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新しい蕎麦屋が。

休日になると、たいていどこぞの蕎麦屋で昼酒に
酔っ払っている。暮らしている善光寺門前界隈には
蕎麦屋が多い。観光シーズンになると、どこの店も
ひっきりなしにお客が絶えないのだった。
門前を離れた町なかにも、ぽつぽつ蕎麦屋が出来ている。
ひと様のブログやインスタグラムで取り上げられて
いるのを見ると、ちょっとそそられるものの、いつも
気の置けない、馴染みの店ばかりに行ってしまう。
自宅からほど近い桜枝町に、「たけのや」という呉服屋が
在る。
先日店の前を通ったら、なにやら雰囲気がちがう。
よくよく眺めたら、いつの間にか蕎麦屋に様変わりして
いたのだった。
中を覗いたら、呉服屋の面影がすっかりなくなって、
おしゃれな店になっている。
翌日の昼どき、早速足を運んでみた。「戸隠つきや」という
店で、店内は七人掛けのカウンターと、四人掛けのテーブルが
四つ。すでにワイシャツ姿の人たちが先客で蕎麦をすすっていた。
カウンターのすみに腰かけて、スタッフのお姉さんに品書きを
見せてもらうと、蕎麦の他に一品料理の品数が多い。アルコールは
ビールにサワーにハイボールに焼酎に日本酒と、これまた種類が
多い。
蕎麦屋というよりも、昼から飲める居酒屋のようだった。
お通しの葉わさびでビールを飲みながら、カウンター越しの
ご主人に話を伺えば、戸隠出身のオーナーが、二十年ほど前に
長野市に料理屋を開いた。その後、東京の西麻布に移転して、
このたびこうして地元に支店を出したことだった。
当初は人通りの多い、長野駅前に店を出す予定だった。
それが、不動産屋に善光寺門前のこの地を紹介してもらったら、
気に入って、開店したとのことだった。
料理は地元信州の食材を使い、日本酒も信州の銘柄を揃えて
いるという。ひたし豆と板わさをつまみに、長野市の川中島と
若緑を一杯ずつ頂いて、細打ちのもりで締めた。
スタッフのかたの感じも好く、酒も肴も蕎麦も旨い。
表通りから少し離れているけれど、じきに好い評判が立つと
察しがつく。桜枝町には食事処がないから、開店して間もないのに、
近所のかたがちょこちょこ来てくれるという。町内に集まり場所が
出来て、まことにめでたいことだった。

呉服屋が蕎麦屋に変わる真夏かな。






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