『上岡龍太郎さんから言われた一言。当時“神様”と言われた上岡さんとマサカの共演!?』
とある6月のある日。
読売テレビのアナウンス部に
制作から電話がありました。
『明日の“ときめきタイムリー”なんですけど、
遥洋子さんが東京から戻れなくなって。
生放送なんですよ!
確か、この4月に女子アナ入りましたよね!
上岡龍太郎さんとざこばさんとの共演、
なんとかなりませんか?』
!!!
これには当時の鎌田アナウンス部長も、
私も腰を抜かしそうになりました!!
数々のヒット番組を輩出し
驚くほどの視聴率を叩き出す上岡さん。
私が入社した時には
読売テレビでは、
まさに『神様』のような存在でした。
制作スタッフや共演者に求めるものも
並大抵のものではなく、
先輩プロデューサーからは
上岡さんの逸話とともに
仕事に対する厳しい一面も沢山聞いていたのです。
番組のチーフプロデューサーですら
上岡さんとの打ち合わせには
緊張して臨んでいたといいます。
そんな“神様”と!!
ほんの2ヶ月前は
単なる女子大生だった
入社したてのヒヨコのアナウンサーが!
えーえーえーっ!
研修もまだまだ途中なのにー!?!
それも…
明日ーーーっ!!
誰もが驚くリクエストに…
鎌田部長は驚きの表情を見せたスグあとに
にゃっと笑い…
『それは仕方ないですね。
制作の皆さんもお困りでしょう。
良いですよ。
じゃ、すぐに植村を打ち合わせに向かわせます。』
えーえーえーっ!
私、大丈夫???
とは言え、
もう決まってしまったこと。
あと20時間後には、
生放送の番組が始まってしまう。
ところが、
一番、慌てていたのは番組の制作スタッフ。
ほぼほぼ素人の女子大生を
上岡龍太郎さん、ざこばさんに向かわせるのに、
めちゃくちゃに手厚いフォローを
して下さったのです。
“ときめきタイムリー”は
上岡さんとざこばさんと言う大御所に
若い遥洋子さんと言うタレントさんが、
色々な話題を切り込んでいく番組。
私の役割はアシスタントではありません。
東京出身、東京育ちの私が
関西の文化に切り込んで行く…
それも“神様”にー!!
その危機感はスタッフを一丸とさせ、
素晴らしいフォーメーションで
打ち合わせは120%完璧に進みました。
あとは明日の早朝、
初めての上岡さんと私の顔合わせだけです。
もし、
その場で私がNGを上岡さんから出されたら!
もう生放送は成り立ちません。
私も、スタッフも
誰もが緊張で迎えた朝の打ち合わせ。
『植村君ね、僕たちはプロだから。
22歳のこの前まで女子大生だった君が
自然と感じたこと、思ったこと、考えたこと。
そのままブツけて下さい。』
流石!
“神様”!!
私1人がすっ転んでも何しても動じないのです。
ところが…
番組で紹介するハガキを下読みすると…
「真っ青な空の下…」
『植村くん、今、空の“した”って読みましたね。
それは空の“もと”なんですよ。
私はね、言葉は一番、大切だと思っています。
理科も歴史も数学も、それを教えるのには
日本語を使います。
考え方や思想、何もかも、伝えるのは言葉です。
言葉は全ての基本なんです。
小さなことでも正しくなくてはいけません。』
な、な、なんと!
一言一句、“神様”が確認をして
間違いを指摘して下さったのです。
しかし、一旦、番組が始まると…
本当に自由に喋らせて頂き、
全てをフォローして下さいました。
入社して2ヶ月。
強く記憶に焼き付けられた時間になりました。
『どんなに小さなことでも正しく。』
その言葉を胸に
後輩のアナウンサーにも伝えて来ました。
そして、
私自身、今も守り続けていることです。
皆さんの心に
沢山のことを残された上岡龍太郎さん。
ご冥福を心からお祈り致します。
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