CKD合併慢性心不全患者さんへのNSAIDs投与による腎排泄薬剤排泄遅延リスクを鑑みトレーシングレポートにて報告した症例

今回は思いっきり腎臓のお話になります。
って言ってもそんなに珍しい話ではなく・・・
またかよ!って内容なのですが・・・
だけど、このまたかって事が問題・・・それだけ実臨床では多いって事。
だからしつこくしつこく何度でも伝えていこうって気持ちなんです。
本当にこういった症例は少なくないし、患者さんがご高齢だと危険なのにも関わらず自覚症状にとにかく乏しいからやっかい。
なので~ 
自覚症状にだけ頼っていると非常に危険で、自覚症状出現した時はもう救急搬送になってしまうかもしれないのだ。
実際に経験したからホントにそう思う。
14~15年以上も前の事だけど・・・
前職時代に・・・ 自覚症状だけを頼りにしていた。
しかもPPI継続でさらに吐き気などをマスクしてしまったんだろう。
自覚症状の欠片も無かった。投薬のたびに確認はしていたのだけど・・・
ジゴキシン中毒で救急搬送されてしまったのだ。
そんな事があってはいけない。防げたはずなのだから・・・
定期的な採血での腎機能把握が重要だって思ったきっかけの一つの出来事となった。
副作用が出現してしまったからその被疑薬を中止ではなく、いかに危険を未然に防ぐのかが我々薬剤師のお仕事だ。
な~んて思っているのです。
当局は、循環器クリニックの門前だから、心疾患の患者さんが多いわけです。なので、心不全患者さんも多くジゴキシン投与が少なくない状況。
と言っても、他の大きな病院の循環器では、新規でのジゴキシン投与はみないんですけどね・・・ 
ジゴキシンで困るのは腎排泄薬剤(尿中未変化体排泄率80%)で有効血中濃度が最近では0.5~0.8ng/mlと低めでコントロールされているケースが多く、腎血流低下を促すような何かがあると副作用出現リスクが高まってしまうって事だ。
当局の患者さんも、だいたい0.6~0.8ng/mlでコントロールされてる方が多いが、中には1.2ng/mlの方もいる。
そんな方が、もし発熱して水分摂取もできない状態で、熱を下げるためにNSAIDs投与されたら・・・ 
しかも自覚症状に乏しく訴えがなかったら、そのまま放置され・・・
想像できますか?
その前に・・・
腎臓の構造、ネフロンの構造を確認しておく事が重要ですので~
ネフロンを思い浮かべて下さいね。
輸入細動脈→糸球体(毛細血管)→輸出細動脈→尿細管毛細血管網
糸球体で濾過された原尿は近位尿細管→ヘンレループ→遠位尿細管→集合管
あと~
遠位尿細管のマクラデンサが輸入細動脈へ指令を出している事を覚えていてほしい(尿細管糸球体フェイードバック) 
糸球体内圧は低すぎると濾過できないし、高すぎると過剰濾過になるわけです。CKDって事はネフロンがすでに減少しているわけだから、残っているネフロンの糸球体過剰濾過となりネフロンの働きすぎでそのうち過労死って事になる。過労死はつまり透析に至るって事。
糸球体過剰濾過は糸球体毛細血管壁を傷害し、結果として尿蛋白が尿細管に漏れ出てしまう。
だから、ACEやARBが尿蛋白減少させるのは、輸出細動脈を拡張させる事で糸球体内圧を下げるからって事。
なんだけど~
糸球体内圧も下げすぎると、濾過ができなくなり排泄に時間がかかりすぎてしまう事にもなるわけです。
だんだんイメージしやすくなりましたか?
って事は、よく言われているトリプルワーミーがなぜAKIリスクを高めるのか理解できますよね。
RAS阻害も利尿剤もNSAIDsも腎血流を低下させることで、腎前性AKIを発症させてしまうわけです。
NSAIDsは輸入細動脈の血流を低下させるだけではなく、輸出細動脈や尿細管毛細血管網の血流をも低下させ、尿細管を栄養する事ができなくなり、尿細管障害をも引き起こすリスクもあるという事。
ここでもう一度、ジゴキシンの排泄について考えましょう。
ジゴキシンは糸球体で濾過されそのままほとんど再吸収されず排泄さるのだが、一部は尿細管分泌される。腎不全が重篤になると尿細管分泌が多くなる。
ってなると・・・
NSAIDsは輸入細動脈を収縮させてしまうので、その結果として尿細管毛細血管網の血流も低下させるわけですから~
腎排泄であるジゴキシンはNSAIDs投与により糸球体濾過量低下→排泄遅延となることで血中濃度上昇し、それだけではなく、尿細管分泌をも低下してしまうわけだから、さらに血中濃度上昇のリスクが高まるわけですよね。
もし、食欲低下で食事量減ってたり、水分摂取量も減ってたり、下痢気味だったりすると、さらに危険なことに・・・
あっ!
今回は前置きがもりもりなんですが・・・

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