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言葉を選んで。

作家の石田千さんの著書を愛読している。
20年前に、たまたまこのかたの随筆を読む機会があり、
以来、新刊が出るたびに取り寄せている。
福島県生まれの、御年55歳になられる女性で、
日々の暮らしのささやかな様子を、風通しの好い文章で
表しているのだった。
なにやら厄介な病気を抱えて通院していたり、何年か前に
大学の教授の仕事に就いたこともあり、体力的に大変なのか、
最近は、新刊が出る兆しがなくさみしい。
幸いnoteというSNSで、画家の牧野伊佐夫さんと
往復書簡をしている連載を見つけた。
お仲間といっしょに俳句もたしなんでいて、金町という俳号で、
著書に句を載せていたり、noteでも、文のさいごに一句
添えてある。
真似をして昨年から、歳時記を睨んで一日一句ひねりだしている。
テレビで観るのは、ニュースとスポーツと、NHKの
ブラタモリと鶴瓶の家族に乾杯に、気を惹かれたドキュメンタリー
ぐらいで、バラエティー番組は観ない。
毎週木曜日のプレバトに俳句コーナーがあると知ったのも
昨年のことだった。
俳人の夏井いつきさんが、いろんな芸能人の作った句を添削
していく。
歯切れの好い辛口の説明がわかりやすく、今では毎週の
楽しみになっている。出演されているかたがたも、
皆さん感性が豊かで、日々の中の目の付けどころに
感心することしきりだった。ついこの頃、永世名人の
梅沢冨美男さんの句集が発売になった。50句の掲載の他に、
過去に添削された句の、どこがいけないのか載っており、
ちょっとした言葉の羅列のちがいで、伝わり方にめりはりが
出ると説いている。
近ごろはインターネットのおかげで、季語や、多くの俳人の
作品に気軽に触れられる。
仕事がひまなときは、たいていどなたかの句を、拝見している。
坪内稔典さんの、
たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ。
なんていう句を見つけちゃったりすると、どうすりゃそんな句が
思いつくのか、ほとほと唸ってしまうのだった。
仕事場の玄関先の黒板に、毎月一句、愚作を書いている。
ときどき通りすがりの人が褒めてくれるときがあり、
ちょいと嬉しい。
中学生のときに、母の知り合いの易者さんに姓名判断を
してもらったことがある。章と書いてあきらと読む名前は、
結婚運が悪いと言われ、旭良にしなさいと言われた。
子供の時のことだから、そんなことはすっかり忘れて、
変わらず章を使っていたら、結婚を二度しくじった。
易者さんすごいなあ。当たりましたよと感心してしまった。
縁起の良い名前と思い出し、俳号は旭良にしているのだった。

日を置かず五七五なぞる夏来たる。


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