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「SNSはオワコン」「メール最高」というコンテンツマーケティング界隈の真意をくどくど解説

毎年9月にアメリカで開催されている、Content Marketing World(CMW)が今年も終わりました。

コンテンツマーケティング系では世界最大規模の祭典であるこのイベント。僕も2016年から毎年参加していましたが、今年は諸事情で参加できず。

現地に行かれた方々の投稿を指くわえて眺めていました。

聞いたこともないような真新しい情報が毎年出てくる、という感じのイベントではないですが、出てくる登壇者たちは一流どころのコンテンツクリエイターやマーケターたち。

業界の現在地を確認する意味合いで要チェックなイベントです。

特にイベント創設者のジョー・ピューリッチさんによるキーノートは、その時々のトレンドを知るために毎年追っています。

今年はキーノートが終わるやいなや、その速報レポートをクマベイスの田中森士さんが即座に出されていました。

タイトル冒頭の「SNSの終わりに備えよ」というワードがすごくインパクトあります。コンテンツ発信のチャネルとして、SNSだけでなくEメールも重視すべきという内容です。

「あえてのメルマガ?」みたいな感じでかなりシェアされていたのが印象的でした。

おそらくイメージとして「コンテンツを出すならSNSを使うのは当然」「メールは一昔前の古い手法」というのがありつつも、「でも最近Facebookでリーチ広げるのが難しくなっているよなぁ」といったSNSに対するモヤモヤもある感覚が、ベースとしてあったのではないでしょうか。

この記事はすごく良い問題提起になったと思うので、僕も少し乗っかりたいと思います。

この「SNSはオワコン」「メール最高」問題は、今のコンテンツマーケティングを考える上でとても重要な酒の肴なので、クドクドと説明していきます。

最初に断っておくとジョーさんと田中さんが言わんとすることは決して、

「コンテンツ発信にSNSなんかいらないよ」
「何が何でもEメール」
「10代の女子に接するときですらメルマガ!」

みたいな原理主義的な意味ではありません。

「メールをもっと重視しよう!」という主張はあくまで一例で、背景にある考え方に沿っていれば別にメールじゃなくてもOKなのです。

根本のメッセージとしては、コンテンツ発信で使うチャネルをバランス良く選ぼう、その上でオーディエンスとのつながりを構築しよう、といった感じになります。

SNSはあくまで借地

コンテンツ発信のチャネルをどのように選ぶと「バランスが良い」ことになるのか?

コンテンツマーケティングが狙いとする、次の2つを軸に考えてみたいと思います。

1.適切な人たちとつながって、
2.最終的に何らかの企業利益に落とし込む

今もこれからも上記を達成するためにSNSが不可欠な施策が出てくることは明らかです。

ただデメリットがあるとすれば、Facebookをはじめアルゴリズムの変化によってコンテンツが急に届かなくなる、といったことが起きる点。

コンテンツの主導権が発信側にないのです。

極端な場合、Google+のようにプラットフォームごとなくなってしまう可能性もあり得ます。そうなれば苦労して積み上げてきたコンテンツやフォロワーもリセットです。

こうした状況を踏まえて、ジョーさんはSNSについて「“Rented land”(借地)とみなすべきだ」という言い方をしています。

つまり他人から借りた土地なのだから、オーナーが課す制約は受け入れなければいけない上に、ある日突然追い出される可能性だってあるわけです。

そこで際立ってくるのがメールというチャネルの特長。SNSが借地なら、メールはまさに自分がオーナーとして主導権を発揮できる土地だと言えます。

メルマガであれば、(迷惑メール扱いされていない限り)出したコンテンツはほぼ確実に相手に届きます。また購読者の属性をより詳しく把握した上で、メールの出し分けもできる上に、成果計測(開封率やリンククリック率など)もより詳細にできます。

しかも気軽にフォローしがちなSNSと違って、わざわざメルマガを購読してくれるような人たちは検討熟度やエンゲージメントもかなり高いはず。

そういった人たちを相手に、より主体的なコンテンツ発信ができるのがメルマガの特長です。

でもSNSは当然必要

それではメールさえあればSNSはいらないのか?といえばもちろんそうではありません。

メルマガだけ用意して口を開けて待っていても、購読者があまり増えないという場合は大いにあり得ます。メールは拡散性が弱いチャネルなので。

そうであれば自由度は劣るけど集客力をメリットとするSNSやSEOでより多くの人々と接触した上で、ホームグラウンドであるメルマガに落とす。

そういう組み合わせにすると、「集客力」と「フェーズ後半でのコントロール力(つながり維持・購買促進)」のバランスがとれてきます。

いかにコントロール力のあるチャネルと組み合わせるか

また自社がより主体的にコントロールできるチャネルはメールだけではありません。たとえばBtoCであればLINEが当てはまるケースも多いでしょう。

BtoCでも、集客力とコントロール力のバランスが取れたチャネルポートフォリオを組む必要があるケースは多いと思います。

パっと思いついた一例ですが、僕はFacebookで好きな居酒屋のページをいくつかフォローしています。

たまに「今カウンター席が2つ空きました!」みたいな投稿を目にしますが、せっかく「お、いこうかな♪」と思ったのに、よくよく見たら17時間前の投稿だったということが結構あります。

「お店に対するエンゲージメントが高いお客さん」に、「まさに今見てほしい」といった要件が多いコンテンツなのに、コントロール力が低いFacebookに出してしまったことが原因です。

もし同じ投稿をLINEで発信していたら、よりタイムリーにリーチできたはずでしょう。

自社の商材の場合は集客力の高いチャネルだけで事足りるのか?もしくはその後にコントロール力の高いチャネルも併用する必要があるのか?という観点で、コンテンツ施策を整理すると、より目的を達成しやすくなるはずです。

メルマガ重視、根底はオーディエンスとのつながり構築

メールの重要性を強調してきましたが、コンテンツマーケティング界隈の人たちが強調するのはメールそのものよりも、いかにコントロール力のあるチャネルでオーディエンスとのつながりを作るかという点にあります。

メルマガの強調はあくまでその一例としてです。

この考えの背景には、コンテンツマーケティングでありがちな悩みがあります。

ROIをはじめとして、コンテンツによるビジネス貢献をいかに説明するかという課題です。

貢献方法は、マネタイズやユーザー情報の収集、ブランディングなど様々でしょう。

ただ少なくとも一旦エンゲージメントの高いフォロワー・購読者のリストを作ることができたら、それを足がかりに様々なビジネス目標につなげることがより容易になるはずです。

たとえばJohnson & Johnsonのオウンドメディアでは、登録したオーディエンスの属性・行動データを活用して、広告メッセージの最適化や商品開発に応用しているそうです。

BuzzFeedによるレシピメディア「Tasty」では、コンテンツ発信にとどまらずキッチン用品の販売も手掛けることで、マネタイズをより強化しています。コンテンツによって築いたオーディエンスがいたからこそ、メディアカンパニーながらプロダクト販売にも乗り出せたのでしょう。

またコンテンツマーケティングの事例でよく引き合いに出されるRedBullは、ブランディングというある種フワッとした目的のコンテンツ発信をしながらも、雑誌の定期購読収入などがあるため、施策自体は黒字化しているそうです。

この雑誌の定期購読も、エンゲージメントが高いオーディエンスがいるからこそできるマネタイズです。

これらの事例は若干ハードルが高い部分もありますが、より現実的なマネタイズとしては記事広告のようなショット収入もあるでしょう。

メルマガやLINEのように比較的登録ハードルが高いチャネルに人が集まるくらい、質の高いメディアを作ることができたら、広告需要もあるはずです。

ただもちろんコンテンツマーケティングの最終的な目的は、こうした目の前のマネタイズなどではなく、見込客の開拓やファンづくりなど、中長期的なマーケティング目標になります。

しかしそれだけでは「いつ成果が出るんだ?」と後ろ指をさされやすい。

そこで質が高いメディアだからこそできるビジネス貢献、つまりマネタイズやユーザー情報の収集といった仕掛けもつくることで、安心して中長期の施策に取り組める環境を作りたい。

それには前提として、エンゲージメントの高いオーディエンスとのつながりと、コントロール力の高いチャネルが必要だよね、という理屈です。

ここで挙げた事例や考え方については、ジョーさんらが書いたこちらの書籍に詳しくあります。もう3年前に書かれた本ですが、直近のコンテンツマーケティングの話題も依然として、ここで書かれた課題感がベースとしてあるのでおススメです。


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