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漢字で感じる人間学60(凸と凹・でこぼこだからこそ人は素晴らしい)

凸(トツ)と凹(オウ)。この2つは常用漢字表にも載っている立派な漢字です。単独では音読みしかないのですが、凸凹と2つ重なったときに「でこぼこ」という訓読みがあります。

この間、社員旅行で箱根に行ってきました。箱根駅伝の往路の最終区第5区は小田原から最終の芦ノ湖駐車場まで。それまでの平坦な道と違って山登りがかなり入って来るきついコースになっていて、近くに行ってみるとその様子もとてもよく分かります。

テレビで箱根駅伝を見ていると途中でサッポロビールのCMが入って、そこで出てくるフレーズが「丸くなるな 星になれ」。サッポロビールの星マークにもかけているのだと思いますが、よく考えたものだと思います。

ある時、知り合いの女性が言っていました。「これまで凸凹(でこぼこ)している自分が許せなかったけど、ああ、でこぼこの自分でいいんだ、と思える様になってすごく楽になった」

人間の成熟した心の状態を現すのに「丸」とか「円」が使われます。人間的に丸くなるとは、色んな人の思いを汲んで共感し、行動できること。この「丸い」感じというのはやっぱりそうだと思います。禅でも「円相」といって、悟りの状態を円で表現したものがあります。

でも、この「円相」の円も一期一会。その人がその瞬間にしか書けないものです。そして、円といっても完全な円ではなく、よく見るとやっぱり凸凹しているところもあれば、欠けているところもある。悟った人が完全な円を描こうとして、コンパスを使って書いたらとてもつまらなくなってしまいます。

「完全な私」みたいなものってやっぱり幻想で、どんなに悟った人でも得意なことがあるし、苦手なこともあります。生きている中で普通に失敗もします。「完全無欠の神」の様な姿を現実に生きている人に投影したりすると、後で色々困ったことが起きてきたりします。

そして、そもそも地球素材で作られたこの身体を以て存在していること自体、世界の中にボコッと現れた特異なものですし、さらに一人一人違っているそれぞれの特性があります。これも世界中のすべての人が一人のクローン人間だったら全く面白くありません。

そもそもが凸凹している、一人一人が異なっているからこそ素晴らしい。「個性」というものをわざわざ主張するまでもなく、その人がそのありようで存在しているというそのことだけで、もう圧倒的に個性的です。

他の人になる必要はなくて、その人がその人になっていく。凸凹がその凸凹のままで丸くなっていく。それこそが素晴らしいことなのではないかと思います。

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