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エッセ

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体験主義で実感したことを書いています。仕事や趣味、エッセ、SNSに関することも。 これで私の半分はお分かりになるかと思います。
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コーヒーは魔法のはじまり

挽きたてのコーヒー豆にお湯を数滴落とす この瞬間は 緊張から無になる そして 待つ  1分くらい  この間 コーヒーに耳を近づけると 小さいけれど くしゅくしゅ いっている 小人たちのささやきみたい・・・ 顔を近づける私は たぶん巨人の女 よし と そこから  細い口先のケトルでお湯を注ぎ始める  すると 湿ったコーヒーの粉は  まるで山が育つような姿を見せる 湿った褐色の土が  むく むくり と ふくらんでいく おお いいねえ 最高にワクワクする瞬間の幕開け 挽き

スズランのある林

五月の終わりに北の林で。 緑好きです。 スズランは湿り気や半日陰がお好きな気がする スズランの花言葉は “幸せの再来“ “純粋“ ・・・ほんわかします 月に一度、自分の楽しみで投稿してますが ご覧いただくことがあればお礼申し上げます

カノンを聴く男性

窓べの机で ようやくコーヒーを飲む。 いつもと違う演奏者で カノンを聴いてみた。 そしたら 忘れたはずの彼の顔 あの人の振る舞い 大いなる山、草原に立つ大木 音を立てて砕ける白波 あらゆるものが、じんわりあふれ出て 窓の外の曇り空に 浮かんで入れかわる。 やがて 30歳前後の 白人男性の顔が浮かんだ。 彼の顔を 私はずっと 心のどこかに置いている。 それはかつてYouTubeで 1秒ほど見ただけの男性だ。 アフリカで 子供たちが演奏するカノンを聴く 彼の顔は そ

雨上がりのパペポ

嵐があけて外へ出た。 バス停で時刻表の板が 暴風にゆれてるけど 空は青く清々しい。 ああー気持ちいいねーって 街路樹に大声で話しかけても 強風とマスクで誰にも聞こえないから安心。 ふと見ると、 むこうの舗道を Tシャツ小太りのおじさんが ぶつぶつ怒りながら走っている。 前傾姿勢の走りのわりに進んでない。歩みと言ってよい。 私は顔を背け、バス待ちですのふりをする、、 やはりおじさん怒ってボヤいて 偶然停っている軽トラの向こうを通り。。。 。。。現れ、ない。気になる。

里の朝、台所でショパン

使い込んだ流し台の横で極上の時間を始める。 昔馴染みの珈琲店で挽いてもらった豆が フィルターの中で蒸れるのを待ち、 何回かにわけてお湯を注ぐ。 コーヒーの粉が見事に膨らむのを見ると 小踊りしてしまう。 今朝もいい感じだ。 芳香を吸い込むと 玉葱を切ってしみたままの涙目が すっと落ち着いてくれた。 朝の儀式に私はショパンのラルゴをかける。 30年前のCDラジカセ… よくぞ動いてくれました。すごくうれしい。 曇りガラスの北向き窓の外は、とても明るい。 コーヒーの前で頬杖

〜アラビアのロマンス〜

思いがけない地で恋をして そして、もう終わった。 一生で一番短い恋を 記しておきたいと思った。 もう会うことはないから。 アラブの国へ行った。 目的はあるアーティストのドキュメント撮影。 “20年前ここぜーんぶ砂漠。砂だけでした” ガイドが力説する近代都市の端に 巨大な黄金の額縁が立つ。 額縁上部の中に入って外を眺めると 都市の新旧境目に立っているのがわかる。 世界から新進アーティストが集まる祭典。 王室関係者の来場に備える様子や 多国籍状態のロビーを通ることにも慣

幕末の海で 男神がささやく

それは確かに耳から入る言葉ではなかった。 脳ずいから頭全部に染み出るような。 数日前に開国の舞台浦賀を巡ったときの ことを書こうと思う。 なぜか気になる場所がある。 理由のわからぬ感情が湧き出る。 私にとって浦賀とはそんな存在だ。 初めて訪れのは20年前、 黒船来航の書物を読んだのきっかけ。 奉行所与力、香山栄左衛門。 黒船に乗船しペリーと交渉に当たった人物だ。 世間的には年長の中島三郎助が有名だけど、 米国の記録には 上司から香山に代わったことで 双方に友情が芽生えたと

点をつないで信じて夢を持つ

休日の午前中は掃除と大物洗濯をしながら、 心はいろんなことを巡る。 2年前の12月、noteというものを知り、 SNS未体験で、ひと月悩み、 昨年1月から緊張して始めたこと。 過去を振り返ることは後ろ向き、 と思われがちだけど、 私は過去も未来も、 両方思うクセがある。 幸せの女神は前髪しかない、 という表現がある。 幸せになるには前を向くしかない、 という意味だろうけど 時によっては、私に この言葉は、あまり響かない。 それより、リンゴマークの スティーブ・ジョブ

帰宅電車の男性と窓の星

夜7時を過ぎて電車に乗ると、 車内は一家の主人であろう男性達が 8割を占めていた。 この世は男性の方が多いと思わされるほどだ。 着込んだ男性4人が対面式ボックス席に 窮屈そうに座っている。 そのうち1人が降りたので、 女1人で混じって座った。 前の男性が考え事でもしているらしく、 目を閉じ眉間にしわを寄せ、何かを数えるように指を折っては、また,数え直して指を折る。 その左手薬指に結婚指輪がはめられている。 50代半ばに見える、ごく普通のおじ様。 周りを見ると、半数ほどの

通勤の朝に見た龍と人様

冬目前の朝の空に 細長い雲が、いくつもたなびく。 それは一斉に一つの方向にむかっている。 富士だ。 真っ白に全身を染めた山の神がおられるのか 数体の若い龍がしなやかな体で冬空に弧を描く 一瞬、視界をさえぎる建物が消え、 富士と龍雲がつくる 天空の群像劇の全貌が見えた。 私の座るボックス席の男性たちは、 偶然にも、全員が窓の外を見やっていた。 吊り革を持って立つ紳士も スマホや本に目をやっている人間は この間、ひとりもいない。 言語化できない神聖な空。 殿方は龍に気づい

音のある風景〜鎌倉駅ホームにて

仕事を終え電車を降りると月がとてもキレイで、そのまま帰るなんてもったいなくて、noteの録音スイッチをポチしたくなりました。鎌倉駅の雑踏、人の気配に囲まれながら、ブツブツやっております。最近どんどんマイワールドになって…すいません。

2012年 ニューヨークの出来事

「ニューヨークで最後の公衆電話が取り除かれました・・・」 ふと耳にしたニュースの声に、私の中で 記憶の連鎖が始まった。それは2012年。 あの惨劇から11年が経過したニューヨークで起きた不思議な体験だ。 大好きな映画のロケ地を見たくて、旅費を貯め、英会話を習い、遂に夢を叶えた私は、先ず電車の駅グランドセントラルターミナルに行った。 主役が使った公衆電話や、地球儀みたいな時計を見つけて写真を撮ったり、逢引きするカフェでは撮影時のカメラ位置を想像して楽しんだ。 そして何枚もの

ホームで前を小走りするおばさんがいる。みっともないな〜と思いつつ、小走りして抜かしてやる。 どうなんだ?この負けず嫌い。

彼岸に寄せて

昨日、JRの駅でもらった遅延証明書を見て、 ふと気づいた。 2022年9月22日。 父の命日だ…。 もうかなりの年月が経つ。 家族の誰も、この日を意識していない。 私は妹にラインをした。 “今日は父さんの命日だよ、おはぎでも買って食べてあげよう” 私達の父は、母と別れ、5年後に亡くなった。 妹には新しい父ができ、その人は学校の校長先生で小さかった妹はその人を父さんと呼んだ。 高校三年だった私は最後まで先生と呼んだ。 母は毎朝、亡くなった先生にお線香とお経をあげて85歳の