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【臨床日記】予防運動療法とは〜理学療法のアイディンティティにもの思う〜

予防運動療法を確立してはや13年が経とうとしています。
当初は予防理学療法だったのですが、PT協会が僕の後に同じ名前の学会を作ってきたことと(当然相談はなし)、理学療法士以外にも知って欲しいということで予防運動療法と改名し今に至ります。

予防運動療法とは何かといえば、骨格特性などの個別性に重きを置きつつ、内因としての個性と、外因としての環境との関係から病因としての障害を捉えて、因果関係を明確化した上で、再発しない運動指導、環境調整を行う運動療法です。

鍵となるのは、以下の概念や項目です。

  • 骨格特性

  • アフォーダンス理論

  • 成長期の成長抑制と強度の運動習慣

  • 生活習慣

  • メカニカルストレス

  • ニュートラル(正常)からの逸脱

またこれら概念の根拠は以下の学問から来ています。

  • 一般的な理学療法;運動学、解剖学、生理学、心理学含む

  • 比較解剖学

  • 進化学

  • 生命科学

これらを学ことで、病気ありきではなく、なぜ病気や障害を起こるのかという原因に焦点を当てた物事の捉え方ができるようになります。
例えば、筋力低下は原因ではなくその背景に原因があって低下はその結果ということが分かります。
可動域制限も同じく、それは結果です。
因果関係は病因という内因と外因の関係で捉えなければいけません。
外因だけでおこる外傷などと異なり、多くの障害は内因にも問題があるのです。

しかし、現代の理学療法は内院の検査というものに重きを置いていない結果だけを評価して、そこに対応するという対症療法ばかりです。
というか、理学療法に病因という概念がないのです。
後療法から始まった分野なので、因果関係を探索するという概念がそもそもなかった。
そこは医師がやるので、君たちは言われた筋トレとストレッチをやっていればいいというのが、存在価値だったのです。

しかし、保存療法ではその対症療法で結果を出すことはできませんし、もちろん根本的な解決法は病因を明確にする以外にありません。
ということで、本来は理学療法のアップデートが必要なのですが、大学にいるような先生方や政治活動している理学療法士でこのことに気づいている人はいないので、何も変わらないのです。

少しだけ愚痴っぽくなってしまいますが、理学療法にアイディンティティはないでしょう。
リハビリテーションはノーマライゼーションなどの概念を持ち、障害があっても社会で人権を持って生きているようにするという理念はあります。
しかし、理学療法そのものには役割はあれどアイディンティティはないのです。
法で定められている『基本的動作の獲得〜」とかは役割です。

アイディンティティとは、職能団体としての専門性です。
何が自分たちの専門なのか?
トランスファーの技術?ROM測定?MMT?歩行分析?歩行介助?

筋トレならトレーナーもやっています。
ストレッチなら誰でもいいでしょう。
介助も介護福祉士の方もいますし。
歩行分析?これも体育の専門家や人体工学の方々も専門家です。

正直、スタンダードとなる専門性がないから、手技やテクニックに走るのです。
〇〇法、〇〇テクニック、、、。
理学療法士と名乗るよりも、〇〇法の指導員ですとか、〇〇セラピストですと名乗る人が多いのもそうれが理由でしょう。
自分の理学療法士としてのアイディンティティがないから、手技が自分の代名詞になるのです。
正直、手技は整体でもカイロでもなんでもありなわけで、最近の整体で開業する理学療法士が多いのも、アイディンティティがない理学療法士がすることとして納得できます。
そりゃそうだよねということです。

理学療法自体に専門性がないのですから、、、。

僕は、理学療法は西洋医学として、科学的な視点で根拠や理論に基づいた医学的なアプローチである必要があると思っています。
西洋医学、とどのつまりは医療保険を使う立場としての大きな特徴というか条件は説明責任があることです。

  • なぜこの不調があるのか

  • 原因は何か

  • どの治療法をなんの根拠で選択するのか

  • いつまで行うのか

  • 効果判定はいつするのか

  • 方針や予後予測はどうなっているのか

これらが説明できないなら医療保険を使う価値というか条件を満たしていないので、医療ではありません。
しかし、手技に走る人たちは、整体の技術を医療で使ったりします。
上記の説明がないから、足に興味があるものは足しか見ませんし、胸郭に興味があるならそこを見ます。
そこは、各理学療法士の趣味や興味であり、医学ではないのです。

理学療法にもガイドラインとかがありますが、そもそも病名に対する対症療法のガイドラインですから、病因という発想(病気や障害の因果関係)はありませんし、アイディンティティや哲学がありませんから、芯がありません。
だから、若者は仕事という価値だけだったら稼げる整体でいいやとなるのです。
哲学がないからですね。

だいぶ理学療法士の問題点の指摘時間になってしまいましたが、予防運動療法は、実は説明責任を果たせる方法なのです。
なぜなら、因果関係を明確にする方法だからです。
上記の説明は全てできます。
というか説明できないなら、本来はアプローチを開始してはいけません。
原因分からないけどこの薬飲んでみてという医師いないですよね、、、。

また、評価というのは全身をくまなく見ることであり、膝が痛いから膝を評価というのはナンセンスです。
これは血液検査がそうなのですが、膝が痛いといってCRPだけ検査しますか?
リウマチだって疑うし、場合によっては腫瘍も疑うでしょう。
血液検査をするなら普通は基本的な項目は全て調べるはずです。

しかし、なぜか理学療法の場合は、その部位のみの評価になります。
医学なら全身のアライメントを見るのが鉄則です。
また、骨格特性は身長と体重を測るのと同じくらい、個性の把握として当然のことです。
こういう当たり前のことすらできていない理学療法に医学を名乗るのはそもそもナンセンスなのです。
アイディンティティがないというのは、医療者としての基礎がそもそも備わっていないのが問題なのです。

予防運動療法は、実際は本来医療で行うべきことを提唱しています。
医学であるなら当たり前の、全身の評価と個性の評価です。
特別ではないのです。
しかし、この発想は予防医学の世界に僕は出たから気付いたことです。
医療施設で働いている時には気づきませんでした。
自分たち理学療法の異常さを。
外に出て客観的な立場で見たからこそ、現状のヤバさがわかったのです。

理学療法は、これから予防の概念でバージョンアップが必要です。
現状のこのヤバい状態に一般の方々が気づく前に、医療保険から外される前に、自ら改革する必要があります。
脳卒中のように、また外傷のように内因よりも外因の影響が大きく、壊れたものを回復させるという部分に関しては、後療法的な対症療法でも構いませんし、今のままでも価値はあります。
しかし障害に関しては、アップデートしないとヤバいでしょう。
整体と同じことをして、説明責任も果たせないものに保険を適用するほど日本は豊かではなくなりました。

理学療法士が増えても病気の発症に抑制が効いていないのですから、対症療法ではこの高齢な国は破綻します。
予防できてなんぼという専門性に変えなければいけないでしょうね。
予防運動療法はまだ僕が確立して10数年ですから、これから論文を書きながら、エビデンスを蓄積していきます。
一緒に研究してくれる方、一緒に理学療法の未来を作ってくれる方、ぜひ仲間になりましょう。

まずは予防運動療法研究会のセミナーや勉強会に参加してください。
未来を変革する気持ちを持っている方の参加を楽しみにしています。


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Naoto
よろしければサポートをお願いします。私自身ではまだまだ微力です。当たり前の選択や情報を得ることができていない方々に、予防医学の視点で、知らなかったことで損した方を少しでも減らすよう、有益な情報を発信していきます。皆様の応援を励みに、より精進して行きます。応援ありがとうございます。