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思いがけず会社を辞めることになった時の家族の反応

1歳4ヶ月になった娘が毎日朝5時に起きるため、僕も毎日それに合わせて早起きしている。というわけで朝は時間的余裕があるので洗濯機を回しながら娘の朝食を用意し始めるまでの時間でやや寝ぼけながらこれを殴り書きしている。

マムズラボを法人化することにしたのは2017年の4月頃。当初は、社長は佐藤に任せて、僕はSBヒューマンキャピタルに籍を残したまま取締役として入ることを考えていた。僕自身は今すぐ起業したいとかそういう想いがあったわけではなく、あくまで良い事業・良いサービスを作りたいという動機しかなかったので、あまり経営者のポジションにこだわりはなかった。また、これまでも経営企画部長というポジションで複数の事業立ち上げに携わってきたし、そういう時には籍を残したまま取締役として入ることが過去にもあったから、今回もそのつもりだった。

ただ、今回のマムズラボを立ち上げるケースでは、フリーランス歴が長く経営経験がまだない佐藤を主に現場執行や数値管理の側面でより強力にサポートするために、僕も代表権を持ち、代表取締役副社長として参画することに関係者間で議論して決めた。

この一連の議論の中で、「やっぱりこれから社員を採用して会社を大きくしていく中で、代表の1人が兼務状態って良くないよね?」と言われ、僕もそういうスジとかポリシーみたいなものをわりと大事にするので「そりゃそうですね、たしかに」と即答し、在籍していたSBヒューマンキャピタルからは籍を抜き、マムズラボの代表取締役一本でコミットすることに決めた。

その日は忙しくて別件も立て込んでいたので午前中のその議論は頭の片隅に追いやられており、帰りの電車の中で、気づいた。どうやら自分は会社を辞める意思決定をしたらしい、と。

ああ、そうか。10年以上働いた会社とは、こういう形でさよならするんだな。まあ喧嘩別れの退職でもなく、一般的な転職という形でもなく、なんとなく自分らしい卒業の仕方かもしれないなと思った。

自分はそういう感じでハラオチしてるけど、さて妻や親にはいちおう言っておかないといけない。妻はショックで泣き叫ぶだろうか、それともあなたの決めたことだからついていくわなんて昔のドラマみたいなことを言うのだろうか。

妻の反応は、冗談交じりに「生活水準が変わらないなら別にいいよ」というものだった。「はい、変わらないことはもちろんゆくゆくは向上させるようがんばります」と伝え、条件付き?だが比較的あっさり認めてもらった。一応その辺は信頼してくれてはいるようだ。ただ、「生活水準維持はなかなか厳しい条件だな…。やってみなくちゃどうなるかわからんしな…」と正直思ったがその辺は言わないでおいた。やるしかないのだ。とはいえ、「考え直して」とか「もっとちゃんと考えて」とか一切言わないところがうちの妻らしい。家のことは基本的に話し合って決めるので、家族に関わる話で僕が単独で意思決定することはめったになく、だからこそそういう時は言っても無駄だと知っている。

さて次は両親に伝えよう。もういい大人だけどいちおう一人息子だし事後報告もよくないしね。翌日の日中、アポイントの合間にたしか池袋あたりで母親に電話した。母親は未熟な一人息子を育ててくれた会社にとても感謝していて、だからこそ退職の話はびっくりしていた。新手のリストラとでも思ったのかもしれない。母親の第一声は「ダメだったら戻れるのよね?」だった。まあ確かに古巣に戻れる可能性はあるかもしれないけど、そういう退路を断つための退職だから、それを言っちゃダメなんだよな。そんなような話をした。母親が理解したかどうかはわからないが、決めたことなら応援はしてあげると言っていた。後日少しまとまった金額がお祝いという名目で僕の口座に振り込まれ、「もう30過ぎなのにまだまだ心配かけてるんだなあ」と思った。

こうして僕は家族の同意を得て、退職することにした。

他の経営者に比べたらあまりドラマの無い起業の経緯だったと自分でも思う。ただこんな話もひとつの起業のきっかけではあると思うし、これが良いか悪いかはいずれにせよ結果次第だから、結果をもって家族に「決断して良かったね」と認めてもらうしかない。少なくとも、毎日楽しそうに働いている姿を見せること、生活で不自由させないこと、そして子どもと向き合う時間をしっかり確保すること。この3つは自分のなかで守ろうと決めている。

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