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俳句の季語に見るベーゴマ(ベーゴマ考60)

江戸時代から庶民のなかで嗜まれてきた「ばいまわし(ベーゴマ)」
当初は子どもだけではなく、大人の遊びであった

当時有名であった三重県産のバイ貝が出回るのは
9月〜10月ごろで
貝の名前「ばい」を「倍」と転じ
縁起物として食された。

その貝殻を利用して、バイ貝の殻をかけさせて粘土などを詰めて独楽とし、樽などの上で廻し遊んだ。

この
「海臝廻(ばいまわし/ばいまはし)・海臝打(ばいうち)・べい独楽(ごま)」は、俳句の季語「秋・晩秋」として使われる。

海螺廻し(ばいまわし/ばいまはし)
ばいばいごま/ばいごま/べい独楽/海螺打/強海螺/勝海螺/負海螺


さて
ネットから見つけることができた
ベーゴマに関する俳句を見てみよう。

尚、情景は金坂が勝手にイメージしたものなので
本来の意味と違っていたら誰か教えてください。



海臝打にすぐゆふがたが終(しま)ふなり    竹下しづの女

・・・・ベーゴマに夢中になっているうちにすぐに夕方になってしまう

奉公に行く誰彼や海臝廻し       久保田万太郎

・・・・ベーゴマの床を囲むいつもの仲間。気づけばあいつがいない。奉公にでも出されたのであろうか

海臝打や灯ともり給ふ観世音       水原秋櫻子

・・・・・これもベーゴマに夢中になって観音様を祀るお社に夕方と共にあかりが灯る時間になってしまったという情景が浮かぶ

負け海臝やたましひ抜けの遠ころげ       山口誓子

・・・・これはベーゴマをやる人にしかわからん表現。相手に床の上でぶっ飛ばされて
魂が抜けたように転がっていく。この情景を言葉に乗せれるのは、山口誓子氏自身がばいまわしを行っていたからであろう。

家々のはざまの海や海臝廻し       富安風生

・・・・家々の間の路地裏を海に見立てて、そこで騒ぐ子どもたちと床の上を狭しとぶつかり合うベーゴマの様子が見えてくる。広い海と狭い路地、その対比も含めて面白い

海螺遊してゐる脇の土遊     皿井旭川「ホトトギス雑詠選集」

・・・・昔は、子どもたちにも仕事があって、その大きな一つが幼い兄弟のお世話だった。下の子が一緒に行かないと駄々をこねるが最後、ベーゴマがみんなと出来なくなる。この俳句を見るに、これはかなりピンチな状態。床を囲んで火花を散らしている横で、下の子たちが「ヒマー」「おもんなーい」と言いながら土遊びをしているのであろうか。

海螺打や寺の内外の菊日和        増田龍雨「龍雨俳句集」

・・・・お寺の境内でベーゴマをやっている。菊が咲き誇っている様子からも超日本な感じがします。

海贏うちの廓ともりてわかれけり           久保田万太郎

・・・・路地裏でベーゴマに夢中になっているまにいつの間にか日が暮れて、遊郭に日が灯る。舞台は子どもの時間から夜の時間に場面転換するのであろうか。「子どもは早よ帰れ」という昼遊びから夜遊びの交代が聞こえてくる。


ベーゴマをやっている様子をイメージすると
路地裏の子どもたちが思い浮かぶ

俳句の文字数の中で
「ばいまわし」や「ばいうち」と一言入るだけで
いろんな情景が浮かんでくる。

季語にベーゴマがあるのもまた面白いと思うのだ。


では
そういうことで

海螺遊し 床の火花を路地に見る

ヒゲ蔵心の俳句


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