見出し画像

百閒動物夜話、今週末開催。

漢字ばかりで中国語のようなタイトルになりました。

百間動物夜話は内田百閒「件」「とおぼえ」の朗読芝居公演と文芸評論家でアンソロジストの東雅夫さんのトークをたのしむオンラインイベント饗宴ロウドクシャのオンライン企画もこれで関連企画を含めると4回目くらいになります。

内田百閒(別号:百鬼園、本名:内田栄造)は岡山県出身の作家。1889年生まれ、夏目漱石の弟子であり、芥川龍之介の三歳年上の友人です。三島由紀夫が百閒の作品を高く評価した言葉などが知られています。私が彼の言葉の中で特に好きなのは「百閒文学は、人に涙を流させず、猥褻感を起こさせず、しかも人生の最奥の真実を暗示し、一方、鬼気の表現に卓越している」という部分です。

内田百閒の作品の中でも特に好きな作品は「サラサーテの盤」「白子」それから「南山寿」。特に「南山寿」の不気味さは一度読むとじっとり纏わりつくように自分の記憶として残るものがあります。

芥川龍之介をモデルにした「山高帽」は最初読んだ時にはそのことを知らなかったので、登場する同僚は本当は女なのかなと思ったものです。このまま恋愛ドラマになりそうな予感がしてしまいました。芥川のことを書いたのだと思って読むとそうは思わなかったのでなんとなく残念な気がしたのを覚えています。

でも、「山高帽」をモデルに作られた七里圭監督の「眠り姫」では主人公が女性になっていて、同僚教員は男性でした。この映画は百閒の「山高帽」のエッセンスが含まれているのに同時に全く別物の作品にもなっていて、新宿のK's cinema で観た時はとても楽しい思いをしました。

いろいろと思い入れのある百閒作品ですが、今週末の公演は寓話のような「件」と、百閒作品ならではの這い寄る恐怖がただただ怖いストーリーと同居している「とおぼえ」の朗読芝居。私が担当するのはトークの司会ですが、あまりに語り所の多い百閒先生について、「動物」に寄せて話を展開させていきたいというところで脱線をいきすぎないようにする必要がありいつもとはまた違った緊張感に悩まされています。

内田百閒は文学好きならその名を知らない人はいないと思いますが、芥川龍之介や太宰治に比べると、学校教材ではないことから読んだことが無い人も多いかもしれません。でも、百閒の文章は非常に読みやすく、にも関わらずその世界はあまりに独特で、日頃文学にあまり触れない人が「こういう小説もあるのか」と驚くような発見を含んでいると思うので、普段本を読まない人もハマってしまう可能性があります。

それから、百閒先生は随筆がめちゃくちゃ面白いです。どこか抜けていて変わり者にもかかわらず、権威的なものを「いやなものは、いやだ」と避け続ける姿はちょうどいい言葉がいま見つかりませんが、かっこいいとでもいいましょう、誰も真似のできない魅力を持った人です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?