「女性活躍推進」と「既婚男性のSEX」
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「女性活躍推進」と「既婚男性のSEX」

藤田尚弓

 大変だろうなぁと思うことに、「女性活躍推進」と「既婚男性の(家庭内での)SEX」がある。コミュニケーション研究の切り口から考えると、この2つは結構タフだよね。なぜならダブルバインドの呪いをかけられているから。

ダブルバインドって知ってる?

 ダブルバインドとは、二重拘束と訳されたりする。子供の頃、親から言われなかった?「なんでそんなにだらしないの!もう好きにしなさい!!」とか。

 私はあるよ。「片付けなさい」というメッセージと「好きにしなさい」というメッセージの間で困惑した経験。よく見かけたのは「お金がなくて大変」というメッセージと「あなたには教育費をかけたい」というメッセージを出している親御さん。あれも結構ダブルバインドの典型で、結構キツいんじゃないかな。子供は勉強を頑張ったほうがいいのかわからなくなるから、実力を発揮しにくくなるけど、そうすると「やっぱり勉強は嫌いなんでしょ」というメッセージと「いい大学に入るのは大事よ」というメッセージで責めるからね。

 二つの矛盾したメッセージに挟まれ、どうしていいかわからない状況に陥いるさまは、まさに拘束という表現がピッタリだと思う。

 ダブルバインドは統合失調症の原因になるとも言われているくらい強烈で、相手に強いストレスを与えたいとき、前向きな姿勢を少しずつ崩したいときなど悪意をもって用いるケースには効果的。でも、残念ながら職場でも、子育てでも、恋愛関係にある相手にさえもダブルバインドを使っている人っているよね。

 当然ながら働くオンナもこのダブルバインドの下で精神を無駄にすり減らし、その余力で成果を上げていくことを求められている。

閣議決定を読んでサンドイッチを噴き出した件

 昭和、平成、令和と働いてきたわけだけど、それは「オンナは補助の仕事をやっとけ。出しゃばるな」と「女性活躍推進?じゃあ働いてもらおうじゃないの、戦力として」という谷間で、優秀な女性戦士が屍になっていくのを見続けてきた歴史でもある。

 アクセルが踏みきれないだけでなく、特攻のときも、後ろから撃たれるのを気にしてないといけない状況じゃ、精神すり減るよね。しかも結婚すると更にダブルバインドは増え「よき家庭人であれ」という圧力は半端ないのに「中途半端に仕事をするのは失礼」という圧力にも挟まれる。

 内閣府の基本方針には「我が国が持続的な成長を実現し、社会の活力を維持していくためには、我が国最大の潜在力である女性の力を最大限に発揮していくことが緊要な課題」なんて書いてあったけど、どっちにするのかホントはっきりして欲しいわ。それともやっぱり、女性は、家庭も育児も仕事も完璧にこなせよ!って話なんだろうか。

 まぁ、これができてしまう「タイプE」と呼ばれる女性もいるにはいるんだけど。これについて話すと長くなるので、また別の記事にするとして。

 12月20日に女性活躍推進の基本方針が変更されたのね。事務所でお昼を食べながら内閣府のサイトを見てたんだけど、思わず食べてたサンドイッチが口から出たぞ。

 ちなみに、噴飯とは腹立たしいという意味で使う人が増えているけど(平成12年度国語に関する世論調査では約半数の人がそう使っているのだとか)、私の場合は元の意味どおり、笑ってしまって噴き出した。理由はファンタジー過ぎるから。

 新しい基本方針では、オトコ社会で活躍できていないオンナの現状をありがたく分析してくれているんだけど、後半の「じゃあ、こうすればいいんじゃね?」という部分が……。

 真剣に考えてくださった関係者の皆さんには恐縮なんだけど、運用する側の視点から読んでみたら、韓国と日本も、アメリカと中国も、ムスリムとクリスチャンも来週くらいから仲良くできそうなレベルでファンタジーかと。世界平和のメッセージを発信するのは大事だし、意義深いけど、せめてファンタジーではなくSFレベルにして欲しかった。

 ちょっとわかりにくいと思うので補足しよう。いきなり「剣から炎を出して戦えば大丈夫!がんばろうね♡」といわれても、出るのは溜息か、口の中のサンドイッチくらいである。これがファンタジー。「発炎装置を内蔵した剣を使うことを義務化します。補助金はこれだけでます。女性隊長候補者には国で炎の剣の使い方講座を用意するので、従業員〇人中、女性隊長は〇人まで増やしてね。これを△年までにやらないと罰則として××しちゃうかも知れないぞ♡」くらいのテイストをSFレベルだと私は定義しているよ。

 個人的には、最低限のお願いとしてダブルバインドのない職場へ向けての取り組みを求めたいと思う。具体的な施策としては、小学校でプロジェクトの時間を設けて、男女の働き方を教えてくれないかなーと。古い性役割に縛られない協力体験を子供のうちにさせれば10年後くらいには、職場のダブルバインドは減るのではないだろうか。

よき父親のSEX

 無意識のうちにHP(*ドラクエのアレのこと、わかるよね?)を消耗して成果を出せなくなってしまう辛さを男性にわかってもらうにはどうしたらいいか。考えて見つけちゃったんだけど、既婚男性のSEX(*わかると思うけど外でのではなく家庭内の)もダブルバインドじゃない?

 結婚すると男性は「よき夫」「よき父」であることを求められることが一般的だよね。これは「共感性」や「母性」に加え「利他性」も強く求められる状態。その状況下で、利己的な本能から起因するはずのSEXを同時に求められるのは、なかなか大変だと思う。

 動物界を見ると、メスを強引につかんで交尾するトンボ、見つからないように近づいて襲いかかるカマキリなど、性行動には暴力的な側面が少なくない。仕事だって、狩猟的な側面が強い。

 ところがだ。

 人間の世界では、夫がちょっとキツい物言いをしたら妻にボロクソに責められる。哺乳類の多くは母子家庭なのに、人間界では「子育てを手伝わない」「利己的な態度をとる」といったオス的な行動は、ほとんどの家庭でレッドカードだ。女性的な振舞いを求めておいて「セックスレスだ」となじられても「どっちやねん!」という感じじゃない?

 「子育て手伝って」というメッセージと「子供のためにも出世してよね」というメッセージも、言ってみればダブルバインド。

 男性の皆さん「最近なんだかエネルギー不足を感じる」「無駄に疲れている気がする」「ちょっと擦り減ってきた」といった感覚の原因は、家庭内のダブルバインドかもよ。

 それでも夫の役割、オトコの役割、職業人としての役割をうまく演じられる男性は、女性にも当然それができると思うかも知れないけれど。

 女の場合、よき家庭人という役割を演じることと、よき職業人という役割を演じることの間には葛藤がある。さらに職場でも「男を立てる」と「成果を上げる」の間で葛藤があるからね。

 子供ができれば「母親はこうあるべき」という伝家の宝刀を突き付けられ、役割葛藤だけでなく自由成約もオンナを拘束する。男性陣にはこのあたりを想像していただき、パワー全開できてない状況を見て「女は使えない」的なラベルを貼るのを、控えてもらいたいなー。最近、老兵の域に入りつつある、女性戦士からのお願いです。

管理職に告ぐ!特殊能力者をスタンダードだと思うな

 妻プレイ、デキる女プレイ、アシスタントプレイを上手に演じ分けられる子っているよね。令和にはそんな女性が求められていくんだろうとも思う。でも、できる子たちは、ものすごい特殊能力持ってるか、倒れる直前か、無理してるのが普通になっちゃって辛いのにも気づけていない状態の三択なんじゃないかなーと思う。

 倒れる直前なのに、なんとかセルフケアしてHPを回復しちゃう特殊能力者。慢性的な無理ゲーにおいても自分を盛り上げられちゃう特殊能力者。私の周りには、映画「X-MEN」さながらのすごい人が多い。私もつられてガリガリやるのがあたりまえだと思っていた時期もあったし、あろうことか、自分の会社の社員たちにもそれを強要してしまっていた時期もあった。でも、それってやっぱり違うよね。恩師が若くして亡くなって、尊敬していた編集さんが突然亡くなって、大事な友達まで逝ってしまって、その思いは確信に変わっている。

 女性経営者だからなのか、研修の仕事なんかもやっているからなのか、私は女性活用推進を目的とした講演や研修に呼んでもらうことも多い。主催者からは、遠慮している女性陣を鼓舞してほしい的なリクエストが多いけれど。男性管理職の皆さんの理解や協力が整っていない職場では、いっそのこと、もう女性を頑張らせなくてもいいんじゃない?と思う。

 働く女性にはまず身を守る手段をご提案したい。攻めについても話すけれど、特殊能力者にしかできない戦術を紹介しても、自分と比較して自己肯定感を下げるのが関の山だ。小手先のテクニックだと揶揄されても、具体的で誰もがすぐに試せる武器を、これからも私は配り続けたいと思う。

 働く女性の皆さん。ダブルバインドにあふれる現代では、意識していない部分からストレスを受けてしまうのも、なぜか判断に戸惑うのも、いつのまにか消耗しちゃうのもあたりまえ。回復する余力を作ることを意識しながら、好機を待とう!

 汗を流せ、涙を流せ、血を流せと教わり、勢いで実践しちゃった私に言われてもアレだと思うけれど。血を流す必要はないと思う。本当に。

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藤田尚弓

ワインとコーヒーを燃料にして生きています。「一杯ご馳走してあげてもいいかな」と思ってくれたら嬉しい。大好きなコーヒー豆もしくはワインを購入する費用に充てて、また元気に執筆します♡

私もスキだよ
藤田尚弓
デザイン事務所経営。私立大学の生涯学習機関でコミュニケーション心理学の講師をしています。企業研修、講演、執筆、テレビのお仕事も少々。著書は数冊。SankeiBizにて「最強のコミュニケーション術」を連載中。所属学会は日本社会心理学会。残念なことに独身。