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トレイシー・ソーン自伝「安アパートのディスコクイーン」
ネオアコのことを投稿したら思い出したこの本。
「安アパートのディスコクイーン」(2019年)
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愛しのトレイシー・ソーンの自伝。同世代的共感という点では一番好きな女性ボーカリストかもしれない。この本も「そうそう」と頷ける箇所多数。どこか醒めた文体もクール。最初にエレキギター買ったのが1979年でレスポールのコピーモデルという点も一緒だった。
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下が現在持っているフェンダーのストラトキャスター、エリック・クラプトン・モデル
マリン・ガールズやEVERYTHING BUT THE GIRLなどの活動は勿論、エルヴィス・コステロやクラッシュといった好きなアーティスト、そして同時代のスタイル・カウンシルやスミス…つまりあの頃の音楽が沢山出て来る。読みながら聴くBGMを作りたくなった。1985年頃だったかな?トレイシーに似た声で歌う女子大生がいるという噂を聞きつけて、車飛ばして学園祭を観に行ったこともあった。
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トレイシーは日記を付けていたようで、実に生き生きと、詳細に書かれてある。例えば1976年(13歳)に買ったレコードは、イーグルスやダイアナ・ロス、リンダ・ルイス辺り。
ところが翌77年に事態は一変する。ジャム、ドクター・フィール・グッド、ストラングラーズ、エルヴィス・コステロ…。パンクが彼女を襲うのだ。両親は「いったい娘に何が起きたのか」とショックを受けたらしい。
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その数年後の博多にて。母親のメイク道具を拝借して目の周りを真っ黒にして、部屋の中で「ションベン終わる前に何処かへ飛んでけ!」とか「こんな夜にお前に乗れないなんて!」と叫び歌うバカ息子に母おったまげた…という光景に似てるじゃないか(笑)。
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それと、過去への考察、或いは過去の出来事への言及、といった点も大いに共感した。少し引用してみる(彼女が在籍していたマリン・ガールズの分裂・解散についての論考部分)。
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その出来事(メンバー間の亀裂)を共有してた筈の人たちと当時の手がかりを付き合わせてみることができたとして、我々はいずれ「本当の真実」とでも呼べるようなものにまできちんと辿り着くことができるのか。それとも、自分のものとは別の支離滅裂な新たな物語と出会うだけのことなのか。答えは簡単に見つかりそうもない。
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そうだよな、トレイシー。若い時は、大人になれば過去の傷なんて雲散霧消するし、悩みなんて全て解決すると思ってた。でも相変わらず、そこに横たわっているだけだ。
ネオアコ・ムーブメントが一気に花開いた1983年から1984年にかけて。面白おかしく過ごした10代が終わろうとしてた。キャンパスの華やかさは居心地が悪かった。モヤモヤした気分に、トレイシーの空虚で乾いた声はピッタリだった。一方、トレイシーもまた大衆とやらに馴染めず、それがまた音楽に向かわせたようだ。また、パンクのスピリットに強く影響を受けたけれども、その音楽性とは対照的なアコースティック・サウンドを志向した、というのも面白い。ノイジーなパンク・サウンドへのカウンター・パンチ(それもパンクだ)を目指したのだろう。
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トレイシー・ソーンの自伝は、彼女の音楽を知らなくても、共感して貰える部分は多いと思う。「10代後半とかハタチくらいの頃はこんな気持ちだったよな」とか、「遠く遠く過ぎ去ってしまった青春の逡巡」といった感情が蘇って来るから。
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右はI Don't Want To Talk About It(シングル)
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