないようですね。そして何よりデザインも美しい。最新のレンズということで、X2Dとの相性も良いのだろうと推察します。

懸念は58万という価格です。今使っているレンズはそんな高額ではなかったと思いますので、同時に購入となると、かなりの金額になります。そして少し望遠型となる90mmレンズも大変気になる所。新システムに移行するには周辺も考慮する必要があることは述べてきたことですが、費用も考えものです。

このあたりについては、X1D時代から存在するズームレンズを使った時の使いまわし感などを体験した上で比較検討していく事になりそうな気もします。単焦点レンズの方がコンパクトで使い勝手が間違いなく良いはずなので、これはこれで迷いどころになるでしょう。
※ズームレンズはAmazonにも掲載がありますが、プロショップだと58万円位で流通しているようです。

カメラ以外の周辺環境

カメラ以外という点では、編集用のPCが気になる所。特にテザー撮影する際には大量のデータを捌く必要があるので、ストレージの増強だけでなく、CPU/GPUの増強もしておきたいところ。

Macの場合はアップルシリコン(M1/M2)一択で、Windowsの場合は、外部GPUを搭載したPCの準備をしたほうが快適だろうと想像します。GPUというとGeForce系のグラフィックカードが代表的ですが、PhocusがサポートするグラフィックアクセラレーターはOPENCLというもので、これはRTXA系(旧QUADRO)と呼ばれるグラフィックカードで対応しているもののようです。

ただ、このあたりのグラフィックカードは非常に高価なので、これはどれだけの作業を行うのか、バランスを考えて決める必要があります。今使っているPCもGeForceのグラフィックカードが搭載されているので、まずはこのまま使ってみてパフォーマンスを確認してから考えることになりそうです。

もう一つの懸念はiPad Proを使ったテザー撮影におけるパフォーマンスですね。テザー撮影はたまに行っているので、画像を表示するスピード感、拡大してディテールを確認する時の応答速度がストレス無く使えるのか、そのあたりが気になる所です。

周辺アイテムなど

あと追加で液晶保護シートを用意して液晶面の保護を行う事になりそうです。このあたりのアイテムは、Amazonなどでも流通しているので、すぐ手に入りそう。

最後に

ここまで色々と気にしておく点を記述しましたが、最も大事な点は、「どのような写真を撮るのか」という目的のような気がします。正直な所、中判カメラですので、ハンドリングしづらいことは理解した上で検討したほうが良いと思っています。

扱いやすいカメラ、幅広い被写体を狙えるカメラとしては、既存の35mmカメラの方が便利で使い回しが利くことは間違いありません。ですが、このカメラでなければ撮れない世界があるのも事実。その取りたい気持ちに答えてくれるのがHasselbladですが、どう使いこなすかは自身にかかっているわけです。

この目的といいますか、ミッションといいますか、根幹をしっかり持った上でHasselbladを選択されるのであれば、それは最高に素晴らしいことだろうと思います。私自身も色々考えて(特にお金周り・苦笑)みたいと思います。

大学を卒業後、約15年間写真スタジオ、写真機材販売、北欧カメラメーカーの日本法人立ち上げなど行う。その後ITベンチャーにてマーケティング業務に従事しながら大学院に通いMBAを取得。現在もスタートアップ企業にて奔走中。